私は現在、SAPを中心としたシステムの保守・運用や継続的な改善、お客様への新たな提案など、いわゆる「ストックビジネス」のデリバリを担当しています。

導入プロジェクトとは異なり、Go-Liveした後のシステム、そしてそのシステムを使い続けるお客様と長く向き合っていくことが、私たちの仕事です。

そんな立場だからこそ、以前から大切にしている考えがあります。

「SAPは、いつ完成するのでしょうか?」

プロジェクトがGo-Liveを迎えたときでしょうか。
大きなトラブルなく安定稼働したときでしょうか。

私は、そうではないと考えています。

SAPは、稼働してからが本番です。

Go-Liveはゴールであり、価値創出のスタートでもある

SAPの導入プロジェクトには、大きなエネルギーが注がれます。

構想を描き、業務を整理し、システムを設計し、開発・テストを重ね、そして迎えるGo-Live。

プロジェクトにとって、そこが大きなゴールであることは間違いありません。

一方で、お客様は「SAPを稼働させること」そのものを目的に、大きな投資をされているわけではないはずです。

その先にある業務改革や生産性向上、経営管理の高度化、新たな価値創出など、SAPを活用して実現したいビジネス上の目的があるからこそ、その投資を決断されているのだと思います。

これまでも私たちは、システム導入そのものではなく、その先にある成果が重要であるという考えを発信してきました。

では、ここでもう一歩進めて考えてみます。

Go-Liveした後、その価値を継続的に生み出していくのは誰なのでしょうか。

私は、この問いにこそ、稼働後のビジネスを考えるヒントがあると思っています。

稼働した瞬間から、ビジネスは次の変化を始めている

Go-Liveしたときに最適だったSAPが、ずっと最適であり続けるとは限りません。

事業は変わります。
組織も変わります。
制度も変わります。
人も変わります。
そして、テクノロジーも変わり続けます。

一方で、システムは何もしなければ、こうした変化に自然についていくことはありません。

時間の経過とともに、少しずつ現実のビジネスとの間に「ズレ」が生まれていきます。

しかし私は、この「ズレ」をネガティブなものとしてだけ捉える必要はないと思っています。

なぜなら、そのズレの中には、「次に何を変えるべきか」というヒントも含まれているからです。

そして、その変化を最も近くで継続的に見ている存在の一つが、稼働後のシステムをお客様と一緒に支えている私たちです。

日々の保守には、「次の変革の兆し」がある

保守・運用の仕事というと、どのようなものを想像されるでしょうか。

問い合わせに回答する。
障害に対応する。
システムを安定稼働させる。

もちろん、どれも欠かすことのできない仕事です。

しかし、日々お客様と向き合っていると、その一つひとつの出来事には、それだけではない情報が含まれていることに気づきます。

例えば、同じような問い合わせが何度も発生する。
ある業務だけ、例外的な運用が増えている。
以前は問題にならなかった処理に、現場から改善要望が出始めている。
組織変更によって、新しい使い方が求められるようになる。
事業そのものが変わり、これまでの業務プロセスでは対応しきれなくなる。

一つひとつを単独で見れば、「問い合わせ」や「改善要望」なのかもしれません。

しかし、それらをつなげて見ると、お客様のビジネスが次に変わろうとしている「兆し」として見えてくることがあります。

問い合わせを「解決して終わる」のではなく、その背景にある変化に気づき、次の改善や変革につなげていく。

ここに、私は稼働後の仕事ならではの大きな価値があると思っています。

「知る」から始まる、稼働後の価値創出

システムを長く支えるということは、単にSAPに詳しくなることではありません。

お客様の業務を知る。
どこで困っているのかを知る。
これまでどのような判断をしてきたのかを知る。
どのような改善を積み重ねてきたのかを知る。
そして、これからビジネスをどう変えようとしているのかを知る。

そうした理解が、日々の活動の中に少しずつ蓄積されていきます。

だから私は、これからのストックビジネスを、「知る → 気づく → 共に変える」というサイクルで考えたいと思っています。

知る

日々の保守・運用を通じて、システムだけではなく、お客様の業務や事業の変化を深く理解する。

気づく

問い合わせや改善要望を、その場で解決して終わらせるのではなく、その背景にある課題や、これから起こる変化の兆しを捉える。

共に変える

見つけた課題や可能性について、お客様と一緒に考え、次の改善や変革につなげていく。

このサイクルを回し続けることが、稼働後だからこそ可能になる価値創出ではないでしょうか。

答えがSAPであるとは限らない

そして、ここでもう一つ、大切にしたいことがあります。

お客様から課題をご相談いただいたときに、「SAPでどう解決するか」から考え始めないことです。

もちろん、SAPの新しい機能によって解決できるのであれば、それを活用する。

一方で、SAP以外により適したソリューションがあれば、そちらを組み合わせる。

場合によっては、新しいシステムを導入するのではなく、今の業務プロセスや運用そのものを見直すことが最も良い答えかもしれません。

大切なのは、「SAPをどう使うか」ではなく、「お客様のビジネスをどう前に進めるか」から考えること。

SAPは、そのための非常に重要な基盤の一つです。しかし、目的そのものではありません。

SAPを含むさまざまなシステムやデータ、テクノロジー、そして業務や人の動きまで含めて考え、お客様にとって最も良い答えを一緒に探していく。

私は、そこまで踏み込むことが、これからの稼働後のビジネスには必要だと考えています。

お客様を長く知ることを、「価値」に変える

もちろん、お客様と長くお付き合いしているだけで、自然に価値が生まれるわけではありません。

大切なのは、そこで得られる理解や気づきを、次の行動につなげることです。

日々の問い合わせ。
障害への対応。
改善の相談。
現場からの小さな声。
お客様との何気ない会話。

その一つひとつには、次の変化につながる情報が眠っています。

それらを流してしまうのではなく、お客様を「知っている」ことを、お客様の次の価値につなげる。

ここに、長くお客様と向き合う私たちだからこそ果たせる役割があると考えています。

その意味で、ストックビジネスは「導入後の仕事」ではありません。

私はむしろ、お客様の変化を継続的に捉え、次の価値を一緒に創り続ける仕事だと思っています。

SAPは稼働してからが、本番だ

皆さんのSAPは今、「安定して動いている」でしょうか。

日々の運用の中で見えている課題や変化は、次の改善や変革につながっているでしょうか。

安定稼働は、もちろん大切です。しかし私は、それがゴールではないと思っています。

問い合わせを「解決して終わる」のか。
そこから、次の変化の兆しを見つけるのか。

そして、その兆しをお客様と私たちが一緒になって議論し、試し、新しい価値へ変えていけるのか。

そこに、これからのSAP運用、そしてストックビジネスの価値があると考えています。

知る。
気づく。
そして、共に変える。

SAPという重要な経営基盤を日々支えながら、お客様と長く向き合う。

だからこそ見えるものがあります。
だからこそ、創れる価値があります。

その活動を、お客様と一緒にもっとワクワクするものにしていきたい。

SAPは、稼働してからが本番です。

その「本番」を、お客様と一緒に創り続けていきたいと思います。