SAP ECC6.0のサポート終了が間近に迫り、SAP S/4HANA化への動きがここに来て加速してきたように思います。これから本腰を入れてSAP S/4HANA化に向けた検討を始めるというお客様も多いのではないでしょうか?
特に目新しい話題もないSAP S/4HANAへのコンバージョンについて記事にすることに抵抗はありましたが、これまで案件を経験した中で見えてきたこと、私が感じた注力すべきポイントを整理しました。
その中でも今回はお客様に認識・実施いただきたいポイントを整理していますので、ご参考にしていただけると幸いです。

SAP ECC6.0のサポート終了にあたって- SAPコンバージョン前にしておくべきこと(準備)

まずは、可能な限りSAP ECC6.0で不要なデータ/オブジェクトの削除、不整合データの修正を行ってください。
長年使用してきたシステムには不要なマスタ、処理されず残ったままの伝票、開発オブジェクトの残骸、設定したものの使用していないカスタマイズ項目などが残っているはずです。
コンバージョン作業時に発生する障害のほとんどがデータ起因によるものです。障害を取り除かないと次の作業へ進めないケースもあり、プロジェクトの進捗に大きな影響を及ぼします。また、確認・修正依頼作業が発生するなど業務ユーザーにも負荷がかかってしまいます。
骨の折れる作業ではありますが、コンバージョンの前作業として計画を立てて実施してください。新居へ引っ越しする際、不要なものを整理・廃棄するように、事前のデータ整理はしっかりやっておきましょう。

同じくデータの話ですが、次はデータ量の話です。
SAP ECC6.0に大量データを持っている場合、ストレートコンバージョンですべてのデータを移行するとコスト面で大きなインパクトとなります。
また、選択データ移行をする場合、どのような条件でデータを絞るのか?移行しないデータはどうするのか?確認(ブラウズ)方法はどうするのか?など、事前にデータ移行計画を立て、プロジェクト計画に取り込んでいきます。
データは選択したけれど、データ容量は期待していたほど減らないという事例もあり、事前に事実をしっかり確認のうえ、移行方式を選びましょう。

SAP ECC6.0のサポート終了にあたって- SAPにおける各テストへの注力

新規導入の場合は、単体テスト、結合テスト、統合テスト、システムテスト、UAT(※1)とそれぞれ目的に応じたテストが必要ですが、コンバージョンの場合、同じようにテストをすると期間・コストが跳ね上がりますので、主に変化点を中心としたテストを実施します。
ここで重要なのがユーザー目線で正しく動作するかの検証です。システム的なエラーは解消しても、SAP ECC6.0と同じように動くとは限りません。
アドオンに関しては特に注意が必要で、SAP社が提供するATC(※2)の結果に基づいて改修を行いますが、ATCでは見つからない仕様上のバグがこれまで多く見つかっています。このケースが厄介なのは、構文エラーがないためアセスメントでは発見されず、しかしSAP S/4HANAで動かしてみるとSAP ECC6.0と同じように動かないということです。(SAP ECC6.0上では正しく動くプログラム仕様になっている)
SAP社はバージョンリリースごとに細かなバグFIXによる改善をしています。そのためSAP ECC6.0で動いていたプログラムがSAP S/4HANAでは想定通り動かない。このようなプログラムは結構多いのです。UATはプロジェクトの最終局面のケースが多く、問題を早期発見するためには早い段階でキーユーザーに関与いただくなどの対策も効果的かと思います。

検証はしっかり行いたいが限られたリソースの中では難しい。という場合はテスト自動化ツールの利用を検討します。
テストはデータの準備、実施、確認、エビデンス取得など負荷がかかります。
テスト自動化ツールは検証シナリオを組み込んだら、あとは自動で実行、確認、エビデンス取得を行ってくれるツールです。全自動というわけにはいきませんが、テスト自動化ツールも進歩してきており、繰り返しテストを行う場合には効果を発揮するツールです。コンバージョンにおいてもそうですが、登録した検証シナリオはシステム維持・運用においても継続利用できるので検討する価値はあると思います。

思いつくところを書いてみましたが、読み返すと当たり前のことしか書いてないですね。コンバージョン(バージョンアップ)案件とは言え、事前に計画を立てしっかり準備をし、業務ユーザーに早い段階から参画していただくことが必要だと考えます。
昨今、働き方改革もあり、プロジェクトはIT部門主導で実施し、業務ユーザーの参画にはすごくシビアになられているケースが多いようです。
現行踏襲型のコンバージョンにおいて、現行業務を知っており、何が正しくて何が誤りかをすぐに判断できる業務ユーザーに参画していただくことでより早くより正確にプロジェクトを進められると思いますが、いかがでしょうか?

(※1) User Acceptance Test(ユーザー受入テスト)
(※2) ABAP Test Cockpit(SAP社標準のカスタムコード分析ツール)

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