はじめに

今回のコラムでは、8月6日に開催されたSAPNOW AI TOURで講演した弊社の「生成AIを活用した開発自動化とナレッジ共有効率化の事例」を要約してご紹介させていただきます。
講演当日は非常に多くのお客様にご参加いただき、生成AIの業務活用に対する関心が高いことを改めて実感しました。ここでご紹介する取り組みが、皆様の生成AI活用の一助になれば幸いです。

生成AIの基礎知識

さて、早速ですが最近よく耳にするAIとはどういったものでしょうか?
AIとは「学習」「推論」「判断」など 人間のようにふるまう技術の総称であり、いくつかの種類があります。
機械学習(ML)はデータからパターンを学習して予測や判断を行う仕組みであり、深層学習(DL)はデータに潜む特徴を自動的に学習して予測や判断を行う仕組みです。そして“生成AI”は、AIの中でもテキストや画像、音声などの新しいコンテンツを生成することに特化したAIです。
これまでの弊社の取組みは、データ分析などで機械学習・深層学習などを中心に行ってきましたが、近年は生成AIにフォーカスしています。

弊社の課題と方針

では、弊社がなぜ業務に生成AIを活用しようと考えたのか、その主な理由として以下の5つの課題がありました。

  • ・活況なIT需要による人材の確保
  • ・基幹システム保守の対象増加と投資規模の縮小
  • ・シニア世代の退職等による技術・知見の継承
  • ・SAP要員の調達単価の高騰
  • ・新ビジネスへのチャレンジ

これらの課題解決のために生成AIの活用を考えたのですが、取り組むにあたって3つの方針を立ててから開始しました。

  1. 既存ソリューションの強化
  2. 社内業務の生産性の向上
  3. お客様への貢献

この方針は、生成AI技術をつかって弊社の課題解決だけではなく、そこで得た知見・ノウハウ・人材を活用してお客様の課題も解決しようというものです。

取り組み事例

では、ここから具体的な取り組み事例をいくつかご紹介いたします。
まず1つ目の方針「既存ソリューションの強化」の取り組みであるプログラムコード生成です。
この取り組みは2023年から開始しましたが、当初はあまり情報や知見がなく順調とは言えませんでした。最初はファインチューニングも試みましたが、限られた要員・予算で進めていたこともあり、十分なデータが準備できず期待する結果が得られませんでした。
試行錯誤を繰り返しながら、現在はプロンプトエンジニアリングの手法で「ABAP」と「JAVA」について、この取り組みを継続しています。紙面の関係上、詳細のご説明はできませんが、プロンプトの記述に様々な工夫を凝らしています。
その中でもポイントとしては、従来から弊社が使用している設計書を画像取り込みしてコード生成用の設計プロンプトを生成していることです。これは従来のプロセスを大きく変えずに生成AIを活用することができ、活用のハードルを低くすることができました。
現時点では生成されたプログラムコードの手直しは必要なものの、それを考慮してもコーディングで50%以上、設計作業を考慮しても約20%の生産性向上を実現しています。

続いて2つ目の方針「社内業務の生産性向上」を目的としたナレッジ活用をご紹介します。
弊社のSAPビジネスは30年以上の歴史があり、多くのノウハウやアセットを持っています。これは弊社にとって大きな強みであり財産ですが、これらの活用が課題でした。
そこでIBMのwatsonxをプラットフォームにし、RAGの技術を活用したナレッジ活用基盤の構築を順次展開しています。
最初はパッケージ製品に関するナレッジ検索環境を構築しました。その後は導入ノウハウや過去事例・類似案件の調査、弊社サービスに関するQA応答など、活用範囲の拡大を図っています。

最後に3つ目の方針「お客様への貢献」事例を4つご紹介します。

①「DX共創サービス」

弊社の有識者がお客様体制に入りワンチームで生成AIのユースケースの検討や技術検証、弊社のノウハウ提供などを行い、お客様業務の効率化をご支援するサービスです。
生成AIやデータ活用は進め方やゴールはお客様によって様々です。共創することで弊社がもつ他社事例なども参考にしながらお客様にあったゴールを設定し、確実に進められるというメリットがあります。

②「データ利活用サービス」

需要予測ロジックを開発し、SAPの販売実績データに対して産業別売上高など外部データの相関関係を分析する需要予測モデルを構築した事例です。
従来は営業担当者が手作業で行っていた需要予測をAI/MLを活用して自動化しただけではなく予測精度の向上も実現しました。

③「データ利活用サービス」

セキュアな工場データ基盤構築と可視化の事例です。
ポイントは一部工程からスモールスタートをし、分析などで生成AIの活用ノウハウをスキトラしながら、段階的に対象範囲を広げていったことです。
お客様の事情にも合わせて段階的に導入していくことでイメージを持ちながら進めることができ、お客様からもハードルが低くやりやすかったと評価を頂きました。

④「IoTプラットフォームサービス」

工作機械の稼働状況可視化(AI/ML)による生産性向上の事例です。
従来は作業員が複数の工作機械を掛け持ちしていた場合などで、機械が停止した際の対応の遅れが稼働率低下に直結していました。そこにIoTプットフォームを導入して蓄積したデータを AI/MLを用いた分析&可視化によって状況をリアルタイムに把握することができるようになりました。
ダウンタイムを最小化し生産性の向上につなげた結果、年間で3,000万円のコスト削減と稼働率向上を実現しました。

今後の展開

最後に弊社の今後の取り組みについてご紹介し今回のコラムを締めくくりたいと思います。ここでご紹介した事例は、主に既存業務や弊社サービスでの生成AIの活用事例です。弊社はSAPだけでも約70社のお客様の保守業務を行っておりますので、既存サービスでの生産性や効率化に向けた活動は今後も継続していきます。
それに加えて、SAP社の新技術への追従も並行して進めています。特にクリーンコアに関連した技術やJoule活用に向けた技術習得はチームを立ち上げて取り組みを開始しました。今後は、この新しい技術についてもしっかりキャッチアップしていきます。
更に弊社は「製造DX Blue Print」と称し、デジタルツインをベースとしたモデルを構想しています。仮想デジタル工場として担う「分析」領域と「基幹システムERP」の領域に生成AIの活用を展開していく予定です。
弊社は、ERPだけではなく様々なソリューションをワンストップでご提供しています。各領域で様々なソリューションの選択肢を設けることで、これからも“製造業”のお客様のご要望に柔軟に対応して行きたいと考えています。
ご興味のある方は、是非弊社までお問い合わせください。