2005年にSAP ERP を対象とした保守サービス(AMS:Application Management Service)を開始して以来、日々、お客様から頂戴するお問い合わせは、Excelベースの「問合せ票」を起票いただき、メールでご連絡いただくところからスタートすることになっています。昨今の新しいお客様からは「なんてオールドスタイルなんだ」と驚かれることもしばしばですが、問い合わせプロセスをシステム化することについては、実は当社内ではかなり早い段階から検討してきました。
SAP保守サービス(AMS)向けサービスポータル開設の経緯
それでも、なかなか「サービスポータル」の導入に踏み切れなかった理由は幾つかあります。AMS開始当初は、お客様毎の保守運用業務に合わせた問い合わせフローをご提供していたため、画一的なシステムに置き換えると、かえってサービスレベルが低下したように感じられるのではないかと危惧していました。
加えて、システム化に踏み切れるほど魅力的なパッケージやサービスがなかなか出てこなかったことも判断を遅らせました。不勉強な私の感覚なので皆様とは少しずれがあるかもしれませんが、ITIL(※1)やITSM(※2)が2000年代に世に知られるようになり、運用保守の現場においてもITILやITSMのフレームワークを意識した会話が当然のようになったのが2015年頃でしょうか。その頃からITSM系やWFの製品/サービスが増え、機能も充実してきたように思います。当社AMSサービスの問い合わせフローも、インシデント管理のITILフレームワークをベースに標準化が進められるようになったのは、この頃からだったと記憶しています。
その後、2020年にはAMS問い合わせプロセスをシステム化することが方針決定されました。コロナ禍の影響もあり、導入は更に遅れることになってしまいましたが、2024年中には皆様にご利用を開始いただける見込みです。
サービスポータル導入によるメリットと、その先に目指すこと
AMS問い合わせ用サービスポータルの導入により得られるメリットについて、お伝えしていきたいと思います。
今回、サービスポータル導入にあたって、国産のITサービスマネジメント・プラットフォームである「LMIS(※3)」のサービスデスク機能を採用しました。お客様と同一プラットフォーム上で問い合わせ情報を管理するようになるため、情報共有がよりスムーズになります。弊社担当要員のアサイン状況や回答予定日がリアルタイムで確認できるようになる他、契約工数の消化状況を確認できるレポート等もご提供していく予定です。
加えて、LMISをお客様自身の問い合わせ/インシデント管理システムとして活用いただけます。過去の類似した問い合わせを簡単に検索することができるようになり、AMSに問い合わせる前に自己解決できるケースが増えるなど、問題解決のスピードアップに役立ちます。LMISはITIL準拠製品として、サービスデスクやインシデント管理機能以外にも様々な機能を備えています。もしIT運用の改善ツールとしてLMISにご興味を持たれたお客様がおられましたら、活用方法を一緒に検討していけたらと思っています。
また、コミュニケーション手段を刷新して、お客様の利便性向上を図るだけではなく、我々もLMISを活用してAMSの問い合わせ対応プロセスを改善していきます。
問い合わせ対応のナレッジやリソース管理をLMISに一元化することで、作業の効率化や回答スピードアップなど、サービス品質の向上にも役立てていきます。昨今では、SAPシステムに関する運用維持支援サービス(AMO)や業務アウトソーシング/BPOに対して、お客様ニーズの高まりを感じています。サービスデスク機能の強化は、弊社AMSサービスのスコープ拡大を支える基盤整備としての取り組みにもなっています。
今回は、弊部で取り組んでいるサービスポータル刷新に向けたお話をさせていただきました。AMSのお客様には、準備が整い次第、システム移行に向けたご相談を正式にご案内させていただきます。システム移行に際してはご不便をお掛けすることもあるかもしれませんが、何卒ご理解ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
(※1)Information Technology Infrastructure Library(ITサービスマネジメントにおけるベストプラクティスをまとめた書籍群)
(※2)IT Service Management(組織がエンドユーザーに提供するITサービスを設計、提供、管理、および改善していくプロセス)
(※3)「LMIS」は、株式会社ユニリタの商標です。