Digital Adoption Platform（DAP）は、ERP導入におけるユーザー支援ツールとして注目を集めていますが、その価値はERPの領域にとどまりません。特に製造業においては、現場とシステムの“最後の一歩”を埋める存在として、より広範な活用が期待されています。

製造業では「標準化」が命──だがそれは“現場負荷”を生む

製造業においては、生産計画、品質管理、在庫管理、工程管理、設備保全、出荷など、複雑に絡み合う業務プロセスの中で高い標準化と精度が求められます。

そのため、ERPやMES、PLMなどのシステムが導入されますが、現実には次のような課題が残ります：

  • 現場でのシステム操作の習熟度にばらつきがある
  • 入力ミスや未入力が品質不良や納期遅延の引き金になる
  • 現場ごとの“ローカルルール”が存在し、標準化が進まない

ここにDAPが加わることで、「誰でも、迷わず、正確に」操作できる環境を提供できるようになります。

DAPは「紙マニュアルを超えた“作業ナビ”」になる

従来、製造現場では操作手順書や紙のマニュアルが使われてきましたが、それだけでは次のような問題が発生します：

  • 操作手順が更新されても古いマニュアルが使われ続ける
  • 熟練者が退職した後にノウハウが失われる
  • 多言語対応が不十分で海外拠点との統一運用が難しい

DAPは、アプリケーション画面上にリアルタイムで操作ガイドを表示でき、ユーザーの画面・動作に応じて「次に何をすべきか」を提示します。
これにより、現場作業者が「紙を見て」「思い出して」「確認してから入力する」といったプロセスを省き、作業効率と精度の両立を実現します。

ERP以外への展開──MES・SCM・PLMなどとの親和性

製造業にはERP以外にも多くのシステムが存在します。たとえば：

  • MES（製造実行システム）：実績入力、工程進捗、異常報告
  • SCM（サプライチェーン管理）：発注、需給調整、供給遅延対応
  • PLM（製品ライフサイクル管理）：図面管理、設計変更、承認フロー
  • EHS（環境・衛生・安全管理）：事故報告、点検結果の記録

これらのシステムは専門性が高く、UIも決して使いやすいとは言えません。現場では**「とりあえず紙で回す」文化**が根強く残っているのも実情です。
しかし、こうしたシステムにもDAPを導入すれば、

  • 作業者がシステムを迷わず使えるようになる
  • 教育コストや立ち上がり期間を大幅に短縮できる
  • 運用ルールの逸脱（例：未入力・誤入力）を抑制できる
  • 監査や品質トレースにも耐えうる運用が定着する

といった効果が期待できます。

DAPは「現場知」と「IT」の橋渡し役

製造業のDXにおいて、課題となるのは**“システムと現場のギャップ”**です。ERPや周辺システムの導入が進んでも、現場で「うまく使われない」ことが多く、結局エクセルや紙に逆戻り…というケースも少なくありません。
DAPはそのギャップを埋め、ITシステムを「使えるもの」へと変えていく仕組みです。特に、多拠点・多言語・多世代にまたがる製造業では、その効果は計り知れません。

最後に──製造業のデジタル化を“定着”させる鍵

製造業のDXは、「導入」だけでは成功しません。「現場に根づいて初めて価値を生む」のです。
その意味で、DAPは単なる補助ツールではなく、**現場力とITをつなぐ“不可欠な要素”**となっていくでしょう。
ERPの成功も、MESの活用も、PLMの定着も、すべては現場が使いこなせてこそ。
デジタル化の“最後の一手”がDAPである──そう考える企業が、これから増えていくはずです。
ご興味のある方は、是非弊社までお問い合わせください。