KSC版Activate準拠テンプレートで整える導入方法論
前回の記事では、コベルコシステムが製造業向けSAP Public Cloud版導入に向けて、4つのテーマで取り組みを進めていることをご紹介しました。
1つ目が、独自の導入方法論の整備。
2つ目が、製造業向けアセット「HI-KORT C」の整備。
3つ目が、In-App拡張、BTP、Integration Suiteなどの新技術への対応。
そして4つ目が、JouleやカスタムAIを含むAI活用による差別化です。
本稿では、その中でも「導入方法論」に焦点を当てます。
SAP Public Cloud版導入では、標準機能を起点に業務を見直すFit-to-Standardの考え方が前提になります。従来のように、現行業務に合わせてシステムを作り込む進め方とは異なり、標準機能を確認しながら、どこを標準に合わせ、どこを個別に検討するのかを早い段階で判断していきます。
ただし、製造業において「標準に合わせる」判断は簡単ではありません。
販売、購買、生産、在庫、原価、会計などの基幹業務は相互につながっています。さらに、PLMシステム、MES、スケジューラー、WMSなどの周辺システムとの役割分担も検討する必要があります。
だからこそ、SAP Public Cloud版導入では、製品機能を確認するだけでなく、プロジェクト全体の設計をどう考え、どのように進めるかが大きなテーマになります。
コベルコシステムでは、製造業のお客様がSAP Public Cloud版導入を検討しやすく、安心して進められるよう、SAP Cloud ERP導入方法論の標準化を進めています。
Public Cloud版導入で迷いやすいポイント
SAP Public Cloud版導入では、導入初期から整理すべき論点が多くあります。
たとえば、次のような点です。
- ・どの業務領域を導入対象にするのか
- ・どこまでを標準機能で対応するのか
- ・どこを周辺システムや拡張で補うのか
- ・Fit-to-Standardをどのように進めるのか
- ・導入後のアップデート対応をどう考えるのか
- ・将来のデータ活用やAI活用を見据えて、何を整えておくべきか
これらをプロジェクトごとに一から整理していると、検討の抜け漏れや手戻りが発生しやすくなります。
特に製造業では、ある業務領域での判断が、別の業務やデータ連携に影響することも少なくありません。生産計画、製造実績、在庫、原価、会計がつながるからこそ、早い段階で全体像を見ながら進めることが求められます。
コベルコシステムでは、こうした導入初期の迷いやすい論点を整理するために、SAP Activateをベースとした「KSC版Activate準拠テンプレート」の整備を進めています。
KSC版Activate準拠テンプレートとは
SAP Activateは、SAP導入における標準的な導入フレームワークです。
一方で、実際の製造業向けプロジェクトでは、SAP Activateの考え方を理解するだけでは足りない場面があります。
各フェーズで何を確認するのか。
どの資料を使ってお客様と認識を合わせるのか。
Fit-to-Standardで出てきた差分を、どのように判断するのか。
周辺システムや拡張が必要な領域を、どのタイミングで切り分けるのか。
こうした実務上の進め方まで具体化しておくことで、導入プロジェクトは進めやすくなります。
KSC版Activate準拠テンプレートは、SAP Activateに準拠しながら、コベルコシステムが製造業向けSAP導入で培ってきた知見を反映した導入方法論です。
現在、導入方法論の全体概要に加え、DDA実施、スターターシステム構築、構想フェーズ、準備フェーズ、評価フェーズ以降の手引きやテンプレート資料を段階的に整備しています。
また、各フェーズの終わりには、確認すべきポイントを整理することで、検討漏れや手戻りを抑えながら、品質を維持してプロジェクトを進められる方法論を目指しています。
これは、単に資料を増やす取り組みではありません。
プロジェクトの各フェーズで、何を確認し、どの成果物を作り、どのように次の判断につなげるのかを整理するためのものです。
実案件の知見を、次の案件で活かせる形にする
導入方法論を整備するうえで大切なのは、机上の整理だけで終わらせないことです。
SAP Public Cloud版導入では、実際のプロジェクトを通じて初めて見えてくる論点があります。
Fit-to-Standardセッションでは、どのように説明するとお客様に伝わりやすいのか。
どの順番で確認すると、業務影響を把握しやすいのか。
周辺システムや拡張が必要な領域について、どのタイミングで判断すべきなのか。
お客様の理解度や体制に合わせて、どのようなタスクを追加すべきなのか。
こうした知見は、実案件の中で具体化されていきます。
コベルコシステムでは、実案件で得られた作業ガイドや成果物を、後続案件でも活用しやすい形へ汎用化していくことを重視しています。
一度作って終わりではなく、実案件で使い、改善し、次の案件へ反映する。
この循環によって、KSC版Activate準拠テンプレートは、より実務に即した導入方法論へと進化していきます。
HI-KORT Cと連動し、判断材料を増やしていく
導入方法論は、製造業向けアセット「HI-KORT C」とも密接に関係します。
HI-KORT Cは、製造業向けSAP Public Cloud版導入を支援するアセットです。
この導入方法論も、HI-KORT Cを構成する重要な要素の一つです。
たとえば、導入初期に想定スコープアイテムを確認する場合、HI-KORT Cで整理したスコープや業務プロセスを活用できます。
Fit-to-Standardを行う際には、HI-KORT Cで整理した業務プロセスや確認観点が参考になります。
また、移行やマスタ、コード体系、Fioriアプリ、周辺システム連携など、導入時に確認すべき情報を整理しておくことで、プロジェクトの立ち上がりをスムーズにしやすくなります。
最近の取り組みでは、スコープアイテムに関する業務フロー、Fit-to-Standardで活用する資料、移行関連資料、コード体系定義など、導入初期や評価フェーズで役立つ材料も整備しています。
HI-KORT Cは、アセットそのものだけでなく、それらをどのタイミングで、どのように活用するかまで含めて整備している点に特徴があります。
業務・スコープ・判断材料と、それを活用する導入方法論を組み合わせることで、SAP Public Cloud版導入をより現実的に進めやすくなると考えています。
お客様に合わせた導入方法論を整える
SAP Public Cloud版導入では、標準機能だけで対応しきれない領域をどう補うかも大切な論点です。
Public Cloud版の価値を活かすには、クリーンコアを保ちながら、周辺システムや外部サービスと適切に連携し、導入後も継続的に活用・拡張していくことが求められます。
一方で、お客様ごとに置かれている環境や体制、予算、業務文化は異なります。
そのため、すべてのお客様に同じ進め方を当てはめるのではなく、状況に応じた導入パターンを整理しておくことが大切です。
たとえば、次のような観点です。
- ・お客様と一緒に実行できる現実的な計画になっているか
- ・予算や体制を踏まえて、無理なく進められる範囲になっているか
- ・どの範囲をお客様側で担い、どこをコベルコシステムが支援するのか
- ・将来の活用や拡張まで見据えた計画になっているか
こうした観点を導入初期から確認することで、お客様ごとの業務特性や体制に合わせた進め方を検討しやすくなります。
また、生成AIやJouleなどの活用も、ERP導入とは切り離せないテーマになりつつあります。
AI活用を前提にした導入方法論へ進化させることで、設計、開発、テスト、運用における作業効率の向上が期待できます。
一方で、すべてをAIで自動化するのではなく、AIの出力内容を確認し、品質を維持するための仕組みも必要です。
コベルコシステムでは、こうした観点も導入方法論の中で整理し、SAP Public Cloud版導入における生産性向上と品質維持の両立を目指しています。
まとめ
SAP Public Cloud版導入を製造業で進めるには、標準機能を起点に業務を見直すFit-to-Standardの考え方が重要なポイントになります。
一方で、製造業の業務はERPだけで完結しません。販売、購買、生産、在庫、原価、会計などの基幹業務に加え、周辺システムとの役割分担、拡張方式、データ連携、導入後の運用まで含めて考える必要があります。
Public Cloud版では、継続的なアップデートを前提に運用していきます。導入時点の要件だけでなく、導入後に追加される機能や変更点をどのように確認し、業務や運用に取り込むかも見据えておくことが大切です。
だからこそ、プロジェクトの各フェーズで何を確認し、どの資料を使い、どのように判断するのかを整理した導入方法論が求められます。
コベルコシステムでは、SAP Activateに準拠しながら、製造業向けSAP Public Cloud版導入に必要な確認観点や成果物を整理し、KSC版Activate準拠テンプレートとして標準化を進めています。
実案件で得られた様々な知見を後続案件へ活かし、導入初期から判断しやすい形にしていく。
その積み重ねにより、プロジェクトごとの進め方や品質のばらつきを抑え、導入後の運用を早期に安定させ、導入効果を得やすくすることを目指しています。
お客様の環境を十分に理解し、SAP導入で培ってきた知見を方法論として標準化していくこと。
そして、その方法論をベースに、お客様に寄り添いながら導入を進めていくこと。
それが、SAP Public Cloud版導入を安心して進めていただくために、コベルコシステムが大切にしている考え方です。






















