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2013年11月01日

「コト」の価値を高めるブランド構築

商品にブランド力があれば、お客様は好意的なイメージを持ち、商品を選択してくださいます。お客様のブランドロイヤリティが高まれば、次回以降もお客様は商品を買い続け、価格プレミアムが付いて、値崩れすることもなくなります。今回はこのような「コト」の価値を高める“ブランド構築”についてお話します。

ブランドには、商品につく「プロダクトブランド」や企業につく「コーポレートブランド」があります。一般的に、商品やそのシリーズ、カテゴリーにつくブランドはその機能や仕様、使用技術に対応しています。一方で必ずしも機能や仕様、使用技術に紐づかない、普遍的、長期的なブランドがあります。例えば、前回のコラムで取り上げたスイス製腕時計やドイツ製高級車のもつブランドがこれに相当します。機能や仕様のような「もの」に対する機能的価値ではなく、「コト」がもたらす意味的価値を高めるのはこのようなブランド力です。

まず商品のブランドを構築するには、「お客様にどんな価値の提供を約束するのか」というブランド・エッセンスを設定します。以前のコラムで、企業が新商品を開発する時に商品コンセプトを立案し、これが商品の「コト」づくりを大きく左右するとお話ししました。ブランド・エッセンスは商品コンセプトの根源となる長期的ビジョンであり、文字通りブランド力の精髄となります。人それぞれの主観によって意味的価値は異なるため、商品のターゲットとするお客様層を明確に定義する必要があります。幅広いお客様層に売れる商品にするためには、より普遍性、共通性の高い意味的価値を見出すことが求められますが、平凡で特徴がなくなってしまっては、強いブランド構築はできません。

例えば、強いブランド力をもつことで有名なBMW社の自動車は「駆け抜ける歓び」をお客様に提供することを約束しています。同じドイツの競合高級車がエスタブリッシュ層を対象にしているのに対して、BMW社がターゲットとするお客様層は、それよりも若い成功者層に置いていると見ることができます。時代に応じてSUV車や電気モーター車を新たに市場投入するときも、そのブランド・エッセンスから逸脱することがないように、確立してきたブランドを損なうことがないように、投入時期を遅らせてでも周到に進められたと言われてます。

企業はブランド・エッセンスや自社ブランドのポジショニングをブランド・ステートメントとして明文化し、社内外に発信します。このブランド・ステートメントは企業のホームページなどでよく見られますが、一般的には、経営理念や経営ビジョンのステートメントも一緒に掲げられています。こられのステートメントは一見似ていて区別しづらいかもしれませんが、ブランドステートメントは、あくまで「お客様に約束する価値」を明文化していることがポイントです。

次に、企業は設定したブランド・エッセンスをお客様に伝える必要があります。ブランド・エッセンスをお客様に伝えるには、広告・宣伝といったマーケティングに留まらず、全社一丸となった活動が要求されます。商品自体、そして販売や修理など、あらゆるお客様接点で一貫したメッセージを発信していくことが必要です。例えば、先ほど例に掲げたBMW社では、広告、パンフレット、レース活動、店舗、販売員がどんなメッセージを伝えるべきかが指示され、達成目標が定められています。お客様に約束する価値を、統合的にコミュニケートし、その約束をきちんと果たしているとお客様が認識することで、初めてブランドが確立していきます。

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「もの」は工場で作られますが、ブランドはお客様によって作られます。意味的価値は主観的なので、機能的価値に比べて他人に伝えるのが難しかったのですが、最近はSNSなどの口コミで意味的価値も伝わり易くなってきました。トラブルへの対処一つでも、そのブランドにはプラスにもなり、マイナスにもなります。ブランドを強くするには、企業は良い情報も悪い情報も迅速に公表し、真摯に対策を打つことが重要だと言えます。

日本の多くのメーカーもブランドの重要性を認識し、ブランド構築をおこなっていますが、今後「コト」の価値を高めるブランド力を強化する活動を、さらに根付かせていく必要があると思います。

次回はブランド力強化についてお話したいと思います。

2013年11月

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