2026年07月01日
突如現れた“AIエージェント”に関する5つの疑問
そもそもAIエージェントは何が新しく、どこまでのことができるのでしょうか。今回は、注目を集めるAIエージェントに関する代表的な5つの疑問を切り口に、その仕組みや利用の実態を整理し、今後の活用に向けた考察を行います。
生成AIと何が違うのか?
AIエージェントとは、与えられた目標を達成するために自律的に行動するAIシステムです。生成AIは指示されたことへの答えを生成するのに対し、AIエージェントは目標に対してやるべき仕事と順序を自ら判断し、実行します。「こんなことがしたい」と依頼を受けると、本人に成り代わり判断し、実務をしてくれる代理人や代行者、すなわち“エージェント”のようなイメージです。生成AIの登場から2年も経たないうちに、海外のエンジニアたちが実験的に、目標を与えるだけで、LLM(大規模言語モデル)が自律的に思考と実行のループを回すプログラムをオープンソースとして公開したところ、ベンチャー投資家やテック企業がその価値に着目しました。そこから“AIエージェント”という概念として整理・拡張されたことで、現在のトレンドへと広がっています。これまでのAIより賢くなったのか?
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この構造から分かる通り、AIエージェントとは新しい知能ではなく、既存の生成AI(LLM)をベースにしたシステムで、AIとしての賢さはこれまでと変わりません。ところが、生成AIは一定の確率で間違いを起こすのに対し、AIエージェントは複数のLLMタスクを実行するため、間違う確率はもっと高くなっていきます。また、AIエージェントでは外部へのアクションを伴うため、間違い発生時の影響範囲も広くなります。そこで、AIエージェントにおいては、誤動作や暴走を防ぐための制御機能とガバナンス機能が極めて重要となります。制御機能がタスク実行時のチェックを行い、ガバナンス機能は実行ループ回数の制約、人による承認、セキュリティ管理などで、システム全体の安全確保の役割を担います。
どの程度自律的に仕事するのか?
AIエージェントは、人に代わって、自律的に仕事を遂行すると期待されています。確かに目標から必要なタスクを計画する役割は、LLMが担います。しかし、その自律性を実際のシステムとして成立させているのは、実行フロー判断やプロンプト作成を行う制御機能であり、これは人が設計した決定論的なプログラムです。つまり、AIエージェントは完全に自律しているわけではなく、人が設計した枠組みのなかで自律的にふるまっているにすぎません。そのため、AIエージェント設計においては、“自律”という言葉に惑わされず、「どこまでをコード(決定論)で縛り、どこからをLLM(確率論)に委ねるか」という境界線を明確にすることが重要となります。
ROIが確認された適用事例はあるのか?
AIエージェントのROIが実際に確認されている適用事例はまだ限定的ですが、その事例の一つが、カスタマーセンターにおける顧客からの依頼対応です。例えば顧客から返品依頼に対して、購入実績の確認、返品条件への適合確認など複数のタスクを実行し、最終的な回答を自動で行います。これにより、顧客からの依頼対応にかかる人件費は大幅に削減されています。
もう一つはプログラム開発です。AIエージェントを活用したエンジニアとそうでないエンジニアに同一条件でプログラム開発を行わせたところ、活用したグループの生産性が約5割向上したという検証結果も報告されています。
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AIエージェント適用の成功要因は何か?
これら事例の共通の成功要因は、LLMの間違いを前提としたチェックの仕組みが予め組み込まれている点です。カスタマーセンターの例では、制御機能が返品ルールに基づく期限検算や回答文の社内規程への適合をチェックします。また、プログラム開発の例では、コンパイルやテストによりエラーが自動検出され、修正ループが回る仕組みになっています。すなわち、制御機能が機械的に間違いをチェックできるように、業務ルール・基準が明確に言語化・データ化されていることが共通の成功要因です。
一方、例えば、人の判断を都度必要とする受発注や在庫管理業務のイレギュラー処理にAIエージェントを適用しても、省力化効果は限定的であり、AIの間違いによる業務リカバリーに多大なコストが要るようでは、ROIは成り立ちません。
このようにAIエージェントは大きな可能性を持つ一方で、適用領域を誤ると期待通りの成果を得ることはできません。今後各社がAIエージェント活用を進める際には、その特性に合った業務領域を見極めることが第一です。そして、過度な期待に流されることなく、現実に即した活用によって確実にROIを実現していくことが重要となります。
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