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2022年05月01日

脱炭素に向け活用したいテクノロジーとは

製造業の各企業にとって脱炭素は待ったなしの最優先課題であると約1年前のコラム※1で話しました。最近の欧州の紛争が長引き、脱炭素の進捗を遅らせる懸念もあるとはいえ、エネルギー安全保障の重要性を考えると脱炭素の重要性が再認識され、脱炭素の軸は揺るぎません。温暖化に伴う異常気象で住む土地を失い難民化した人々は2020年で3000万人を超え、紛争などによる難民数の3倍に上ります。日本が掲げた2050年カーボンニュートラル達成、そして2030年46%削減に向け、猶予はありません。排出炭素への課税や排出枠取引をおこなうためのカーボンプライシングについても、来年度からの導入が検討されています。法的規制も加わることで、各企業は排出炭素削減目標達成に向け、取り組まざるを得ない段階にきています。しかも、単純に排出量を減らせばすむわけではなく、経済面との両立が必要です。
そこで、対策が急がれる企業にとって、頼りになるのがテクノロジーです。今回はメーカーの脱炭素を支援するテクノロジーを「グリーンテック」と呼び、その期待効果を見ていきたいと思います。

脱炭素を支援するグリーンテック図:脱炭素を支援するグリーンテック(①~⑤)
(クリックして拡大できます) 

上図の横軸は、脱炭素の取り組みステップを表します。どの企業もまずCO2排出量を把握することが最初の活動となります。次のステップがその排出量の削減です。それでもオーバーしたCO2は他社の排出権の購買や他の森林保護事業などで相殺する必要があります。そして最後のステップで、排出されたCO2を回収し、地中深い層への貯蔵や別の物質へ転換を行います。 これら企業の脱炭素の取り組みステップにおいて、どのようなグリーンテックが利用でき、そしてどのような効果が期待できるか順に見ていきます。

①環境情報管理:
企業が報告書にCO2削減量を開示していくには、まず排出量の把握が第一歩となります。カーボンプライシングが導入されると、企業はCO2排出量の把握と規定された基準による報告が義務付けられます。CO2排出量や他環境有害物質の情報収集及び文書管理などを効率化し、タイムリーな集計と各種報告を支援するグリーンテックが「環境情報管理」です。

②工場エネルギー管理システム(FEMS):
工場内の空調や機械などは日々膨大な電力を使用します。さらに、工場は最大需要に合わせて余裕をもったエネルギー供給をするため、構造的に無駄が発生しています。工場内のエネルギー消費を把握し、この情報を基にエネルギー使用量の予測、そして使用量に応じて供給を最適化するグリーンテックがFEMSです。設備調整、運転最適化、省エネ装置と電力需要装置を連携させることで無駄なエネルギー消費を削減できます。

③ビルエネルギー管理システム(BEMS):
工場同様にオフィスビルのエネルギー管理を行うことで脱炭素につなげるグリーンテックがBEMSです。温度・湿度・人の有無をセンサーで感知し、自動的な設定やオンオフの切り替えを行うことで、快適性を維持しながら空調や照明における節電ができます。

④グリーン・クラウド:
データセンターの消費電力は、航空業界全体に匹敵する大量のCO2を排出します。企業がデジタル化を進め、ビッグデータやAIの利用等が加速していくと、大規模サーバー増強とそのための冷却装置が必要となり、消費電力は増加する一方となります。そこでCO2削減策となるのが、パブリッククラウド・サービスへの移行です。クラウドであれば、必要分だけリソース利用するため、自社の余分なサーバー保有による消費電力を削減できます。さらに、再生可能エネルギーを利用しているグリーンなクラウド利用となれば、脱炭素に大きく寄与します。

⑤流通・仲介クラウド: 
企業間のCO2取引の仲介や回収・転換のための流通拡大を支援するグリーンテックです。カーボンニュートラルは、企業単独の取り組みだけでは実現しません。流通・仲介クラウドを通して、排出したい企業と購入者のマッチングを行い、CO2の流通総量や移送量、購買量、貯留量などを可視化し、証跡管理ができます。

日本の製造業には、先行して脱炭素に取り組み、既に自社でグリーンテックを整備済みの企業がある一方、これまで背を向けていた企業もあります。また、脱炭素の目標も、企業により大きく異なります。CO2排出を相殺するカーボンニュートラルどころか、CO2排出を完全になくすカーボンゼロや、CO2吸収の方を多くするカーボンネガティブを目標にするなど、企業は自社の脱炭素目標に合わせたグリーンテックを利用する段階になってきました。Excelによる排出データ管理では、すでに限界にきています。製造業では、丁度スマートファクトリーの構築や展開に取り組まれている企業も多いでしょう。カーボンニュートラル対応を規制遵守のために行うのではなく、企業競争力を高める積極的な方策として、DXとGX(グリーントランスフォーメーション)を同時に進められることをお奨めします。

※1:待ったなしの脱炭素
https://www.kobelcosys.co.jp/column/monozukuri/20210401/

2022年5月

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