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2020年04月01日

「CASE」本格化で産業構造は様変わり②
~マイカーに代わるMaaSに各社参入~

今回はCASEの「S」シェアリング&サービスが進展し、マイカー保有からMaaS(Mobility as a Service):マースへと移行していくことで、現在の産業構造がどのように変わっていくかを見ていきます。
現在、日本では約8割の世帯がマイカーを保有し、複数台持っている世帯も少なくありません。このように多くの世帯がなぜマイカーを保有しているのでしょう? 第1に挙げられる理由は、「マイカーで好きな時に、好きな所へ、自由に行きたい」という移動手段としてのニーズ(機能的価値)です。そしてもう一つの理由は、「車や運転そのものが好き」、「高級車を持ちたい」といったその人の主観的な嗜好(意味的価値)によるものです。

マイカーをもつ理由
移動ニーズ(機能的価値) 嗜好(意味的価値)
  1. 目的地に早く移動したい
  2. 自由に移動したい
  3. 手荷物から解放されたい
  1. 運転を楽しみたい
  2. 好きな車に乗りたい
  3. 高級車を所有したい

図表1:マイカーをもつ理由

かつては増え続けていた日本のマイカー保有台数は、ここ10年横ばい状態です。しかも、最近は乗用車よりも軽自動車の割合がどんどん多くなってきて、若い年代層の車離れも目立っています。このように今後マイカーは減少していくと考えられますが、その理由は次のようです。

マイカーをもたない理由
個人負担 社会問題
  1. 高い保有コスト
  2. 交通事故のリスク
  3. 運転の負担
  1. 地球温暖化
  2. 交通渋滞
  3. 駐車場資産の無駄

図表2:マイカーをもたない理由

マイカーを保有しない、或いはマイカーを手放す最大の理由は、保有コストの高さです。車の購入費用も高いですが、ガソリンや駐車場代に加え、車検やオイル交換費、そして保険費用や税金など、保有コストは高くつきます。実は毎日マイカー通勤している人の車でも、その稼働率は精々10%程度で、大半の時間は駐車場に止まっている鉄の塊で、高い保有コストに見合わないことが明らかです。また、交通事故のリスクは高く、今後高齢者が増え続けることで、免許返納が増えていくでしょう。さらに、年々深刻となっている地球温暖化や渋滞もマイカー保有の逆風となります。

利便性・快適性の高いマイカーで移動したいけれど、その保有コストは高過ぎます。このようなジレンマを解決するサービスとして急増しているのが、カーシェアリングです。カーシェアリングのステーション数や車両数は毎年20%前後の勢いで増えています。カーシェアリングは自動車を「所有」から「利用」に変えていくことで、合理的に移動ニーズを満たしてくれます。その利便性を実感する人が増えてくれば爆発的に普及していくと見られています。さらに、今後「A」自動運転が普及していくと、免許不要の自動車移動が可能になり、高齢者や元々運転免許をもってない人でも、利便性の高い移動サービスをリーズナブルな値段で利用できます。「A」自動運転は交通事故リスクや運転負荷の軽減も可能にします。

そもそも人は、TPOに応じた最適な交通手段とルートで移動したいものです。例えば、遠方に行くには電車や飛行機を使い、自宅から駅/空港そして駅/空港から目的地まで自動車を使うことで、利便性とコストが両立できます。渋滞する市街地で早く移動したいときは、地下鉄と自転車の併用が便利です。このようにTPOに応じた移動のために、最適手段やルートを設定してくれ、その予約から決済までを一括セットで提供するサービスがMaaSです。

移動サービスを一括提供・決済するMaaS

図表3:移動サービスを一括提供・決済するMaaS

MaaSは既にフィンランドや米国、中国で普及しています。ヘルシンキでは、電車やタクシーが月6万円強の定額で乗り放題のサービスが提供され、多くの登録会員が利用中です。マイカー利用者から公共交通利用にシフトすると、公共交通の収益がよくなることで利便性が高まり、渋滞も解消されます。MaaSには当然ながら、自動運転によるカーシェアリングも含めた実験も始められています。

このようにCASEが本格化していくと、将来のマイカーは高級車や特別仕様車などに限られていき、大半の車はMaaSの移動サービスで使われていくと想定されます。では消費者へ統合的な移動サービスを提供するMaaSプラットフォームは、誰が担っていくのでしょうか?「E」電動化と「A」自動運転に勝ち残った自動車メーカーやIT企業、そして公共交通機関がMaaSに主軸となって関わってくるはずです。GAFAとは異なるMaaSプラットフォームには、移動に関する貴重なデータが集まっていきます。それを分析することで新たなビジネス機会が産まれるため、不動産会社やデベロッパー、飲食チェーン、小売チェーンなども参画してきます。MaaSは消費者の移動ニーズを満たすだけでなく、例えば、そのデータを活用することで、過密化が進む大都市の再整備と過疎化に悩む地方の町づくりにもつながるものと期待します。

2020年4月

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