代表取締役社長が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2026年08月01日

「部活動廃止」の先にある、甲子園への新しい道
~「画一性」から「多様性」へ~

「部活動廃止」の先にある、甲子園への新しい道

近年、教育の現場では、これまで「あたり前」とされてきた仕組みが大きく変わり始めています。兵庫県神戸市では、教員の負担低減などを理由に中学校の部活動を廃止し、地域へ移行する取り組みが進められています。今年8月までに全ての市立中学校で部活動が「KOBE◆KATSU(コベカツ)」と呼ばれる活動に移行していきます。放課後、休日に校区の枠を越えて、スポーツ・文化芸術活動をはじめ、さまざまな活動に参加できる新しい仕組みです。
子どもたちのニーズは時代とともに多様化しています。これまでは自分の学校にやりたい部活がないために諦めてしまうケースがありましたが、これからは従来の中学校にあった運動部・文化部の種目のほか、例えばダンス、釣り、料理など幅広い選択肢から選ぶことができるようになります。大会やコンクールへの出場を目指すスポーツや文化活動から、趣味や交流を楽しむ活動、社会貢献活動まで、自分の「やりたいこと」に打ち込む環境を整備していくのです。

高校野球界でも近年、新しい波が押し寄せています。2012年春に地球環境高校(長野)が通信制高校で初めて甲子園出場を果たし、その後クラーク記念国際高校(北海道)やエナジックスポーツ高校(沖縄)など特色ある教育環境を持つ学校が聖地への切符を手にしました。
昨夏は愛媛県に本校を置く通信制高校の未来富山高校(富山)が全校生徒24人、野球部員23人で甲子園出場を果たして話題となりました。正式な校名は「富山みらい学園 未来高等学校 富山中央学習センター」。従来の高校のイメージとは異なる名称ですが、野球部員全員がアスリートコースに所属し、高校卒業に必要な単位を通信制の柔軟な学習環境の中で取りつつ、野球をメインに打ち込んでいます。同校のウェブサイトには「やりたいことを全力でやる」「夢への最短距離」といったキャッチフレーズが並びます。エナジックスポーツ高校も学院長が「野球とゴルフに特化した、特色ある学校です」と明言しているように2競技をメインとしたスポーツに打ち込むための環境を整備し、強化を進めてきました。
さらに近年は大手予備校の進出も目立ってきています。四谷学院が今年4月、茨城に広域通信制高校を開校。「大学進学と甲子園出場の両方を目指そう」とテレビCMも放映して生徒を集め、創部3か月の1年生だけのチームで今夏初戦突破を果たしました。早稲田予備校を経営する学校法人・早稲田学園が設立した「わせがく」高校グループの3校も夏の戦いに挑みました。「わせがく」各校では5日登校、2日登校、フレックス、Web、自学などから自分の希望に合わせたスタイルを選択して学習を進められることも特徴となっています。このような学校を選ぶ高校生が増えている背景には、自らの目標に合わせて学び方や活動の場を選びたいという価値観の広がりがあるといえます。

これまでは、学校が用意した教育や活動の枠組みの中で、多くの生徒が同じような経験を積みながら、自分に合ったものを見つけていくことが一般的でした。もっとも、どの経験が将来役立つかは事前には分からず、一見無駄に思える経験が将来の可能性を広げることもあります。とはいえ、選択肢が多様化した現代では、「全員で同じことをする」よりも、一人ひとりが自らに合った学びや挑戦の機会を選ぶ時代へと変わりつつあります。そうした変化を受け、特定の分野に強みを持ち、それぞれの夢や目標を後押しする特色ある学校が増えているのも、また時代の流れといえるでしょう。

このような変化は教育の世界にとどまらず、企業経営にも大きな影響を与えます。これまで企業では、会社が社員を一律に育成し、同じようなキャリアを歩ませることが一般的でした。しかし、これからは社員一人ひとりの強みや目標に合わせて活躍の場を提供し、それぞれの能力を最大限に発揮できる環境づくりが求められていくでしょう。そのため、これからのチームワークのあり方も、多様な強みを持つ人材が互いを補完し合う形へと変化していく必要があります。その際、重要になるのが個人の成長と組織の成果をどのように両立させるかという視点です。
個人の目標は多様であって構いません。大切なのは、その挑戦や成長をチームや組織全体の成果につなげていくことです。そのためには「何を自由に選択できるのか」と同時に、「何を組織として全員が守るべきなのか」を明確にすることが重要です。個人の裁量を広げながらも、共通の目的や価値観を共有することが、多様な人材が力を発揮できる組織の基盤となるでしょう。
評価制度も同様です。全員を同じものさしで評価するのではなく、役割や目標の違いを前提とした評価・処遇へ転換するとともに、「なぜその評価なのか」を社員が理解し、納得できる仕組みを整えることが欠かせません。多様な人材が活躍する時代だからこそ、制度の透明性と説明責任が、組織への信頼を支える重要な鍵になります。

「みんな同じ」から「一人ひとり違っていい」へ。その違いを強みに変え、組織全体の成果につなげられる組織こそが、これからの時代に選ばれていくのではないでしょうか。

2026年8月

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