毎月更新中!社長通信 社長・田野美雄が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2018年11月01日

宝の持ち腐れ、仏作って魂入れず
~ITだけでは業務は廻らない~

紅葉

今月は最近の嬉しい出来事のご紹介から。コネクタ専門の製造業である本多通信工業様のSAP導入を当社が昨年末よりご支援していましたが、この度見事成功裏にサービスインを果たし、その祝賀会に参加しました。

SAP社のERPパッケージであるS/4 HANAを当社の業務テンプレートHI-KORTを駆使して短期間、低予算で予定通りの見事なサービスインでした。販売・生産・購買・会計と製造業のフルスコープの業務範囲をほぼアドオン無しで導入でき、私自身も当社のアセットであるHI-KORT on SAPの完成度にあらためて確信を持つことができ、お客様の達成感も感じた嬉しいイベントでした。SAPに代表されるERPパッケージの導入は、業務をシステムに合わせることができずアドオン開発でギャップを埋めようとし、結果として当初予算やスケジュールを大幅に超えてしまう事例も少なくありません。しかし、本多通信工業様では、それが杞憂であったと感嘆するほど見事に予定通りに導入し、また新システムでの業務の安定化もスムーズでした。SAP(=Global標準のプロセス)に業務を合わせるという事は、自社業務だけではなくお客様や協力会社など自社と関係する外部のプロセスさえも変更する必要が発生します。それは時には痛みを伴うものでありますが、それでも業務プロセスを変えるか、もしくはアドオンプログラムで逃げるかの判断がトップやミドルマネジメントのリーダーシップの肝だと思います。佐谷社長はじめキーマネジメントの皆様もSAPを成功導入できたことを誇りに感じておられますし、それはしっかりしたグローバル企業であることの証であると私も思います。(※1)

さて反対に今回のタイトルは過去の私の経験から、基幹システム再構築がうまく導入・運用できない事を風刺したものです。表1ではそれらの事例と、そしてそうならないための勘所(成功事例)を表わしました。概していうと業務ユーザーが業務プロセスの変革オーナーとして基幹システムをマイシステムと捉え、構築・運用する事が成功の勘所です。

(表1)基幹システム再構築の勘所
視点 うまくいかない事例 うまくいった事例
業務要件 ・現行システムの機能踏襲
過去のプロセスの踏襲が主体
・あるべき業務プロセス
現在+近未来の業務プロセス≒ERP標準
要件定義の主要メンバー ・IT部門が主体
業務ユーザーの参画は限定的
・業務ユーザーが主体
業務ユーザーの専任化or積極的参画
パッケージのアドオン開発判定 ・アドオン開発
現行業務と合わないところはアドオンを開発
・アドオンを最小化
業務変革を厭わず、どうすればパッケージ機能で業務が廻せるかを考える
ユーザー教育 ・IT部門が業務ユーザーに教育 ・業務リーダーが自ら指導
システムの操作だけでなく、業務がどうかわるかを業務リーダーが自ら指導
サービスイン後の運用 ・しばらく(3か月以上)混乱
残高移行やマスターのデータ精度が悪く、現場の混乱や月次決算が合わない
・早期に安定稼働
現場での不具合や原価不整合の原因が早期に把握、対処でき早期に安定した業務運用に移行できる

ビジネスIT化の歴史は省人化、機械化といった人手では持て余す作業のIT化から始まりました。その時代には業務プロセスの変更は伴わず一部のプロセスをIT化するだけのものでしたので業務フローさえ確認できれば、IT部門だけで実現できました。ところが現実のビジネスは常に変化するものなのでシステムはサービスインした時点から陳腐化が始まっています。そして今は既に販売・生産・購買・会計などの領域で何らかのシステムが本番稼働しています。それらが老朽化して現在の業務に追随することが非効率になってきたので再構築することになるのですが、今度はあるべき業務やグローバル標準化に向けての業務プロセスの変革が伴うのでIT部門任せでは実現が不可能なのです。ところが昔の慣習でIT部門任せになっている事例も未だに散見されます。(これは事業のトップが昔のイメージを引きずっているからでしょうか。)これではせっかく大きな投資をしてシステムを再構築しても業務がうまく廻らず宝の持ち腐れになってしまいます。業務プロセスとシステムの全容を業務ユーザーが自分のものにしていないという状態はまさに「仏作って魂入れず」なのです。

そうならない事を願って、プロジェクトがスタートする前に私もしくは担当役員がお客様のプロジェクトオーナーにお会いして、上述のような耳障りなお話をする様に努めております。そしてシステム再構築を式年遷宮に例えたうえで、技術伝承・社員育成の意味でも次世代のエース級の参画をお願いしています。業務プロセスを俯瞰して見直す検討過程は、自社の強みやこだわりといった企業の価値観/DNAを若手、中堅、ミドルマネジメント、経営層と世代をまたがって伝承できる絶好の機会です。なぜこの機能やプロセスをシステムに組み込んだのかといった理由や、システムでカバーできずに業務運用でカバーすることになった理由を伝えていくことが重要なのです。これこそが業務プロセスオーナー間の技術伝承と言えるのではないでしょうか。ぜひこのブログをご覧になられたトップマネジメントの皆様には「ITだけでは業務システムは廻らない、業務プロセスオーナーという魂を入れることが必要」というメッセージを内外に発信していただければと思います。

なお、今回の話題に出した再構築の勘所とか技術伝承とかは過去のブログでも関連したことを述べていますのでご興味のある方はご覧いただければ幸いです。(※2)(※3)

※1:本多通信工業様佐谷社長のブログです。SAPが本番稼働したことを誇らしく語っておられます。(ブログへのリンクは佐谷社長より了承を得ています。)
https://htk.amebaownd.com/pages/710481/posts

※2:2017年08月 プロジェクトマネジメントの勘所
https://www.kobelcosys.co.jp/column/president/20170801/

※3:2017年11月 技術伝承とAI
https://www.kobelcosys.co.jp/column/president/20171101/

2018年11月

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