ものづくりコラム 設計、生産管理、原価管理などものづくりに関するトピックを毎月お届けします。

2013年04月01日

「ものづくり+コトづくり」で相乗価値を創る

図1.は日本の製造業の付加価値率の推移を表しています。付加価値率とは売上に含まれる付加価値の割合で、これを見ると、2000年以降、日本のメーカーが作り出す製品の付加価値は低迷状況にあります。最近のアベノミクスで日本の製造業の業績も少し改善しつつあるようですが、これで日本の製造業の長年の課題が急に解決されるとは考えられません。日本の製造業がもっと付加価値の高い製品を生み出すためにはどのような変革が求められているのでしょうか。

m0401.gif
図1.売上高付加価値率の推移(法人企業統計年報を基に作成)

製品が高く売れるのにはワケがあるのですが、必ずしも高性能なもの=高価値とは限りません。B to Cビジネスの例を見てみましょう。日本のケータイ電話は、カメラ、ワンセグ、おサイフケータイなど世界でも類を見ないほど多機能でハイスペックです。ところがスマートフォンが出ると一気にスマートフォンに置き換わっていきました。ものとしては日本のケータイの方が高いレベルだったが、スマートフォンには、「値段は高くても使ってみたい」と思わせる魅力があったのでしょう。また、精度や品質面では恐らくどの国のメーカーにも負けない日本の腕時計を差し置いて、精度で劣る海外ブランド時計に高い対価を払う人も結構います。バッグや自動車でも同様です。

では購買担当者が費用対効果の妥当性を厳しくチェックするB to Bビジネスではどうでしょう。ここでも多機能・高性能=高価値とは限りません。技術レベルは特に良くないのに他社より高く買ってもらえる企業があります。この企業は、お客様の課題解決に直結する利用方法を提案したり、課題解決のためにお客様も気づいていないような製品を開発することで、競合他社より遥かに高い利益率を上げています。同様の例は他にもあります。企業がサーバ機器を購入する際にも、価格性能比だけで判断するとは限りません。処理能力が多少低くても、アーキテクチャーが先進的な製品、サービスのよい製品が選択されることがよくあります。

それでは改めて「製品の価値」とは何でしょう? 価値には大きく2種類があります(図2.)。まず分かりやすいのは、デジカメの画素数や液晶テレビの大きさなど、製品の機能やスペックで表せる「機能的価値」です。お客様は自分が求める機能的価値なら説明できます。一方、お客様が自分のニーズを客観的に言い表せない価値、なぜ高い対価を払うのかを説明できない価値があります。これらは「意味的価値」と呼ばれます。スマートフォンがもたらすワクワク感やブランド時計のデザイン性、お客様の潜在課題の解決や先進的なアーキテクチャーは、お客様が自分の期待を客観的に言い表すことができません。その製品に出会うまで気づかなかった価値すらあります。今は亡きアップルのスティーブ・ジョブズ氏も、iPhone開発時に「利用者は自分がどんなものが欲しいのかを言えない」と言っていたそうです。意味的価値を創り出すには既知のニーズではなく潜在ニーズを見つけ出すことが必要となります。

m0402.gif
図2.機能的価値と意味的価値

コトづくりが製品の価値を大きく左右するようになってきたため、「メーカーはものを売るより、コトを売る方が儲かるのでは」「ものづくりからコトづくりに転換すべきでは」いう見方もあります。アメリカのメーカーには、その考えを実践している企業もあります。しかし、日本のメーカーはものづくりとコトづくりで相乗価値を創出するのが良いと思います、つまり「日本の強みであるものづくりを活かせるコトづくり」や「ユニークなコトづくりを可能にする日本のものづくり」です。これができれば、今後、日本の製造業の付加価値率が高まっていくと考えられます。

次回は、ものづくりとコトづくりで相乗効果を上げることに成功した例をお話します。

2013年4月

ITの可能性が満載のメルマガを、お客様への想いと共にお届けします!

Kobelco Systems Letter を購読