ものづくりコラム 設計、生産管理、原価管理などものづくりに関するトピックを毎月お届けします。

2013年03月01日

ものづくりとコトづくりの一体化

日本の製造業がこれまで得意としてきた、「機能や品質に優れた製品を効率的に作り出すものづくり」が通じなくなってきています。製品が売れなくなり、競争力が落ちてきた中で、今後日本の製造業を強くしていく方策の一つととして、単なる「ものづくり」から「ものづくりとコトづくりの一体化」への転換が求められています。
「コトづくり」は2006年ころから使われだした比較的新しい考え方です。一部の人には使われてはいたものの、ものづくりに比べてこれまであまり知られていない言葉でした。最近は「コトづくりを強化すべき」、「ものづくりとコトづくりを両立すべき」といった意見がメディアに散見され、色々な立場の人により論じられるようになってきました。
コトあるいはコトづくりの解釈については人により若干意見が異なるものの、次の3つの視点からまとめることができます

  • お客様視点からのコトづくり
    機能や品質といったものの価値に、更に価値を付加するのがコトです。 ものだけでお客様の要求や期待を満たせていなくても、コトにより製品の魅力を増しお客様の期待を超えれば、お客様は高い対価を払ってでもその製品を購入しようとします。(図1左)

m0301.gif
図1.お客様視点/商品視点からのコトづくり

  • 商品視点からのコトづくり
    ものとは物体や物品のことで、製品を意味します。製品というものと併せて商品として提供されるソフトウエアやサービス、ソリューション、システム(仕組)がコトとなります。また、アーキテクチャーやデザイン性、ブランドもコトとなります。ものがリアルで目に見えるのに対して、コトはバーチャルで目に見えないものになります。(図1右)
  • 事業プロセス視点からのコトづくり
    事業プロセスの中流に当たる製造・組立がものづくりに相当するのに対し、上流の研究やマーケティング、商品企画と下流のサービスがコトづくりに相当します。製造業のスマイルカーブ現象を当てはめると、コトづくりに相当する上流や下流は中流の製造・組立てに比べ付加価値率/利益率が高い傾向があるといわれています。(図2)

m0302.gif
図2.事業プロセス視点からのコトづくり

ものづくりというときは、特に単純な製造よりも“高度な生産技術や製造技術をともなう製造”を意味することが多いです。あえて「ものづくり」という表現を使うことにより、日本が長年培ってきた技術力を強調しているように思います。この日本の製造業の強みであるものづくりとコトづくりを合わせて「ものコトづくり」と呼ぶこともあります。

コトづくりが活発に論じられるようになった背景は、大きく2つあります。1つ目は、グローバル化や技術革新のスピード化により、製品はすぐにコモディティ化することが多くなってきたことです。このままだと日本企業は価格競争に巻き込まれ、低価格の海外競合メーカーを相手にしなくてはなりません。2つ目の背景は、日本や欧米の先進国市場で多機能や高品質といったハイスペックなものの必要性や神通力がなくなってきたことです。お客様の意識が変化し、成熟しているときに真に魅力のある商品を提供しないとお客様には関心すらもっていただけません。

日本のメーカは世界最高水準の技術をもっていて、ものづくりが得意であるため「いいものを作れば売れる」というメーカ側の論理になりがちでした。一方で日本のメーカは事業プロセス上流のマーケティングや下流のサービスの分野をあまり重視してきませんでした。コスト競争に巻き込まれないで利益を確保するために、システムやソリューションとして製品を提供することも、あまり得意ではなかったようです。
今後日本のメーカは従来のものづくりの強みを活かしつつ、コトづくりを強化し、新たな価値を提供できる「ものづくりとコトづくりの一体化」をしていく必要があります。
次回からは、ものづくりとコトづくりで提供すべき価値のあり方や、コトづくりを実現する方法についてもう少し具体的に話をしていく予定です。少しでもお客様の「価値づくり」にお役に立てれば幸いです。

2013年3月

ITの可能性が満載のメルマガを、お客様への想いと共にお届けします!

Kobelco Systems Letter を購読