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2019年06月01日

デジタル化とものづくり⑨
~次段階のデジタル化に向けて人材強化を~

日本でデジタル化が広く注目されだしてから、早くも3~4年経ちました。今や多くの企業がデジタル化に取り組んでいますが、その取組み状況は下記のように大きく5つの段階に区別できます。

デジタル化取組みの5段階

図表1:デジタル化取組みの5段階

過去数年は、デジタル化に取組む企業の大半は、第1段階(検討中)或いは第2段階(PoC実施)で、次の第3段階(明確に目的を掲げてプロジェクト化し、成果も出ている)まで至っている企業はごく一部に限られていました。しかし、最近は第3段階の企業も増え、更に、次の第4段階(デジタル化をビジネスとして実用化)に達している企業も徐々に出てきています。一方で、第1段階・第2段階で見られた、他社追随のデジタル化取組みや、PoCを繰り返している技術偏重のデジタル化取組みは減っていき、段階を上がることなく中断したか、本気モードに切り替わったと推測されます。

デジタル化に取組む企業は、当然ながら第5段階(デジタル化で差別化し、競争優位の確保や新商品・サービス創出)を目指すものの、まずは自社のデジタル化の取組みを第3段階、第4段階に上げていく必要があります。これら第3・第4段階に達している企業は、デジタル化がもたらす効果や価値を再認識すると同時に、それ以上にデジタル化取組みの難しさや制約を実感することになります。例えば、「デジタル技術は期待していたより能力が低く、コストが割高」、「効果はあるが、現場や取引先に受け入れられない」、「取組みが社内制度や風土と合わない」、「実用化に基幹システム改修の膨大な費用・労力が必要」、「必要な人材が獲得できない」といった現実に直面することになります。このように、今後各社がデジタル化取組みの段階を上げていくには、自社のリアリティを踏まえた、多くの課題を克服していく必要があります。しかも、これらの課題は段階を上がっていくほど、大きく、難しくなっていきます。

各企業にとって数ある課題の中でも特に重要となるのが、「予算化、投資効果」、「社内での変革への抵抗」や「社員の不十分なITリテラシー」と共に、「デジタル化取組みの人材不足」です。最近の調査を見ると、デジタル化取組みの人材不足は下記のような高い割合となっています。

担当(機能) 役割 人材不足の企業割合
大いに不足 ある程度不足
プロデューサー デジタル化リード 51% 21%
データサイエンティスト
AIエンジニア
デジタル技術やデータ解析
エキスパート
51% 17%
ビジネスデザイナー デジタル化企画・推進 50% 25%
アーキテクト システム設計 48% 22%
UXデザイナー ユーザー向けデザイン 38% 25%
エンジニア
プログラマー
デジタルシステム実装・構築 36% 29%

図表2:デジタル化に取組む担当と人材不足
出典:IPA「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割に関する調査」 より編集加工

担当により差がありますが、デジタル化取組みを担う人材は4割~5割の企業が「大いに人材不足」であり、「ある程度の不足」も合せると約7割の企業が人材不足の状況です。特に人材育成には期間を要するため戦略的に前倒しで対策していく必要があります。企業におけるデジタル化組織のあり方はよく論議されますが、人材が確保できないようでは意味がありません。

デジタル化を担える人材を確保するには、実際は社内の現有人材からデジタル化担当に相応しい人を登用し、育成していく企業が多いようです。これまでの企業の実績を見ると、事業とITの両方の経験があり、より幅広い知見をもっている人材がデジタル化に向いているようです。現有人材をデジタル化担当として相応しい人材(デジタル人材)に育成していくには、育成担当者や教育プログラムが必要ですが、恐らくほとんどの企業には体系立てて教育できるプログラムや育成担当者は存在しません。そこで、当面は社外の研修コースや大学等で教育を活用し、実践的にスキル・経験を高めていくことになります。

現有人材の育成だけではスピードも遅く、必ずしも必要な人材を確保できません。そこで社外から人材を獲得することになります。IT企業やコンサル会社から人材を獲得する企業が増えているようです。社外からデジタル化を担うハイレベルの人材を採用する際に問題となるのが、処遇です。引く手あまたの社外デジタル化人材にとっては、日本企業特有の年功序列ベースの給与体系はマッチしません。確かに、デジタル化取組み段階が高い企業程、デジタル化人材に合った人事制度の必要性を認識し、柔軟な処遇を打ち出す企業がでてきています。また、デジタル化を担う人材を獲得・確保していくには報酬がすべてではありません。最先端の技術や革新的な企画に取り組める風土や制度、自らの能力・キャリアを高められるキャリア・パスを整備していく必要があります。優秀な社内人材を確保するためにも、デジタル化取組みの段階アップに応じて、人事制度の見直しが求められます。

デジタル化が事業競争力を左右する時代、企業においてデジタル化を担う人材強化が今後一層重要となっていきます。製造業においても、ものづくりの付加価値と生産性を高め、海外メーカーとの競争に打ち勝っていくために、デジタル化を担う人材強化を急ぎたいものです。

2019年6月

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