ものづくりコラム 設計、生産管理、原価管理などものづくりに関するトピックを毎月お届けします。

2024年07月01日

グローバル&グループ環境のデータ活用に向けた標準化と統制

前回のコラムでは、グローバル&グループ環境(以下G&G環境と呼ぶ)下での基幹システム配備をテーマに取り上げました。今回は今後益々増えていくであろうG&G環境でのデータ活用に向けて、為すべきことを論じます。

m2407_1.jpeg図表1:G&G環境下でのデータ活用
(クリックして拡大できます)


■G&G環境でのデータ活用が増えていく
最近は業種を限らず、DX推進やデータドリブン経営を戦略の主軸としている企業が増えています。各社は、社内に存在するデータをフルに活用して、価値を創出していくことが求められます。製造業では、グローバル、グループ、機能の3軸から横断的にデータ収集・管理・分析を行い、データ活用による収益増大を事業課題として取り組んでいくことが多くなります。
例えば、今後は下記のようなG&G環境下でのデータ活用が増えていくでしょう。
・グローバルを跨る製造・販売・在庫のデータ活用によるサプライチェーン最適化
・複数事業のポートフォリオ分析などグループ経営コックピットの整備
・製品稼動IoTデータと製品エンジニアリング・データを統合した分析から新製品・サービスのニーズ発見

 
■まず取り組むべきは、データの標準化
このような戦略的なデータ活用には、目的に応じた、品質の良いデータの収集・蓄積が大前提となります。ところが、地域や事業が異なると、例え同じ業務で使われているデータであっても、扱われているデータに少なからず差異があることがよくあります。一見同じように見えても、データの名称や粒度、単位、他データとの関係性など、様々な違いがあり得ます。多くの企業の実態は、データが地域毎や事業毎にサイロ化してしまい、データ品質に問題を抱えています。このような状態のままでは、グローバルやグループを横断したデータ分析はできません。そこで組織内に点在する各システムから収集されるデータの標準化が必要となります。データを標準化することで、データ収集・分析時間の大きな割合を占める、データの変換やクレンジングなどの労力や費用は最小化され、データ収集・蓄積・分析の効率・効果が高まります。
データの標準化は、各拠点や子会社のシステムのデータ状態に左右され、各システムの配備、そのシステム内のデータ管理と密接に関係します。社内にある様々なシステムの中で、最も多くのデータが生み出すのが基幹システムです。つまり、グローバルやグループを跨っての標準化の推進は、前回論じた※G&G環境下での基幹システムの配備方法と大きく関係し、データ活用とシステム配備は表裏一体の関係にあることが分かります。
 
■高まるデータ統制の重要性
また、G&G環境でのデータ活用が拡大していくと、セキュリティやコンプライアンス面のリスクも増大していくことから、データ統制の重要性が高まってきます。グローバルの現地法人やグループ内の各社を跨って機密データにアクセスする機会が増えていくと共に、セキュリティ・インシデントの発生リスクはどんどん高まっていきます。このため、データの機密区分やアクセス権限設定を始めとした、グループ・グローバルで一貫したセキュリティの運用・管理を改めて強化していくことが求められます。
さらに、EUのGDPRなど、各国の個人情報保護に関する法令や業界規制へのコンプライアンス対応も重要性が増しています。世界各国のデータ保護規制が次々と強化され、罰則も厳しくなってきています。そのため、B2C、B2Bといった事業モデルや規模に関わらず、プライバシーリスクの高いデータの洗い出し、データの保管や移転、消去におけるG&G環境でのデータ統制が不可欠なものとなってきています。
 
■データの標準化と統制は、まずデータ定義そして方針・ルール設定
このように、G&G環境下での本格的なデータ活用に向けて、データの標準化、統制を着実に進めていく必要があります。その第一歩となるのが、G&G環境を前提としたデータ標準や統制に関する方針・ルールの設定です。まず、これまでのシステムや部門、会社毎のデータを、G&Gの視点で、重複なく、かつ整合の取れたデータ定義を行います。そのデータ定義と各システムのデータを照らし合わせつつ、データの標準化を進めていきます。データの標準化を進める上でのポイントは、前回コラムで述べたG&G環境下での基幹システムの配備の考え方と似ています。
つまり、データの標準化の範囲を、強権に基づき対象を広げるのか、地域の個別性を許容し、標準化対象のデータを限定するか、自社事業のガバナンス方針に応じて決めていきます。また、データの統制を進める上でのポイントも、G&G環境での基幹システム配備と同様、集中化と分散の最適バランスを図ることがポイントとなります。データの機密区分やアクセス権制御、個人情報の取り扱いなどはG&Gレベルで方針を定めた上で、そのルールの具体化やシステムでの運用・管理については各社の規模や実態に合わせて決めていきます。

 
製造業各社がG&G環境でデータの標準化と統制を進め、リスク・コストを抑えつつデータ活用による事業収益を最大化してくことを期待します。

※:グローバル&グループ環境下で基幹システムをどう配備するか
https://www.kobelcosys.co.jp/column/monozukuri/20240601/  

2024年7月

ITの可能性が満載のメルマガを、お客様への想いと共にお届けします!

Kobelco Systems Letter を購読