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2019年07月01日

デジタル化とものづくり⑩
~製造業のデジタル化成功事例は?~

「デジタル化の成功事例としてGAFAはよく出てくるけど、製造業の成功事例は?」と問われて、直ぐ答えが出てきますか? 今回は製造業におけるデジタル化の成功事例について見ていくことにします。

デジタル化の取組みをもっと加速させたい企業、これから本格的に始めようとする企業にとって、是非参考にしたいのがデジタル化の成功事例です。成功事例があれば、関係者が目指すデジタル化のゴールイメージを描き、共有するのに役立ちます。成功事例がデジタル化のベストプラクティスに近いものであれば、自社の取組み内容とベンチマークすることもできます。

デジタル化の事例は、省庁からの白書や雑誌記事、ベンダーのプレス発表などを通して色々紹介されるようになってきました。それらの中には、試行段階のもの、ベンダー宣伝色の強いもの、インパクトに欠けるものなども多く含まれています。そこで「デジタル化の成功事例」を客観的な視点で捉え、次の2つの条件を満たすものにしたいと思います。

成功事例の条件 説明
条件①:
デジタル化として相応しい取組み
デジタル技術を活用し、これまでとは非連続で、新たな価値を生み出している取組み、既存のビジネスを変革し、新たなビジネスを産み出し、業務プロセスや仕事の仕方を大きく変える取組み 
(この定義は、2018年10月の当コラム参照※1
条件②:
客観的に大きな成果を出している取組み
上記のデジタル化の取組による成果が実績として示され、第3者に分かり易く、かつインパクトのある大きさである取組み

図表1:成功事例の条件

世の中では、「デジタル化」、「デジタル改革」や「デジタル・トランスフォーメーション」といった類似の呼称が頻繁に使われています。それらの定義は微妙に異なり、定義なしで使われていることも結構あります。例えば、よく参照される ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~と題したDXレポート※2には、DXの定義は見当たりません。つまり、事例にデジタルとラベルがつけられていても、内容は様々です。そこで、デジタル化の成功事例として上記2つの条件を設定しました。まず「デジタル化」の条件①により、ITによる改善と差異のない事例、従来の延長で新たな価値が見当たらない事例は対象外とします。次に、「成功事例」としての条件②により、その成果がまだ目論見のみで実績がない事例、成果が客観的に表せていない事例、そして成果のインパクトが小さい事例は除外します。

それでは、この2条件を満たすデジタル化成功事例を具体的に見ていきましょう。できるだけ良く知られた、分かり易いデジタル化の成功事例の候補を探していくと、次のようにまとめられます。

m1907L.jpg図表2:デジタル化取組みの5段階
(クリックして拡大できます)

上記図表2の最上段にある分類Aには、冒頭に述べたGAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon.com)、最近上場したUberを挙げています。これらはスマホやPCから得られる個人データを蓄積・分析を通して、サービスを提供するオンライン・プラットフォームと呼ばれる事例です。デジタル技術を駆使したビジネスモデルの革新性、既存の業界を破壊する圧倒的な事業収益力と成長性は、2つの条件から見ても成功事例として異論はないでしょう。これらは製造業の成功事例ではないものの、デジタル化の典型的成功事例として分かり易く、多くの示唆を与えてくれます。

製造業のデジタル化の成功事例候補は、IoTプラットフォーム(分類B、分類C)、そしてスマートファクトリー(分類D)を挙げています。デジタル化は「商品・サービスのデジタル化」と「業務プロセスのデジタル化」に大別されますが、「商品・サービスのデジタル化」は収益拡大、「業務プロセスのデジタル化」はQCD改善につながることが多いです。よって「商品・サービスのデジタル化」であるIoTプラットフォームは、成功事例としてより適していることになります。

分類Bは家電や自動車、建機などで見られるIoTプラットフォームで、B2CまたはB2Bのビジネスモデルがあります。Amazon EchoやGoogle Homeといったスマートスピ―カーは、日本での普及はこれからのようで、成功事例としては少し物足りません。自動車の自動運転とネットワーク接続は、非連続且つ革新的な価値を産み出すことは間違いないでしょう。成功事例の条件①からは申し分ないのですが、技術面や法整備などまだこれからの段階で、成功事例には時期尚早となります。また、将来は分類Aのオンライン・プラットフォームと分類BのIoTプラットフォームが統合された成功事例も出てくる可能性もあります。

分類Cの機械や設備のIoTプラットフォームは製造業のデジタル化成功事例の最有力候補です。特に、GE社のPredixについては当コラム※3でも以前取り上げ、その後も成功事例候補として期待してきました。残念ながら、最近のGE社の業績低迷に伴い、Predixの対象も絞られ、現時点では成功事例の条件②への適合性が怪しくなっています。しかし、GE社のPredixやシーメンス社のMindSphere、そして日本の機械・設備メーカーのIoTプラットフォームは今後とも製造業のデジタル化成功事例の最有力候補と期待できます。

分類Dのスマートファクトリーについては、事例は多いものの、「業務プロセスのデジタル化」として、攻めではなく守りのイメージが強くなります。Industrie4.0が目指すマスカスタマイゼーションを実現し、事業収益増大に大きく寄与する、分かり易い成功事例がそろそろ出てくるはずで、注視していきたいものです。

これまで見てきたように、製造業においてはGAFA並みの確たるデジタル化成功事例はまだ現れていませんが、その有力候補はたくさんあります。これらの有力候補が次々とデジタル化の成功事例となり、これからデジタル化に取組んでいく企業の参考となっていくことを期待します。

※1:デジタル化とものづくり① ~今さらですが、デジタル化って何?~
https://www.kobelcosys.co.jp/column/monozukuri/20181001/

※2:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~
http://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html

※3:AIとものづくり④ 社会インフラの安全を支えるAI
https://www.kobelcosys.co.jp/column/monozukuri/20170601/

2019年7月

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