2009年04月01日
原価管理よもやま話①
製造業における『予算管理システム構築』のポイント
製造業、輸送(物流)業、サービス業etcに限らず、予算編成作業を実施し会計期間内での予想収益状況を把握しているのは、仕組みの大小にかかわらずほとんどの企業が実施しています。
大半の企業では、予算編成作業期間が3ヶ月〜4ヶ月の長期に亘り、多くの人材を投入していますが、その精度は最近の不況下では会計期間の始まる時点で、既に大きな乖離(かいり)を生じているのも実態です。
旧態依然の仕組みに頼っておれば、経営陣に対する情報提供が失速し、企業活動に誤った方向性を示す結果となり、仕組みそのものも信頼を失う事になります。
今こそ改善すべきは改善し、一刻も早い新たな予算管理システムを構築していく必要があります。
1. |
予算/実績の管理サイクル |
|
図-1 予算/実績の管理サイクル
拡大図 (PDF:271KB)
|
図-1は、業種・業態、企業規模の大小に関係なく、一般的な企業における予算管理/実績管理の管理サイクルを図示したものです。これらのサイクルが回っていても迅速性に欠けるとか、予実分析でその他差額の発生額が大きく、不明項が多数発生しているようあれば、意味のない管理サイクルと言わざるを得ません。
迅速性の欠如については、バッチシステムであったり、ハンド介入が多くあったりして、要求されるタイミングで速やかにシステムを廻せない実情も抱えているかもしれません。
また、不明項についてはシステム構築段階での、機能要件の前提に寄るところが大きく、システム改善の足かせになっていると言っても過言ではありません。
|
2. |
予算編成システムにおける課題と解決策 |
|
予算編成スケジュールは、図-2には一般的な企業の現状を、図-3には変革後を示しますが、変革の内容については、第2回目で詳細に説明いたします。
表-1をご覧下さい。予算編成システムを構築するにあたって、必要となる課題・問題点〜解決策を、更には前提条件について記述しています。
表-1 予算編成における課題・問題点と解決策
拡大図 (PDF:152KB)
|
3. |
予算編成システムにおける前提条件 |
|
システム構築を実現するために、必要となる前提条件を記述しますが、これらは経理部門、操業部門が将来に渡って不変となるべき基本的な考え方を示すべきであり、システム改善の場合には、この前提条件に立ち戻り改善内容を、お互いに吟味して対応しなければなりません。 |
■ |
予実分析は、予算管理メッシュでの比較ができること。 |
1 |
原価管理>生産管理であること。
標準原価計算システムの方が、生産管理システムより大きなメッシュですが、生産管理システムで管理できない情報を組み込むと、将来の業務スキル・システムスキルの継承が出来なくなる可能性を持っています。 |
2
|
予算編成システム構築時に、生産管理システムの管理限界を知っておく必要がある。
ex
・標準原価算出用の品質工程設計が、予算編成時点に行なわれるため、生産管理システムが追随できない。
(=仮の品質工程設計マスターを保持しなければならない)
・製品1品単位に把握できる情報と、把握できない情報を明確にしておく。
|
■ |
生産部門に追随した予算システム(原価管理=生産管理)にすると、保守性が悪化する。 |
1 |
生産(操業)の改善にあわせて、原価管理システムを改善しなければならない。 |
2 |
財務管理≧原価管理>生産管理であること。 |
3 |
原価管理の最小レベルを決めておく。
ex
・1個、数万円もする製品で、10円以下の費目まで管理(詳細化)するのかは、要検討である。
・原価差額の発生総額にもよるが、その他差額をどこまで分析するかの基準を決めておく。
(例えば、原価差額が1000万円発生した場合、その他差額が50万円以下であれば見ないなど。) |
■ |
外部環境・内部環境などの変化が取り込めること。 |
1 |
コストダウン努力が、把握できなければならない。
ex
・設備投資が、経営に与える影響は? |
2 |
為替レートの変動の影響が、見えなければならない。
ex
・原材料、製造原価、収益に与える影響は?
|
|
■
|
あまりに高度なシステム構築は避けるべきである。
(身の丈にあったシステムを構築すべきである) |
1 |
あるべき姿を描きつつ、一歩ジャンプした手の届くレベルのシステム構築をする。(あるべき姿を追いかけ過ぎないように → 出来上がっても、運用に耐え切れない) |
2 |
パイロットシステムを構築・評価し、全社展開へ。 |
3 |
したい・やりたいのと、できるのでは大きな違いが・・・。 |
|
■
|
可視化による思考へ
経理情報は数値が多いため、新システムでは極力ビジュアル化を進める。 |
1 |
見て判る情報提供を行なう。 数値は読まないと判らないが、グラフや絵などは見て判るので活用すべきである。
|
4. |
予算編成スケジュール
図-3は、変革後の予算編成スケジュールを図示していますが、スケジュール短縮に関してはシステムの改善より、業務(プロセス)見直し改善の方が、効果があると言えます。
今回は、システム構築のポイントに焦点を当てているため、業務見直しの改善については触れていません。業務改善は、各企業の努力に期待いたします。
|
図-2 予算編成スケジュール(変革前)
拡大図 (PDF:159KB)
業務改善の見直しポイントは
1. 重複作業の削減
2 類似作業の統一化
3. 俗人化の排除
4. システム化範囲の拡大
5. システム情報の提供によるハンド作業の減少
|
図-3 予算編成スケジュール(改革後)
拡大図 (PDF:223KB)
|
図-3を見る限りシステム的には、何の変化が無いように見えますが、効率的なシステムへと変革しており、その構築ポイントについては、次回の原価管理よもやま話にご期待下さい。
|
2009年4月