ものづくりコラム 設計、生産管理、原価管理などものづくりに関するトピックを毎月お届けします。

2009年01月01日

設計部門の役割の変化(その2)

4. 多品種少量生産を考慮した「製品設計」とは
4.1 多品種少量生産を実現する半見込み半受注生産管理方式

セル生産、屋台生産といった言葉を読者の方も聞かれたことがあるでしょう。セル生産(屋台生産)とは、一人ないし数人の作業者がひとつの製品作り上げる自己完結性の高い作業の方法です。従来のコンベアを主体とした作業方法に比べて生産量の変動や仕掛り量の削減に効果があるといわれています。このような具体的な作業方法が話題に上るということは、従来の作業方法では多品種少量生産に十分に対応できず、より効率的な新たな方法を模索していることにほかなりません。
多品種少量生産を実現する効率的な作業方法として、セル生産が注目されているわけですが、作業方法を変えてもそれを支える生産管理方式が旧態依然としていては、効果は期待できません。では効果を発揮する生産管理方式とはどのようなものでしょうか?
それは半見込み半受注生産管理方式です。下図にありますように製品は、受注後加工・組立を行い出荷されるのですが、受注生産との違いは、中間部品はできるだけ共用化し、見込みで仕込んでおき、全体のリードタイムを短縮しようという生産管理方式です。
見込み生産管理方式を採用されていた企業が、多品種少量生産をめざし半見込み半受注生産管理方式へ移行されていることは言うに及ばず、受注生産方式を採用されていた企業においても、コスト削減・製造リードタイムの短縮等をめざし半見込み半受注生産管理方式へ移行され始めています。先行的な企業では、コスト削減・製造リードタイムの短縮で大きな成果を挙げられています。
生産管理方式の種類

4.2 半見込み半受注生産管理方式を実現するには

半見込み半受注生産管理方式は、共通的な中間部品を計画生産で仕込み、個々の受注仕様に依存するものは受注後製作し、それらを組立て出荷するという方式です。一部仕込み生産を行なうことにより、製造リードタイムの短縮を図るとともに、共通的な中間部品をまとめて仕込むことによるコスト低減も狙っています。
もう読者の方はお解かりかと思いますが、この生産管理方式を生かすには、如何に共通部品の比率を増やすかにかかってきます。これができるのは、設計部門だけです。
設計部門では、派生製品間の製品構成を十分に検討し、それぞれのユニットの一部部品の共用から始め、一部構成の共用・対象ユニット拡張による標準部品化というように標準化をしていくこととなります。
標準化
また、複数のユニットを機能単位等にまとめ一つのモジュールにまとめるといったモジュール化を推進することも必要です。
モジュール化
これらの作業は、既存製品で行うことは労力がかかるばかりではなく、設計変更をともなうことともなるため、新製品や製品改定時に行われることが一般的です。地道な作業となりますが、全社最適を考えた場合設計部門としては避けて通れない作業となります。

個別設計から、標準化、モジュール化を推し進め、シリーズ設計を目指していくことが、これからの競争力を強化していく事となります。
個別設計からシリーズ設計へ
5. コスト削減を徹底した「製品設計」を行うには

コストダウン活動は、主として製造部門・購買部門の仕事と思っている設計者はいませんか?もし、このような設計者がいらっしゃったら、製品原価の80%は、設計・試作段階で決まるというデータがあることを知っていただきたいと思います。確かに、コストの発生は製造段階が中心となりますが、コストそのものは、部品のスペックを決めることとなる設計・試作段階で確定されます。その割合は、80%にも及ぶということです。製造段階でのコストダウンに限界があることがお分かりいただけるでしょう。
設計部門では、設計者の意識を変えて「製品設計」を行ない、将来調達や製作段階で発生するコストを極力少なくするようにしていくことが必要です。しかしながら、設計者がコスト削減に取り組もうとしても現状阻害要因があるのも事実です。

5.1 設計者によるコスト削減活動状況

設計者によるコスト削減活動を分析すると、下記のような阻害要因が代表的なものとして上げられます。
設計者のコスト削減活動状況
1.広く部品選定を行いたいが、サプライヤー等必要な情報が入手できない
2.単品としての実績原価の把握がタイムリーにできない
3.原価情報の積算に手間がかかる
4.新規部品採用に当たっては、見積りリードタイム、品質検証、コスト検証等時間がかかる
5.原価削減ため、さまざまな切り口で検討したいが、必要な情報がタイムリーに入手できない
これらの阻害要因原因の大半は、設計部門と製造部門、設計部門と調達部門等他部門との情報交換不足に起因しているといえます。
これらを解決するには、他部門と連携したコスト管理のワークフローを全社的に確立することが必要です。

5.2 コスト管理ワークフローとは

コスト管理のワークフローコスト削減活動に結びつけるコスト管理のワークフローとしては、
1.目標原価の設定
2.目標原価を達成する設計
3.実績原価の収集
4.原価差異の分析と推奨部品情報の更新
といったPDCAのサイクルをまわすのがポイントとなります。
多くの企業では、コスト管理をコスト把握・集計と誤解して、実績原価を把握することのみに気をとられて、具体的なコスト削減に結びついていないのが、現状です。
本来の目的を達成するには、右図のような関連部門の連携したコスト管理ワークフローを構築し、設計者が、部品選定段階で闇雲に部品選定するのではなく、前項で述べた標準化・モジュール化の成果である標準品、共通品である推奨部品の中から選定するように変革していくべきです。そして、常に原価差異の分析と推奨部品の見直しを行い、継続的なコスト削減活動を進めていくことが重要です。これには、業務の改革とそれを支えるシステム支援が不可欠となります。

一部の企業では、こういった取り組みを始められ、企業体質の強化につなげられています。

次回は、2007年問題の影響についてお話します。

2009年1月

ITの可能性が満載のメルマガを、お客様への想いと共にお届けします!

Kobelco Systems Letter を購読