社長通信 社長・瀬川文宏が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2022年04月01日

平野歩夢選手の挑戦とイノベーション
~「複業」のススメ~

ネモフィラ

数多くのドラマを残し北京五輪が閉幕しました。なかでも、スノーボード男子ハーフパイプの平野歩夢選手の金メダルには、多くの皆さんが感動したのではないでしょうか。決勝2回目に最高難度の技を成功させながら得点が伸びず、3回目に同じ技を完ぺきに決めて逆転。技術の高さはもちろん、その精神力の強さには感服するばかりです。
ご存じのように、平野選手は昨夏の東京五輪にもスケートボードで出場。日本選手史上5人目の夏冬五輪出場を果たしました。どちらも似たような競技だと思いがちですが、足を固定するスノーボードと自由に動かせるスケートボードでは根本的に違います。それでもあえて厳しい道を選ぶことで自分の限界に挑戦し、自身の成長につなげていったのです。
この挑戦について平野選手は「一日、一日、無駄にせずやってきたことが、ようやく形になった。スノーボードとかけ離れた経験が、精神的な部分にかなり影響して、そこでの経験がすごい大きな自信になった。過去の自分を強くしてくれた」とコメントしています。

また男子モーグルに出場した原大智選手は、4年前の平昌五輪で銅メダルを獲得した後、プロ競輪選手への挑戦を表明しました。競輪選手養成所で1年間の厳しい訓練を積み、2020年12月にはプロ初勝利もあげました。そして北京五輪を前にモーグルを再開、日本代表に選ばれました。
競輪挑戦の効果を「瞬発力と有酸素能力がすごく向上したので、ジャンプの踏み切りとかターンの切り替えがすごく良くなった」と話しています。競輪で鍛えた足の筋力や瞬発力を向上させたことによって、絶対的な武器であったターンに一層磨きがかかったそうです。

近年、新規事業創出を目指して、企業は社外の新しい知識、能力を積極的に取り入れる「オープンイノベーション」を進めようとしています。またイノベーションは「多様性から生まれる」とも言われています。つまり、多様なスキル、知識、経験など様々なバックグラウンドを持った人々が集まって交流し、意見やアイデアを出し合うことでイノベーションが生まれるというわけです。
同様に、個人のレベルにおいても複数の分野に挑戦し、異なる視点を持つことや未知の体験をすることで、今まで気づかなかった自分の魅力やポテンシャルを最大限に発揮できるようになったり、全く新しい発想や取り組みができるようになったりするそうです。まさに平野歩夢選手や原大智選手は、その典型的な例だと思います。
また昨今、社員の副業を容認する企業が増えています。本業以外の活動に取り組むことで本業では得られない経験や視点を身につけ、それらを新しく結合することによって、その人の新たな価値を生み出すことができるとしたら、本業と同じ分野での「副業」ではなく、全く違う分野での「複業」の方が、イノベーション人材の育成につながる可能性が高いと考えられます。

米国で「史上最高の二刀流プレーヤー」と言われたボー・ジャクソン選手は87年から大リーグ(MLB)でプレー、その後アメフトのプロリーグであるNFLのチームとも契約、マルチアスリートとして活躍しました。89年のMLBの球宴ではMVPにも輝き、90年にはNFLのプロボウルにも選出。MLBとNFLの両方のオールスターゲームに出場した唯一の選手となりました。
残念ながら、彼は試合中のケガにより91年にNFLを解雇されてしまいます。それでも人工関節というハンデを背負いながら懸命なリハビリに励み、94年までMLBでプレーを続けました。

一人の人間が複数の分野に挑戦し何か新しいことを成し遂げようとする時には、必ずリスクがつきものです。しかしながら、そのリスクは誰にも予測できません。なぜなら誰もやったことがないのだから。そう考えると、やる前からあれこれ考えず、自分が納得するまでやり続けてみることの方が大切に思えてきます。
会社員の副業においても、就業・健康管理の難しさ、競合・利益相反への対応など、実際にはなかなか踏み切れない理由やリスクが、労使双方に存在します。
それでも企業は、社員が社内では得られない経験や視点を身につけ、自己実現に向け研鑽に努めることを望んでいます。一方で社員も、自社のビジョンや価値観に共感し、その仲間と一緒に社会やお客様に貢献することを望んでいると思います。
そのお互いの思いを確認しながら、まずは「複業」に関して前向きに検討を始めることが、企業にとっても社員にとっても価値ある一歩になるのではと考えています。

最後にもう一つ、平野選手はこうも言っています。
「自分の中で何事も限界はあると思っている。でもその限界を見続けることによって、その先が見えてくることがある。厳しい挑戦というのは、最初は“重り”になることもあるが、その重さが感じなくなるところまでいくと、自分の成長とともに“ワクワク感”みたいなものが生まれてくる・・・」 さすがの一言です。

2022年4月

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