社長通信 社長・瀬川文宏が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2019年08月01日

自発的・自律的な生産性向上が企業競争力の源泉
~働き方改悪にならないために~

Milky way

参院選は事前予想どおり与党および改憲勢力がまずまずの議席を確保しました。安倍政権はひとまず安泰となり、これで10月からの消費税10%は確実で、改憲への検討も前に進むのでしょうね。改憲とその信を問う衆院解散議論はさておき、消費税増税に伴う景気への悪影響は少なからずあるでしょう。日本国民が令和時代を安心して暮らしてゆくために政府や企業はその景気下振れを受けとめ、逆に上振れできるだけの景気や生産性向上を目指さねばなりませんが、さて実態はどうなっていくのでしょうか。

生産性向上に向けての政府の施策として働き方改革関連法がこの4月から施行されました。時間外労働の上限規制、年次有給休暇の取得義務化、同一労働同一賃金といったもので、法律なので遵守しなくてはなりませんが、これを遵守することが企業競争力を強めるかというと疑問で逆に足を引っ張る可能性すらあるのではないかと思います。この法律は外から結果だけでチェックできるものなので、監督庁からすれば監査しやすいのですが、どうやって労働時間を短縮するかは企業任せとなっています。ということは中身の生産性を上げないと、一人あたりの労働時間を短縮することは結果として多くの従業員を雇用せざるを得なくなり、総労務費がアップし利益が圧迫されることになりかねません。また生産性の低い社員を守るという側面もあるので全体のモチベーションが低下するリスクがあり、大前研一氏のブログ(※1)ではこの法律の為に新たな間接業務が増えることも併せて「働き方改悪」と切って捨てています。政府としてはこういった規制をすれば、企業はどうすれば対応できるかを自助努力で内容を考えるので、自ずと生産性向上が図れると考えているのでしょうが、考えてみれば無責任な話ですね。とはいえ法律となったので働き方改革と生産性向上は表裏一体と捉え、企業にとってその取組は生き残りをかけたものになるといっても過言ではないでしょう。

では企業の生産性向上の中身はどうやって立案し実行するのでしょうか。それにはトップダウンとボトムアップとがあります。前者は戦略・戦術といったトップが市場動向、競合状況、経営環境などの情報をもとに立案・実行をリードするもので後者は現場の社員が自発的に立案し、自律的に改善していくものです。前者は企業の競争力に直結するもので私が語る必要はないと思います。後者については6月の本コラム(※2)でも述べているのですが、トヨタ自動車や村田製作所などの日本の強いと言われる製造業は押しなべて自律的改善による生産性向上が図られています。これら強い企業の共通項は自発的に業務改善のアイデアを立案できる企業風土があることです。受け身、言われた事しかやらない、提案がない、評論家、集団無責任といった社風の企業と比べたらその成果の差は歴然となります。

自発的な業務改善の風土は一朝一夕には培われず、小集団での業務改善活動やCS(Customer Satisfaction)活動などによる先輩社員と若手社員のチームの場を通じて長年の中で醸成されてくるものです。課題テーマ設定と仮説検証そしてPDCAを継続して廻すことで成果を実感し、モチベーションが上がり次のテーマ設定も自発的に行うようになります。お客様(社内の場合は後工程)の評価の証となるCSアンケートや感謝状をいただいたことが次のCS向上への自発的なアクションにつながります。企業は一定以上の規模になると課題が経営トップの眼に届きにくくなりますが、社員が自発的に会社をよくしようと考える社風なら、自律的に会社は健全な方向に向かうでしょう。令和になって受身から自発、低欲から貪欲、そして目的意識(何のためにやるの?)といったキーワードをよく見ます。自発的・自律的な生産性向上で日本企業が競争力を高めて欲しいと願っています。

コベルコシステムは2002年からCS委員会を設置しCSを通じての経営品質向上を目指しています。さらに業務改善活動も同時にスタートしましたが今年も87チームが登録されました。これに全社員の半数がメンバー登録されており、その中から秋の業務改善活動発表会に25チームが応募し現在は決勝進出チームを選考中です。これらにより自発的・自律的な企業風土の醸成が当社でも出来ていると自負しておりますが、お客様からの評価からはまだまだ厳しいものもあり道半ばです。やるべきことは多くあり、だからこそ自律的改善が企業の持続的成長のエンジンとなるのでしょう。

PS:7月23日に内閣府が公表した2019年度の経済財政白書は企業の生産性向上に向けて日本型雇用の見直しを訴えました。性別や国籍にかかわらず多様な人材を活用する企業は収益率が高い、というのが論拠です。これもどうやって生産性向上するかではなく、収益率の高い企業が多様化を進めているという分析を示しただけですね。実態は強い企業が自発的に人材不足の解を多様性に求め、活用における課題を乗り越えて結果を出しているだけだと思います。令和時代の成長は民間企業にかかっていると再認識しました。

※1:https://blogos.com/article/368532/
※2:日本企業は令和をサバイバルする!その理由と前提条件
~競争戦略より大切な経営管理、そして日本の特長であるミドル層の自律管理の優秀さ~
https://www.kobelcosys.co.jp/column/president/20190601/

2019年8月

ITの可能性が満載のメルマガを、お客様への想いと共にお届けします!

Kobelco Systems Letter を購読