社長通信 社長・瀬川文宏が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2019年06月01日

日本企業は令和をサバイバルする!その理由と前提条件
~競争戦略より大切な経営管理、そして日本の特長であるミドル層の自律管理の優秀さ~

虹

平成は失われた20年とか30年とか日本経済の低迷が嘆かれました。平成元年での世界時価総額ランキング上位50社のうち日本企業は32社だったのに対し、平成30年ではそれがトヨタ自動車1社(※1)となっており、これを敗北の30年と言わざるを得ない、と経済同友会の小林喜光代表幹事も発言されています。詳細をLink(※2)しましたが、ここでは日本人は欲がない、ハングリー精神が低いのが低迷の原因であり、それをどう喚起するかが次代の課題と言われています。興味深いものなのでお時間ある方は一読をお勧めします。

では令和に入って日本企業はこのままグローバル競争に負け続け、米・中に翻弄され衰退していくのでしょうか?私はそうはならない、サバイバルし逆に巻き返せるのではないかと考えています。その理由を述べる前に日本人・日本企業の弱点と強みについて下記表に私見を記しましたがこれは異論のないところと思います。

表:日本人・日本企業の弱点と強み
日本人、日本企業の苦手・弱点 日本人、日本企業の得意・強み
  • プラットフォームや国際ルールの主導権
  • 過去にない新技術・製品の創出
  • ビジネスモデル・イノベーション
  • アーキテクチャ設計、ロジック設計
  • 持続的改善(機能、コスト、品質etc)
  • プロセス・イノベーション
  • 品質への感性が豊か
  • コンテンツ作成

平成はGAFAにプラットフォームの主導権を握られ、シリコンバレーのスタートアップ企業によってビジネスモデル・イノベーションが創出された時代でした。ここまでは日本はデジタル革命に周回遅れ、黒船来航の夜明け前でした。しかし令和はプラットフォームもビジネスモデルも勢力地図が判明し(※3)、これからは「持続的改善やプロセス・イノベーションなど日本の得意とする領域が競争力の源泉となってくる」、これが日本企業サバイバル説の論拠です。

ただしすべての日本企業が生き残れる訳ではなく、前提条件として環境変化に敏感に反応し、自律的に変化対応できる経営管理能力を有していることが必要となります。これは日本の製造業が得意とする能力であり、特に中間管理層が自律的管理能力を有している事が肝要です。2017年HBRマッキンゼー賞受賞論文 (2018年10月号DHBR掲載)に関連する内容がありますので以下に抜粋します。

“経営管理能力は模倣が容易で競争優位には貢献しない。だから企業の足腰を支える効率化はミドルマネジャー以下に任せ、経営層はもっと高尚な戦略策定に専念すべきだとする考え方がある。しかし論文で筆者らが世界12,000社以上を対象に行った調査では、マネジメント・プラクティスに秀でた企業は高業績を上げている事が判明した。しかも組織内でそれを浸透・徹底させるには時間がかかり、容易に模倣しにくいことを明らかにした。”

この「組織内でそれを浸透・徹底させるには時間がかかり、容易に模倣しにくい」は企業風土に関連する競争力であり、トヨタ生産方式(TPS)や原価低減は、トヨタ自身が進化し続けているのでマネができるものではないのです。トヨタに限らず日本の強い会社はおしなべて、この様に差別化された企業風土を有しています。その1社である村田製作所の藤田副会長の講演を拝聴したのですが、「当たり前の事を当たり前にやってきた。それができない会社が案外多いので当社は競争力を保持し続けてこられた」という内容に感銘を受けました。納期の短縮や回答精度向上、在庫の現・論一致、顧客要求の開発へのフィードバック、原価低減等ごく当たり前の事ですが、それを愚直に最新の技術を駆使して改善し続けておられます。

令和時代はデジタルを活用する時代、その環境変化を感じ取り、最新のテクノロジーを活用して自律的改善を行うことができる日本企業が巻き返しを図ることを願ってやみません。当社はそのような企業の改善をご支援するITソリューションを提供する事で共に成長したいと思います。

余談ですが、じゃあ中国はどうなるの?という点についての私見です。
マーケットは間違いなく大きいが、製造業の成長としては疑問。中国人は国家や企業への忠誠より個人の幸せを優先し、アメリカ人や日本人になりたがる人も多いように感じます。優秀層の人材海外流出が激しく企業風土として自律改善が難しいので、「中国製造2025」の実現も疑わしいのではないか。米中貿易戦争は米の圧勝に終わるのではないでしょうか。

※1:https://diamond.jp/articles/-/177641?page=2
※2:https://www.doyukai.or.jp/chairmansmsg/pressconf/2018/190312_1931.html
※3:プラットフォームのなかで、MaaS(Mobile as a Service)・自動運転については未だにどこが主導権を握るか見通せません。Google対トヨタなのか、日・独・米・中なのかetc. 日本企業が不得手なこの領域にトヨタがどこまで主導権を握れるか、に注目しています。

2019年6月

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