社長通信 社長・瀬川文宏が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2019年07月01日

令和の顔 渋沢栄一とSDGs
~論語と算盤、そして論語とDX~

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令和テーマを続けての第3弾です。2024年度前半に1万円、5千円、千円の各紙幣(日本銀行券)を一新し、1万円札の図柄は渋沢栄一、5千円札は津田梅子、千円札は北里柴三郎になるそうです。元号が変わったので紙幣も変えるのではなく、紙幣偽造防止を目的として20年を目途に更新しているとの事です。本当にそうなのか調べてみると、確かに現行紙幣は2004年にE号1万円が1984年にD号1万円が共に福沢諭吉の肖像で発行されています。(ちなみに5千円、千円は2004年が樋口一葉、野口英世、1984年は新渡戸稲造、夏目漱石)とはいえ、新元号と新紙幣更新がたまたま重なったのではなく一連の祝賀ムードをさらに盛り上げるために5年先の更新なのにわざわざこのタイミングで発表したのだとの憶測もあります。それはさておき令和時代の顔として渋沢栄一が選ばれた事を受け『論語と算盤』(※1)を読んでみましたが、なかなか読みごたえのあるものでした。

冒頭に正しい経済発展には高い倫理意識と利益追求の両立が必要とあり、高い倫理意識の礎として論語、利益追求の象徴としての算盤の両立の必要性を述べておられます。この本は明治後半から大正にかけての渋沢の講演録なのですが、昨今のコンプライアンス関連の事件や経営トップの公私混同スキャンダルを見るにつけ、あの時代にビジネスの道徳観の重要性を説いているのは慧眼と思います。そして令和はSDGsの時代とも言われていますが、『富は独占せず国全体が豊かになるよう使うべきである』と渋沢は訴えています。これはまさに今で言うSDGsのコンセプトであり令和の顔としては誠に的を射たものだと思います。経済同友会をはじめ財界もSDGsを経営に取り入れており、最近はSDGsバッジを胸につけている方をよく見かけるようになりました。デジタル社会となる令和は経済発展と社会的課題の解決を両立する、新たな未来社会Society5.0(※2)としてSDGsに向かっていくでしょう。

そんな渋沢の価値観、判断基準の拠り所は論語なのですが、これは2千年以上前の孔子の教えですから、技術や環境は変わっても人、社会というものの価値観は時代を超えて何も変わるものではなく、逆に今こそ道徳や倫理観の必要性が増しているのかもしれません。(渋沢が大正初期に今だからこそ必要と言っているのも面白い)その観点で言うと、経済発展と同様にデジタル社会の発展に伴いその象徴でもあるAIにも高い倫理観、道徳観が求められています。つまりは『論語とAI』を肝に銘じ、AIという技術を人間が主体性を持って適切にコントロールする事で、不安を払しょくし人間にとって幸福な社会が実現できる事になります。このメッセージは実はOKIテクニカルレビューの巻頭言(※3)の抜粋なのですが、これは腑に落ちますね。

さらに言うとAIのみならずデジタル革命(DX)は何のためにあるのかをあらためて問い、それがSDGsにつながると考えると『論語とDX』を提唱したくなってきます。コベルコシステムはITサービス会社なので直接的なSDGsへの貢献は限られていますが、お客様のビジネスやシステムを通じて社会に貢献するよう社員には期待しています。それに加えて『論語とDX』を意識し、そのサービスは本当にお客様の為になるのか、お客様を通じて社会へ貢献しているのか、そのシステム(AIやRPAなど)は社会や企業に迷惑・混乱を誘うリスクを持っていないか、外部の悪意からの防御はできているか、等の論語の観点でチェックしてもらいたい。場合によってはお客様にその観点で仕様変更を提案できるくらいでありたい。それが出来ればデジタル社会の発展に寄与し、お客様に信頼される真のパートナーになれるものと確信します。

PS:余談ですが、SDGsとは2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。一方でIBMは「地球を、より賢く、よりスマートに」をテーマに「Smarter Planet」というビジョンを2009年に提唱しています。なんだかんだ言ってもIBMの目線は高く、洞察力は凄いですね。

※1:現代語訳 論語と算盤 渋沢栄一 守屋淳=訳 ちくま新書
※2:Society5.0は日本が提唱する未来社会のコンセプト。経済発展と社会的課題の解決を両立する、新たな未来社会(Society)をSociety 5.0(ソサエティー5.0)として提唱している。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)といった人類がこれまで歩んできた社会に次ぐ第5の新たな社会を、デジタル革新、イノベーションを最大限活用して実現するという意味で「Society 5.0」と名付けられた。
※3:OKIテクニカルレビュー233 Vol86 №.1 2019年5月20日発行
発行人である沖電気横田理事による巻頭言

2019年7月

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