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2014年09月01日

4P+4Cのマーケティング・ミックス

今回はマーケティング・プロセス(図1参照)の3つ目のステップ「マーケティング・ミックス設計」についてお話します。前のステップではターゲティングとポジショニングという「戦う場所」を定義しましたが、この「マーケティング・ミックス設計」のステップでは、マーケティング要素をバランスよく組み合わせた「戦い方」を定義し、競合商品との差別化を図っていきます。

図1マーケティングプロセス

マーケティング・ミックスを設計するためのフレームワークとして、最もよく知られているのは「4P(Product、Price、Place、Promotion)」でしょう。「4P」は1960年代にマッカーシー教授により提案されたものですが、50年経った今なお企業のマーケティング実践で活用され、大学の教科書に取り入れられています。マーケティング・ミックス設計において役立つもう一つのフレームワークとして「4C」があります。「4C」は、Customer Value(お客様にとっての価値)、Cost(お客様にとってのコスト)、Convenience(利便性)、Communication(コミュニケーション)からなります。「4P」が企業の売り手の視点なのに対して、「4C」はターゲットセグメントの買い手に重点を置いていています。

これを製造業に当てはめると、「4P」はものづくり視点、「4C」はコトづくり視点と言い換えることができます。日本の製造業が、従来のものづくりの強みを活かしつつ、コトづくりを強化し、新たな価値を提供する「ものづくりとコトづくりの一体化」に向かっていくためには、マーケティング・ミックスも「4P」と「4C」双方の視点から設計していく必要があります(図2参照)。

図2 4P+4Cのフレームワーク


1.Product+Customer Value(お客様にとっての価値)
ターゲット市場において製品の価値を高めるためには、機能や性能だけではなく、サービスやソリューションまで含めて検討しなければなりません。また、昨今は製品のデザインやブランド力も重要になってきていますが、日本のメーカーはブランドマネジメントが弱く、統一感が崩れがちです。製品に信頼や好意的イメージを抱き、他社製品より高い対価を払ってでもその商品を購入してもらえるブランド強化が必要です。

2.Price+Cost(お客様にとってのコスト)
価格体系や取引条件を設定します。企業にとって価格は収益に直結し、市場での競合他社に対する競争力に大きく影響します。一方、お客様にとって製品の購入価格は、価値を得るためのコストとして妥当だと判断できることが前提となります。企業は、単純に製品原価に経費や利益を上乗せするのではなく、お客様が納得する価格設定を行い、お客様のキャッシュフローを配慮した最適支払いオプションなどの検討が求められます。

3.Place+Convenience(お客様にとっての利便性)
売り手視点からは、販売力やカバレッジを考慮した販売ルートや流通を設計します。買い手視点では、お客様が価値を感じるチャネル設計を行います。ターゲットとなるお客様の行動を分析し、例えば、24時間オープンのコンビニ、専門的な話ができる直販店、選択肢の広い百貨店など、お客様の購買TPOに則した販路設計を行います。短納期や品揃え等が求められるのであれば、サプライチェーンの再構築も必要となります。

4.Promotion+Communication
企業が見込み客にメッセージを発信する方法は、広告やWEB、営業体制、セミナー、イベントなど多岐に渡ります。これらをうまく組み合わせてタイミングよくメッセージを発信することで、マーケティングの実効性を高めるようにします。また、お客様から見てOne Voice、One Lookになるようにコミュニケーションすることも必要となります。多岐に渡る方法を使い分け、首尾一貫した、統一感のあるメッセージを発信するための統合管理をすること。そして、企業側のメッセージをお客様に届け、お客様の声も正確に企業に届くようにする双方向コミュニケーションの仕組みを作ることも有効です。

このように4P+4Cのフレームワークを活用することにより、マーケティング・ミックスを体系的に設計できるだけでなく、日本のメーカーが目指す「ものづくりとコトづくりの一体化」につなげていくことができます。

次回はマーケティングの動向を見てみましょう。

 
2014年9月

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