ものづくりコラム 設計、生産管理、原価管理などものづくりに関するトピックを毎月お届けします。

2022年01月01日

自分をアップデートしていますか?
~リスキリングのススメ~

皆さんは日頃何か勉強されていますか?仕事帰りに英会話教室に通ったり、キャリアアップのために週末大学でビジネスを学んだり、しっかり自己研鑽をしている人がいるはずです。一方、勉強はしたいけど仕事やプライベートが忙しく、中々時間をとれないと言い訳している人も、私も含め多いのではと思います。いつも学びは大切です。一年の計は元旦にあり、年初の今回は学びについて考察します。

日本人は勤勉といわれますが、“勤”はともかく“勉”については、そうとは言えないようです。IPAの調査結果によると、実は日本人はあまり学んでいません。ITに関わる人材の勉強時間についての国別比較では、日本は欧米諸国より少なく、ベトナムや中国などアジアの国々の勉強時間とは大きな開きがあります。また、GDPに占める企業の能力開発費比率の国別比較を見ても、日本の企業は欧米に比べ能力開発にかける費用が圧倒的に少ないことが分かります。日本の企業の中でも、製造業は非製造業に比べ社員1人当たりにかける年間研修費用は約1万円少ないとの調査結果もあります。

m2201_1.jpg図表1:左)国別週当たり平均勉強時間
       右)国別GDPに占める企業の能力開発比率
(ソース:IPA「IT人材に関する国際比較調査」、経産省2014)
(クリックして拡大できます) 

次は「自主的勉強」の割合を国別で比較してみます。業務での必要性に関係なく自主的に勉強する人の割合を見ると、日本は他の国に比べて少なく半分程度となっています。日本、そして日本の製造業は主要な諸外国に比べて競争力や生産性の低さが課題となっていますが、その対策の1つとしてもう少し学びを大切にし、人材育成への投資をしていなければなりません。

国別の自主的勉強の割合

図表2:国別の自主的勉強の割合
(濃色:自主的に勉強 中間色:業務上で勉強 薄色:勉強しない)
(ソース:IPA「IT人材に関する国際比較調査」)

最近、デジタル化の推進や進展と相まって、リスキリング(Reskilling)が注目されるようになってきました。日本語では再教育や学び直しといった言葉に言い替えられることもありますが、まだこれといった適訳はないようです。単に再教育や学び直しといわずに、敢えてリスキリングという言い方をするときは、新しい仕事に就くためのスキル、あるいは現在保有しているより大幅に高いスキルレベルの獲得や、獲得させる意味を含めて使われます。つまり、リスキリングというときは、既存の延長ではなく、非連続な育成や学びを意図します。

では、なぜリスキリングが注目され出したのでしょうか? 企業の立場から考えると、デジタル化で新たなビジネスモデルをデザインし、立ち上げようとします。そうすると社内に新たな仕事が生まれ、その仕事を担える新たなスキルをもつ人材が必要となったことが挙げられます。例えば新たなサービスに必要なデジタルツインやIoTスキルのリスキリングです。また、社内の各社員が自身の担当する業務のデジタル化に取り組めるようにするためには、デザイン思考やデータサイエンスのスキルを全社員に対してリスキリングすることになります。

このように社内人材育成のためだけでなく、もう一つ企業がリスキリングに投資する理由は、社外から優秀な人材を調達し、必要な社内人材の流出を防ぐためです。例えば働きながら大学の学位を取得できる支援制度をもつ企業は、向学心のある人にとってかなり魅力的です。海外ではコロナ禍で離職率が急に増えていて、これが海外企業のリスキリングに積極的な一因となっています。日本の製造業ではこれまでOJTや技能伝承など、どちらかというと既存業務を前提とした社員教育を行ってきました。しかし、これからのデジタル化時代、人材こそ変革の源泉です。社員の育成や社外からの優秀な人材獲得のどちらにしても、非連続なリスキリングにもっと投資していく必要があります。

同様に、個人の立場からもリスキリングは重要になってきています。アフターコロナのニューノーマル下では価値観も変わり、自分がやりたい仕事を再度見つめ直す人が増えていくでしょう。企業がデジタル化を進めるために、好条件でのデジタル人材募集も増えています。さらに今後デジタル化が本格化していくと、多くの既存の仕事が急速になくなる一方で、新たな仕事がどんどん生まれてくると予測されます。このような変化に備え、仕事のレベルアップのために自発的にリスキリングしたり、希望する仕事に就けるようにリスキリングする人は増えていきます。3年先の転職を目指してじっくり行うリスキリングもあれば、IT業界のように変化の早い分野では3ヵ月先に活かせるリスキリングも必要です。逆に、特定のスキルを磨き続け、匠のレベルに極めていくリスキリングもあります。

当たり前ですが、コンピュータのソフトは定期的にアップデートします。同様に人のスキルも環境や成長に合わせてアップデートし続けることが求められています。「最も強い者や、最も頭がよい者が必ずしも生き残るのではない。最も変化に対応できるものが生き残る。」と自然界の原理が企業経営にもときどき引用されますが、これは我々個人にもあてはまります。デジタル化を推進するのは人であり、企業や社会が変革できるか否かは、結局人次第です。また、企業や社会が大きく変わることで影響を受けるのも人です。今年も世の中や身の回りで起こり得る様々な変化に適応していくために、リスキリングでアップデートすることをお奨めします。

2022年1月

ITの可能性が満載のメルマガを、お客様への想いと共にお届けします!

Kobelco Systems Letter を購読