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2010年01月01日

生産管理システム構築の10ポイント ⑥
製造実績の収集における考慮点

製造実績は生産指示に対して実績を把握し、工程異常発生の場合の対応等の進捗管理としての情報提供以外に、仕掛在庫、原材料在庫、製品在庫、原価等の業務に情報提供しております。製造実績は生産管理システムにおいて重要な情報として位置づけられます。下記は製造実績とその周辺業務の関連を図示したものです。

製造実績とその周辺業務の関連

製造実績には生産に関する情報、作業に関する情報、設備に関する情報等現業部門で発生する種々の情報があります。この情報の多くはシステム化する以前に日報等により現業部門で記録されています。
製造実績をデジタル情報として収集することは現業部門において生産作業以外の作業が発生します。
そのため製造実績の収集にあたりどのようなシステムに利用するかを明確にして、必要最低限な実績を収集することが必要です。
主な実績項目と利用業務は以下のようなものがあり、実績情報を利用する関連業務を設定していますが、企業によって異なります
現場からの実績収集は必要最低限にすることが重要です。

実績項目 利用する関連業務 ハンディ
端末使用
備考
生産計画 生産指示 購買
製番 指示書のバーコード化。原価を製番管理する場合必要。
工程管理 一部完了の場合を考慮
不良発生 不良要因も必要。不良発生による再指示の考慮必要。
工程開始・終了時刻 日単位進捗ならば不要の場合あり。
着手・終了の時刻で採取するか?
使用機械 指示の機械と異なる場合のみ必要
作業工数 正確に採取することは困難。標準工数にするか?
機械稼働時間 正確に採取することは困難。標準時間にするか?
段取時間 正確に採取することは困難。標準段取時間とするか?
使用原材料 工程完了数の実績に対応した使用材料。使用したロット番号が必要な場合あり。
発生端材、スクラップ 歩留管理、端材の入庫に必要。
使用副資材 工程毎に日単位?工程払出で使用とするか?

作業実績の収集おいてハンディ端末を導入して実績精度の向上、現場での入力作業の簡便化を図っている企業が多くみられます。
しかし、ハンディ端末を導入したが、実績精度の向上ができなかったため、別の方法に切り替えた事例もあります。
「ある企業ではハンディ端末を作業者に持たせて、指示?毎の作業時間の収集を行っていましたが、作業者がハンディ端末への入力を忘れたり、後で入力したため、作業時間が正確に収集できませんでした。作業の開始、終了時刻をシステム時刻より採取して作業時間を算出しており、開始、終了の入力のタイミングが実作業と合わないため発生しました。
導入当初は現業部門に対して実態に合わせて入力するように通達したり、実績収集後に時刻訂正を行っていましたが、一時的な改善の繰り返しとなり、抜本的な改善が必要となりました。」
抜本的な改善内容は以下のようなものです。

  1. 作業指示単位の実績は作業開始・終了時刻の採取を止めて、工程開始・終了のステータスのみの取り込みとする。
  2. 作業者は工程毎の作業時間のみ採取する。(別工程を応援した場合は応援時間を入力)
  3. 工程毎に基準工数(条件設定あり)を設定して、作業指示?毎の基準工数を算出する。
    基準工数は半年に1回の頻度で実態調査を行い、見直しを実施している。
  4. 月次に工程の実作業時間合計を作業指示?の標準工数合計で按分して作業指示?単位の実作業時間を求める。

この改善により指示単位の実績工数は実態に近いものになりました。
この事例では実績収集のツールはハンディ端末ではなく、作業者毎にICタグを埋め込んだカードを配布し、各工程の作業場所にはIC読取機を設置しています。作業者は工程作業の開始時一定場所に作業者カードを置くのみで自動読取を行うようしております。
また、作業指示票はICタグを付けたホルダーに入れて、工程着手すると指示票を作業者カードと同様な場所に置き、終了すると取り出すようにしています。

事例を具体例で説明しますと以下のようになります。

<現場での実績収集例>

現場での実績収集例

<現場での実績収集内容>

現場での実績収集内容

生産実績の採取にあたり、現業部門における作業を加味して、精度の高い実績収集可能がどうかを見極めて、収集の手段を設定することに重要であると考えております。

2010年1月

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