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2009年06月01日

原価管理よもやま話③
製造業における『月次原価管理システム構築』のポイント

第1回目では、企業における管理サイクル(P→D→C→A)および予算管理(予算編成)システムの課題〜解決策、更には予算編成システムの前提条件を述べてきました。
第2回目では、予算編成スケジュールの短縮について、システム面からの変革ポイントを説明してまいりました。
今回の第3回目は、月次決算における原価管理システムについて、システム面の変革ポイントを説明してまいります。

1. 原価管理システムの現状
1.

月次原価管理システムの現状認識
現行のシステム(レベル)を振返ってみましょう!
図-1は、20数年前に構築されたバッチ処理が中心の、月次原価管理システムです。
一般的な企業のほとんどが、このような構成のシステムを現在も使い続けています。
コスト算出の元になる、部品表・歩留・生産性・原単位など原価諸元の追加作成に、人手を介するため時間がかかるシステムになっています。
これらのシステムレベルを見れば、その企業の原価管理システムのレベルやプロセスが把握できるほか、決算状況のレベルも把握できると言っても過言ではありません。

図-1 原価管理システムの現状

図-1 原価管理システムの現状

上図でもお分かりになると思いますが、生産実績の計上に合わせて、標準原価の有無をチェックし、無ければ改めて追加作成する処理を行なっています。
原価差額分析も、定型的な資料のみが提供され、分析作業に限界が来ています。
また、新規引合案件の見積原価計算についても、システム面の対応ができておらず、経理部門が手作業で対応しています。

2. 新原価管理システムの構築(案)
1. 実際原価計算、原価差額分析システム構築のポイント

図-2をご覧下さい。現行システムの手作業部分がシステム化され、関連するシステムとインターフェースを介して発生原価を集計〜配賦計算し、実際・実績原価計算が可能なシステムへと変革し、更には、バッチ処理が極小化されたシステムになっています。
また、原価情報の検索や原価差額分析がエンドユーザ自身で行なえる階層別・目的別データベースを構築し、エンドユーザ自ら情報収集ができる仕組みを提供しています。

図-2 月次原価管理システム

図-2 月次原価管理システム

2. 予算データ・実績データの有効活用

図-3は、標準原価の追加で必要となる、原価諸元(部品表、歩留、生産性、原単位など)を予算編成時の予算データおよび月次実績のデータより自動作成する考え方を示しています。
作成方法は、近似値および類似値にて行なう方法です。
近似値として歩留を例に、類似値として生産性を例に示しています。

図-3 予算データ・実績データの有効活用

図-3 予算データ・実績データの有効活用

生産管理の実績データを標準原価用に加工する仕組みを構築しますが、主管部門である現業部門の承認が必要になります。
具体例を下記に示しますのでご参考にして下さい。

図-4は、標準原価追加用生産性を生産管理の実績システムより、異常値を排除したり、実績のない標準生産性を作成する考え方を記述したものです。

図-4 実績データ有効活用のポイント1

図-4 実績データ有効活用のポイント1

図-5は、第2回目の説明でも記していますが、標準原価算出用歩留を生産管理実績システムより、異常値を排除したり、実績のない標準歩留を作成する考え方を記述したものです。

図-5 実績データ有効活用のポイント2

図-5 実績データ有効活用のポイント2

3. 階層別・目的別データ・ベース構築のポイント

現行の原価管理システムはシステム化がされていても、定型帳票や定型画面からの画一的な情報提供でしかなく、新しい情報を入手しようとすると、その都度システム部門に依頼をしなければならない仕組みになっています。
これらからの脱却として、階層別や目的別に各種のデータ・ベースを構築・開放し、EUC(end-user computing)の実現を図るべきと考えます。

図-6に、そのイメージ図を示します。

図-6 階層別・目的別データ・ベースの構築

図-6 階層別・目的別データ・ベースの構築

4. 原価差額分析ドリルダウンのポイント

原価管理システムの最後の変革は、EUCの実現と合わせてドリルダウンが可能な仕組みへと変革する事にあります。
ドリルダウンの実現には階層別・目的別データベースの構築は勿論の事、原価差額分析用の項目を生産管理システムに如何に取り込んでもらうかがその鍵となります。
何故なら、生産管理システムにとって、原価管理項目は余分な項目と捉えられているからです。
例えば、原価管理項目によっては、生産管理の品質工程設計マスターの運用が複雑になるからです。

そのイメージは、図-7と図-8に示します。

図-7 原価差分分析の範囲1

図-7 原価差分分析の範囲1

図-8 原価差分分析の範囲2

図-8 原価差分分析の範囲2

前述の各施策を構築することにより、月次原価管理システムの変革が行なわれ、業務改革と合わせて効果的な原価管理業務が推進できます。

次回はコストダウンに的を絞ったシステム構築のポイントを説明したします。ご期待下さい。

2009年6月

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