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2009年07月01日

原価管理よもやま話④
製造業における『コストダウン策定・評価システム構築』のポイント

原価管理システム構築のポイントの説明は今回の第4回で終了いたします。貴社システム構築の一助にしていただければ幸甚でございます。
過去3回の説明では、第1回目は企業における管理サイクル(P→D→C→A)、予算編成を中心に。
第2回目は、予算編成スケジュールの短縮について、システム面からの変革ポイントを中心に。
第3回目は、月次決算における原価管理システムについて、システム面の変革ポイントを中心に説明してきました。そして最終回の第4回目は、コストダウンに関するシステム構築への取り込みやフォローについて説明してまいります。

1. C/Dが取り込める原価管理システム
1.

システム構築の全体像
図-1をご覧下さい。立案されたコストダウン計画に関して、予算編成であれ、月次実績であれ、それらが自動的に原価管理システムに取り込めなければ、コストダウン努力も意味のない数値になってしまいます。
システム構築の面からは、製造原価算出の原価要素に、本来の原価とコストダウン努力が寄与した原価を、別々に把握できる仕組みにしておく必要があります。非常に難しいのは、このコストダウンに関する寄与データ(項目)を生産管理システムが、収集可能かどうかにより、原価管理システムの成否がかかっていると言っても過言ではありません。

図-1 原価管理システムの構成

図-1 原価管理システムの構成

多くの企業が、このコストダウンに関する寄与データの収集ができていません。
コストダウンに関する項目を取り込む設計思想を、システム構築時に持ち合わせている事が、成功のポイントになります。

2. 予算管理/原価管理におけるコストダウンの課題・問題
1. コストダウンにおける課題・問題〜原因〜対策

図-2にはコストダウンに関する課題・問題点を記載しています。
コストダウン項目を確定し、目標値を設定したりする事は可能ですが、その後のフォローとなる「実績による分析・評価」が上手くできていないと言う問題を含んでいます。
すなわち、前述の、生産管理システムを巻き込んだコストダウン評価システムを構築すべきとの課題を浮き彫りにしています。

図2.コストダウンの現実
課題・問題
原因・真因
対応策・実行手段
1.省力化
・省力化のタイミングがバラツク。
・各人の効率化が評価できない。(残業時間の減少)


・計画立案時に時間が具体化されていないケースがある。
・業務の高負荷時・低負荷時のバラツキが大きい。


・年・期でなく、月別展開を必ず行う。
・必ず業務トータルの時間を把握しておく。
2.設備投資
・予定した効果が現れてこない。
・稼動後の設備投資が見えない。

・当初計画時より、投資額が増加する。
・全体額でしか把握できない。(個別には掴めない)

・物価浄書率、ベースアップなどを予測しておく。
・個別データの配賦を精度向上させる。
3.投資効果(波及効果)
・効果を課題評価している。
・波及効果の測定が出来ない。

・机上効果=実現可能効果と思っている。
・前工程の効果率が自工程に影響する。

・現場は生き物であり、正確な情報を把握する・
・前工程BEST=後工程BESTとは限らない。
4.シミュレーション
・簡単にシミュレーションができる仕組みがない。
・投資対効果の精度が悪い。

・フォローで厳しく追及されない。
・論理的な説明で可能と思っている。

・シミュレーション可能なシステムを構築し、想定効果を予測する。
・実績データで新旧比較を行い必ず評価する。

2. システム構築の前提

上記を考慮し、コストダウン(C/D)を分析・評価するシステム構築の前提を下記します。

システム構築の前提

3. コストダウンシステム構築のポイント
1. 予算編成と月次実績でのコストダウン

予算編成におけるコストダウン策定は、外部環境や内部環境を取り込んで、コストダウン目標値が設定されます。
この設定は、販売計画であったり原価諸元であったり、設備投資など多岐にわたります。
例えば、歩留に関するコストダウンを例に取るならば、実力の歩留値の計画も、コストダウン努力値も同時に取り込みが行なわれるため、それぞれの値が不明確な状況になっています。
これらを、予算管理システム上で分離・設定しても、生産実績として計上されてくる実績歩留が、予算歩留と同じメッシュで収集されなければ、分析・評価・フォローが出来なくなります。
それらの例を図-3、図-4に示しました。

現場はややもすると、通常予算とコストダウン予算とを混在して設定してしまいます。下のように、必ず分離して設定する事が基本です。(図-3は単純平均です。)

図-3 予算の歩留コストダウン策定

図-3 予算の歩留コストダウン策定

図-4は、7月度の生産実績が計上されたケースの予実分析結果です。下のように歩留の分析が出来ても、裏歩留まで計上出来なければ意味を成しません。

図-4 月次における歩留の差異分析

図-4 月次における歩留の差異分析

次いで、生産性と原単位のコストダウンについて見ていきましょう。
図-5は、予算編成時に原価要素である電力原単位について、生産性を使用して品種別に配賦したケースです。
予算時には生産性を技術標準から取得していますが、月次実績では生産性も電力使用量もどんぶりでしか把握できないのが一般的です。

下図の情報は経理部門だけでなく、現場も巻き込んで全社一丸となって取組むべきと判断します。

図-5 生産性の取り込みと電力原単位の配賦

図-5 生産性の取り込みと電力原単位の配賦

図-6は、月次実績における原価差額の分析の例ですが、生産性も電力原単位も品種別に、把握ができないため、月次標準構成で実績を無理やり配賦しているのが、理解できると思います。
すなわち、コストダウン努力により生産性の向上、電力原単位の削減を実施しても、実績データとしてキチンと把握できなければ、あくまでも仮説による努力しか見えないという事になります。
たびたび申し上げていますが、原価管理システムだけでコストダウンを設定したり、分析・評価をしても、限界があると言う事です。
生産管理システムの構築と相まって、相乗効果が発揮できる事になります。

コストダウン情報が重複した場合は、必ず片方を標準にして把握するようにして下さい。

図-6 電力原単位のコストダウン分析

図-6 電力原単位のコストダウン分析

2009年7月

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