社長通信 社長・瀬川文宏が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2022年11月01日

バドミントンのダブルスペアを支える相性と信頼
~人事異動、組織改正の重要性~

どんぐり

先月の当コラム※1で、バドミントンの世界では競技のレベルが高くなるにつれてシングルスとダブルスに専門分化されていくことを取り上げました。
数々の大会で優勝している女子シングルス奥原希望選手は「私はシングルスの方が楽。すべてが自分次第、全部自分に返ってくるので楽なんです」と言い、またダブルスについて「他人のことは絶対コントロールできないじゃないですか。私はそこにストレスを感じてしまうんです」と話しています。奥原選手の言う通り、自分一人で完結するシングルスと違い、ダブルスはペアを組むパートナーがとても重要で大きな存在となります。では、どのようにして最適なパートナーを見つけるのでしょうか。

世界的にもレベルが高い日本の女子ダブルス。一躍有名になったのは小椋久美子、潮田玲子の「オグシオ」ペアです。2人は別々の高校に通っていましたが、アジアジュニア選手権の合宿に呼ばれた時にダブルスを組むように指示されました。その時のことを「先輩たちが先にペアを組まれていき、最後に残ったのが私たちだった」と言いますが、170センチを超えパワーを生かした豪快なスタイルの小椋選手と冷静沈着で技巧派の潮田選手、対照的な2人がお互いをカバーして強いペアになることは、強化担当者によると必然だったそうです。

2016年のリオ五輪で金メダルに輝いた高橋礼華、松友美佐紀の「タカマツ」ペアも相性抜群でした。高橋選手が「松友が裏をかいたショットを打ち、私が決めるというのがすぐにできた。私は技術がある方じゃなく、パワーの選手でしたが、松友にいいところを引き出してもらいました」と言えば、松友選手も「私はシングルスでも全力でスマッシュを打つ方ではなかった。でもダブルスだと相手を崩して上がったシャトルを高橋先輩がどんどん決めてくれた。こんなに簡単に決まるんだって思いました」と話していました。

ダブルスはペアの相性の良さで強さが大きく変わり、1+1が2以上の3にも5にもなるのだそうです。お互いの弱点をカバーし合ったり、相手の良いところを引き出し合ったり、そんな相互作用が強さになります。「オグシオ」も「タカマツ」も自分が持っていないものをお互いに補い合う関係であったことが、結果につながったのだと思います。
また、「ダブルスは2人で作っていかなければいけない」と言われます。日々、2人でどうすればよいかを考え、気付いたことは何でも言い合う。パートナーを信頼し、お互いを認め話し合える、そんな関係性が大切なのです。
これは通常の職場でも同じです。メンバーがお互いを信じて役割を任せ、フォローする。そしてお互いが何を考え、何をやろうとしているのかを理解し合うことができれば、必ず素晴らしい成果につながるはずです。

当然、最初からうまくいくペアばかりではありません。東京五輪に出場した福島由紀、廣田彩花の「フクヒロ」ペアは、一度ペアを解消したことがありました。
高校卒業後、ルネサス(現再春館製薬所)に入社した福島選手はシングルスで活躍するつもりでしたが、故障した選手の代役で出場したダブルスで大活躍。翌年には廣田選手と「フクヒロ」を結成しました。しかし、思うような結果が出ず4年目にはペアを解消、それぞれ別の選手とペアを組みました。ところが、新ペアでも2人ともうまくいかず、シーズン途中に「フクヒロ」を再結成。すると全日本社会人で初優勝、初の代表入りを果たしました。「一時期、別のパートナーと組んだことが、ひとつの大きな転機でした」と2人は口をそろえます。当時のコーチも「別のパートナーと組んだことで、改めてお互いの良さが分かったと思います」と証言します。また、ペア解消当時を振り返って福島選手は「自分の意見ばかり言い続けていた」と言い、廣田選手は「私が悪いから何も言えなかった」と2人ともコミュニケーション不足だったことを反省していました。

人と人には相性があります。職場においても普通に気が合う相手と、どうも気の進まない相手がいます。同じように、社員と職場にも相性があります。
もし、今の職場はどうしても耐えられないと思うならば、「苦しくても逃げずに我慢する」といった美徳は捨てて、別の部署への異動を相談するべきだと思います。相談を受けた上司も「ここでダメならどこに行ってもダメだ」というような言葉は絶対に慎まなければなりません。ある職場で活躍できなかった人が、別の職場では驚くような能力を発揮したということは往々にしてありますし、「フクヒロ」のように元の職場の良さを気付くこともできます。
大事なのは「職場や人とうまくできないのは、自分の努力が足りないからだ」と思いつめないこと。日本人は、周りの人と仲良くするのが普通と考えがちですが、そもそも全員と仲良くするのは不可能だと認識すべきでしょう。

加えて、職場側の改善も必要です。特に長い間、体制に変化のない職場においては、どうしても似たもの同士が集まり、「類は友を呼び」特有のカラーや文化が出来上がります。
そして外部から来た人も「朱に交われば赤く」なり、知らず知らずのうちに外部から乖離してしまいます。一方で組織のカラーに馴染めず、相性が悪い人たちは日々ストレスを感じ、その結果メンタル不調や体調不良を招いてしまいます。
そうなる前に定期的な人事異動やマネジメントの変更、適切なタイミングでの大幅な組織改正を行うことが、経営として重要になってくるのではないかと考えます。

*1:社長通信2022年10月 ラケットスポーツ選手の出場種目と専門性
https://www.kobelcosys.co.jp/column/president/20221001/

2022年11月

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