社長通信 社長・瀬川文宏が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2022年09月01日

高校野球における野球留学を考える
~ピア効果を引き出す共通のパーパス~

月とススキ

仙台育英の東北勢初優勝で幕を閉じた今夏の甲子園大会。優勝候補として注目された大阪桐蔭はベスト8で下関国際に敗れ、史上初3度目の春夏連覇はなりませんでした。それでも“打倒・大阪桐蔭”と全国の高校球児の目標となっていたことは間違いありません。

大阪桐蔭の強さの理由として、投打ともにレベルの高い選手を数多くそろえていることが挙げられます。今春のセンバツでは本塁打11本を7人の選手で打ち、チーム本塁打の大会記録を大幅に更新、投手陣も4投手を起用して万全の体制で優勝しました。そんな今年のチームの出身中学は近畿圏だけでなく、熊本、岐阜、三重、福井、愛知、千葉、群馬、神奈川など様々です。
また今年に限らず、毎年全国から有力選手を獲得。甲子園では2012年の春夏連覇、14年夏、17年春、18年も春夏連覇と直近11年間で7度も日本一に輝き、歴代1位の勝率(.828)を誇っています。

企業にとって強い組織作りは永遠のテーマです。メンバーの成長を促し、強いチームを作るアプローチの一つとして「ピア効果」という考え方があります。ピア(peer)とは、年齢・地位・能力などが同等の者、同僚を意味します。「ピア効果」は、同僚との競争や切磋琢磨によってお互いの成長に影響を与え合うことをいいます。大阪桐蔭の場合も、能力や意識の高い有力選手が同じ環境に集まり、お互いに切磋琢磨し合うことで、個人の成長を促し、結果的にチームのレベルアップをもたらしたと言えます。

職場においても、優秀な同僚の仕事への姿勢や考え方に刺激を受けることで、働くモチベーションが高まり能力が向上し、新しい発想や創造力を発揮できるようになると考えられます。一緒に仕事をしている人が自分より優秀であり、自分の持つ能力を絶えず最大限発揮しながら懸命に付いていく、そんな環境に身を置くことができれば、個人の能力は飛躍的に向上するかもしれません。
一方で注意しなければならないのは、メンバー間の能力差が大きくならないようにすることです。周りのレベルが自分と比べて高すぎると「どんなに頑張っても無理」とあきらめてしまい、逆に能力が低下してしまうこともあるそうです。

今夏、東北勢6校中5校が初戦突破しました。全員が秋田出身の県立校、能代松陽のみ初戦敗退しましたが、青森・八戸学院光星、岩手・一関学院、山形・鶴岡東、宮城・仙台育英、福島・聖光学院はいずれも有名な私立校で、他県から甲子園を目指し“野球留学”でやってきた選手と地元選手が力を合わせて甲子園での勝利をつかみ取りました。準決勝では仙台育英と聖光学院による史上初の東北勢対決も実現しました。

何かと議論の的になる“野球留学”ですが、昔は大阪の中学からは島根や香川など近隣へ、静岡の選手は神奈川、埼玉の選手は東京、など地域性や学校のつながりでの進学が主流でした。しかし、最近は自分の将来を考えたうえで、それに合った高校を選択するケースが増えているようです。
卒業後のプロ入りを目指して、大阪桐蔭のような超強豪校でレベルの高い選手としのぎを削るのか、甲子園出場を最大の目標にその可能性の高い地方の強豪校を選ぶのか。有名な指導者の下でやりたいのか、室内練習場、専用グラウンドなど練習環境にこだわるのか。個人の目標や希望に合った高校を全国レベルで選択できるようになってきています。

受け入れる高校側も特色を出そうと努力しています。高知・明徳義塾は緑豊かな自然の中に中学、高校の寮があり、教職員と生徒が一緒に生活。中学から親元を離れて高校まで進学する選手も多くいます。また、今春のセンバツに北海道から出場したクラーク記念国際は、全国にキャンパスがあり1万人以上が学ぶ通信制高校です。野球に専念できるカリキュラム、寮に隣接する天然芝の甲子園と同じサイズの野球場に総人工芝の室内練習場など申し分のない環境を整備しています。

IT業界でもエンジニアが企業を選ぶ時代へと突入しています。競争が激化している労働市場の中で自社への志望者を増やすためには、自社の「勤務先としての魅力」を確立し積極的に外部に伝えなければなりません。なかでも絶対に欠かせない魅力の一つが、個人が成長するための「環境」だと思います。
自分の目標や夢に近づくために、より良い「環境」を求める権利は誰にでもあります。そして、個人が成長できる「環境」というニーズに企業も真剣に応えていく必要があります。近年注目されているパーパス経営の考え方は、その有効な手段の一つではないかと思っています。

自社の存在意義や目的はどこにあるのか、といった自社の「パーパス」を定め社内外に発信することで、「パーパス」に共感を持ったモチベーションの高い人材が集まってきます。また、同じ目標や夢に向かって成長できる環境や経験を企業として提供しやすくなります。
その結果、組織が活性化しピア効果も発揮され業績も向上、さらに優秀な人材を呼び込んでいくという好循環を生み出すことができれば、大阪桐蔭同様、企業も競争力を持続できるのではないでしょうか。

2022年9月

ITの可能性が満載のメルマガを、お客様への想いと共にお届けします!

Kobelco Systems Letter を購読