社長通信 社長・瀬川文宏が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2020年01月01日

オリンピックイヤーを迎えて思う事
~記録は超えられる為にある~

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新年あけましておめでとうございます。いよいよ東京で2回目のオリンピックが開催される2020年がスタートします。2020年の干支は「庚子(かのえね)」にあたり、新たな芽吹きと繁栄の始まりであるといった意味があるようです。再び新しい十二支のサイクルがスタートする年でもあり、本格的な令和時代の始まりにふさわしいですね。オリンピック景気も相まって今年もIT産業は高い成長が期待できそうですが、その一方で人材不足はますます深刻になる様相です。当社もおかげさまでここ数年は順調に成長してきましたが、リソース不足が成長の足かせになってきており今年も悩み続けなければなりません。

一般的に会社は前年対比で成長する目標を立てます。そして目標を達成したら、その翌年はその実績を上回る目標をセットする。やればやるだけ次の目標は高くなる、そうなると限られたリソースの中でどこまで成長すれば良いのか、といった疲弊感が現場から漂ってきます。そして目標を達成できる見込みができたら、現場は必要以上にオーバーしないようにコントロールする様になりがちです。これはビジネスの世界では誰もが思い当たる節があると思いますが、スポーツの世界でも記録更新においては同様ではないでしょうか。

オリンピックイヤーで思い出したのは、セルゲイ・ブブカというウクライナ出身の男子棒高跳び選手です。私と同世代の人は良くご存じと思いますが、当時のソビエト連邦の支援のもと世界記録を35回も更新しています。1985年7月13日に世界で初めて6mを突破したのちも記録を更新し続け、1994年に記録した屋外の世界記録である6m14cmは未だに破られていない様です。偉大な選手であることは間違いないのですが、それよりもどうして我々の記憶に残っているのかというと、それは世界記録更新を1㎝きざみで更新する(だから35回も更新できた)というある意味で姑息な事をやり、その記録更新のたびに世界でニュースになっていたからです。おそらくは10㎝単位でも記録を塗り替えられたのに、そうしなかった事を揶揄した記事が出ていた事も覚えています。でもビジネスリーダーの立場になってみるとブブカの気持ちが良くわかります。「自分の作った記録が次の自分の目標になる、その記録が高ければ高いほどその更新は困難になってくる、ならばなるべく低いところで更新しておこう」と。これは先ほどのビジネス目標と同じ心情ですね。同時に自分自身の限界との戦いでもあります。ライバルがいて、ライバルに勝ちたい、というのが一般の選手の動機なのでしょうが、超一流の選手は孤高なのでモチベーションを保つのが大変だろうと思います。(フィギュアスケートの羽生選手も孤高になっていましたが、ネイサン・チェンというライバルが現れて、かえって喜んでいる風にも見えますね。)

では何のためにつらい準備をして自己記録更新を目指すのでしょうか?達成感?それはもう十分に味わっていますね。ではやりがい?刺激?その競技が楽しいから?自分自身の限界を確かめたいから?これはもう超一流の人しか理解できないのではないでしょうか。これが企業の場合、過去最高の業績を超える事は必ずしも目標とはなりません。お客様へは最善のモノ・コトの提供、社員へは業界トップの処遇と安心できる雇用、株主には安定した利益と配当、取引先とは安定した発注、社会へは適正な納税とSDGs貢献等、各ステークホルダーに対し設定する指標は異なります。それらを達成する事によりステークホルダーにとってなくてはならない会社であり続ける事が企業の目標なのではないでしょうか。その目標実現の為に最も大切なものが成長ビジョン・会社の方向性を示すことです。これが明確にある事で企業はOne Teamとなり、これらの指標を持続的・自律的に更新していく事が出来ます。そしてステークホルダーは安心してその企業と共に歩めるのです。これはスポーツでの記録更新におけるモチベーションにも通じるものだと思います。

記録は達成したらそれがまた次の目標になる。言い換えれば記録は超えられる為にある。人類はこれを繰り返して発展・成長してきたのですね。企業の発展も同様に各指標の記録を更新し続ける事であり、それができる企業が一流と言われるのはないでしょうか。

本年は当社の中期経営計画の最終年度であり、次期中期を策定する年でもあります。さて、どこに向かって行こうかしら。ステークホルダーの皆様からの声にも大きく耳を傾けていきたいと思いますので、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

2020年1月

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