ものづくりコラム 設計、生産管理、原価管理などものづくりに関するトピックを毎月お届けします。

2008年06月01日

製造業のグローバル化(その2)

まずは以下の加工組立型企業での製造形態について解説します。
下の図は、生産管理の解説本などで見かけられることも多い製造形態の4つのタイプについてまとめたものです。
各製造形態は扱う製品の特性とお客様へ納入するリードタイムによって決まります。

見込生産(MTS)は、一般的に同一製品が大量に生産され市場に投入される場合(一般の家電製品など)、また、繰返し注文が来るもので納期が非常に短い場合(自動車の部品など)に利用されます。この場合、製品在庫の管理が難しく、製品ライフサイクルでの終盤では製品価格が非常に安くなってしまうこともあります。

受注組立生産(ATO)は、注文を受けてから最終製品をつくるためにモジュールの構成品などを組立てる形態のものです。汎用品よりも高価な製品の場合が多いです。お客様別に仕様が若干違っていたりする場合はこの製造形態が取られます。ATOと似た製造形態としてはBTO (Built-to-Order)、CTO (Configure-to-Order)などがあります。BTOは特定の企業が使い始めた用語とされていますが、本日では一般用語になっています。CTOはオプション品などの多い製品(企業用コピー機など)を指す場合が多いです。

受注生産(MTO)は比較的大型または高価な製品、設置する用途・場所などの関係で設計が必要な場合に見かけられます。受注を受けて出荷するまでのリードタイムはATOより長くなります。納期管理、部材の手配などの手配業務も難しい上、仕様の確定が遅れる場合も多く業務が人海戦術的にこなされる状況もよく見かけられます。

設計後受注生産(ETO)は、大型の産業機器、プラントの設備などで利用される場合が多く、受注後、設計がはじまります。プロジェクト管理が難しく、設計過程での仕様変更も膨大になります。

ここで海外に製造拠点を設けた場合、何が起きるか考えてみましょう。観点によっていくつも挙げられると思いますが、製造形態の面からは以下の問題が大きいです。
  1. 海外工場に発注してから納品までのリードタイムが長くなる
  2. 製造ノウハウの蓄積が少なく、人に頼った製造が難しくなる
  3. 設計と製造部門の情報連携が悪くなる

1.に関して、リードタイムが長くなるのは当然のことです。問題は日本の製造業は、「顧客別に仕様を変えて顧客ニーズに対応する」企業も多く見受けられることです。細かなお客様の仕様を設計部門が吸収して最終製品に結びつけてきました。コンピュータシステムの面からもそういった企業ではMTOのシステム改善に力を入れてきたのです。それが、海外に工場を移した場合、製品単位で移すような場合は、リードタイムの問題の他、製造ノウハウの問題、設計−製造の連携の問題も重なり、MTOでの製品提供が難しくなってきます。MTOをMTS(あるいはATO)に変える場合、コンピューターシステムの問題以前に、?お客様の仕様ニーズへの対応、?製造ライン、?設計部門の業務、?調達業務などすべてに影響が出てきます。こういった状況の変化はシステムの再構築だけでなく、業務自体を再構築する必要が出てきます。

また、生産ラインの一部を海外に移してキーパーツを輸入する場合、あるいは、移転しなくてもキーパーツを輸入する場合は以下のような製造工程が考えられます。この場合、調達リードタイムの長い海外調達品は、業務手続の違いもあり一般の部材とは別に管理されることも多く見受けられます。「国内の調達品はほぼJIT(ジャストインタイム)で工場に入ってくるのに海外調達品は2、3ヶ月のリードタイムで調達している...。」こういった状況では、製品のライフサイクルにも対応できず、原価を無視した出荷やデッドストックの増加につながってきます。この問題もコンピュータシステムの変更だけでは解決できませんが、コンピュータシステムのサポートにより、製造計画に海外調達品を含んだ、より国内での調達業務に近い業務オペレーションも可能となります。

製品ライフサイクル、また設計変更に対する対応の問題も重要です。「海外拠点と国内で設計情報、技術情報を共有化させる」ことを目指している企業も多く見られます。ただ、現実にはシームレスな情報共有を実現した企業は少なく、多くの企業は試行錯誤の段階と言えます。“CADデータの共有”、“PLMの導入”の前に海外拠点と国内拠点で「何を」「どういった目的で」共有する必要があるのかを定義し、各現場のスキルも上げていくといったステップが必要となってきます。

コベルコシステムは前回から述べてきたような業務の劇的な変化に対し、システムの面からお客様と一体となって改革を進めております。リファレンスできる事例もいくつか出てきており、こういった面からもお客様へのサービスを提供しております。

次回はトレーサビリティについてお話しします。

2008年6月

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