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2021年09月01日

コロナ禍の今こそ脱FAXのチャンス

誰もがPCやモバイル端末を使ってメールを送り、ネットで購入することが当たり前になった昨今、FAXを使う必要性はほとんどないように思えます。確かに家庭におけるFAX利用は以前に比べ明らかに減っています。FAXの保有世帯は3割程度まで減少しており、自宅に固定電話すら持たない20代の世帯となると、FAX保有率は1%程度しかありません。ところがビジネスの世界では、今もなお様々な場所でFAXがメインの通信手段の一つとして使われています。デジタル時代に向かう中、FAX利用はアナログの紙を扱う非効率な業務となります。また、コロナ禍でのハンコ出社と同様に、FAX出社はリモートワークを妨げる一因となっています。そこで、今回は製造業におけるFAX利用の現状と今後について考察してみます。 製造業では、FAXは販売業務や購買業務、そして物流業務などで、今でもバリバリの現役として活躍しています。

FAXによる企業間の通信図表1:FAXによる企業間の通信
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BtoBビジネスにおいては、EDIや電子メールによる受発注が増えつつありますが、それでもFAX利用はまだまだ多いようです。製造業を対象とした最近の調査結果によると、回答企業の半数以上が顧客からの受注をFAXで受け取っています。同様に、FAXを使って調達先への発注を行っている企業も半数近くあります。多くの販売部門では、例えば大手顧客からはEDIで、そして多数の中小規模の顧客企業からは電子メールやFAXといったように、様々な方法で注文を受け取っているのが実態だと考えます。
それでは、アナログのFAX受注とデジタル化されたEDI受注では受注業務がどのように異なるか、効率面に注視して具体的に見ていきましょう。

受注業務におけるFAXとEDI比較

図表2:受注業務におけるFAXとEDI比較

FAX受注はEDI受注に比べ、受注業務全般において人手作業が必要となります。FAX受注では、顧客企業からFAXで紙の注文書を受領すると、受注登録担当者は注文書を見ながら、注文内容を販売システムに入力していきます。毎日膨大な数のFAX注文書の内容を人が逐一システムに入力していく際には、当然読み間違えや入力ミスが発生します。そのため、入力した人とは別の人が、入力内容と注文書を照合するダブルチェックが必要となります。さらに、受領したFAX注文書は、伝票と合せて整理・保管しておくことが法的に求められ、この仕事もかなり手間がかかると言えます。

FAX受注の非効率な点が、もう一つあります。FAXで送られてくる注文書は、顧客固有のフォームに手書きの場合や、顧客企業内で使われている品名や仕様が記載されるなど、通常は顧客が決めた様式がよく使用されます。すると、受領側はそれらを理解し、社内システム登録用語に読み替える作業が必要となります。受注登録ができる人は、顧客のことを良く知る営業や経験豊富な受注担当者に限定されてしまいます。

このようにFAXを通した受注業務は、FAXを送る側にとって手軽ではあるものの、FAXを受け取る側には多大な負担が生じます。アナログのFAX受注のままでは、受注業務のデジタル化を進め、業務効率を高めることはできません。それでも、企業におけるFAX利用は減少傾向にありますが、FAX受注の廃止は中々進みません。その理由として、顧客企業や取引先に対し、長年使い続けているFAXを止めて欲しいと言い難いことがあります。特に、「今のFAXで問題ない」と考える企業や、ITに不慣れな企業が多いと、これまで慣れているFAX運用を止めてくれとは中々言い辛いでしょう。

このような課題解決には、まずFAXの代替策を用意することです。例えば、注文書に代わる標準のEXCEL注文書を、メールで送付してもらう方法でも、受領側のシステムに効率よく読み込むことはできます。できれば、顧客企業や取引先がFAXに代わって簡単に受発注できる、EDIプラットフォームを用意することがお奨めです。スマホアプリのように、誰でも簡単に操作が可能で、ネット通販と同様に、発注履歴の管理やリピート発注ができるEDIであれば、FAXから脱しきれない取引先にも受け入れてもらえるでしょう。EDIになれば、当然自社システムと連携し、受発注業務を効率化することも可能になります。更に、受発注に限らず、これまで郵送やFAXで送信していた受注請書や納期回答、出荷案内、請求などの企業間のやりとりもEDIで行うことができ、双方の企業で大幅な効率化を実現することができます。

どの企業でもリモートワークへの移行が進みつつある今日は、取引先に脱FAXを提案するチャンスです。非効率なFAX運用が続くのは、ハンコと同様に、「これまで使い続けてきたから」、「先方がFAXで送ってくるから」といった慣習や思い込みが多分にあると思われます。今年の6月に行政改革相は、ハンコ廃止に続き、中央省庁でのFAX利用を今年の6月末で原則廃止する方針を公表しました。各企業のFAX利用もそろそろ見直しする段階にきています。

2021年9月

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