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2020年01月01日

経営者をその気にさせる「DX格付」に注目

昨年末の臨時国会で、企業にデジタル技術の活用を促す「改正情報処理促進法」(以下「改正情促法」と呼ぶ)が可決、成立しました。欧米や中国の企業に比べ遅れている日本企業のデジタル化を促進し、日本の産業競争力を高めることを狙いとした、この法律には大きく3つの改正内容が含まれています。

「情報処理の促進に関する法律の一部改正」の概要

図1:「情報処理の促進に関する法律の一部改正」の概要
ソース:経済産業省HP資料より作成

国による法律改正や施行は、法律が自社の業界に直接関わる場合を除き、民間企業で働く人にとっては日頃あまり気にならなないことと思いますが、この「改正情促法」は、あなたの企業のデジタル化促進に大いに役立つものと期待できそうです。今年5月に施行される法律で、これから具体的内容が詰められ順次公表されていくものですが、今回は「改正情促法」の中でも特に注目すべき「DX格付」の概要や活用について考察します。

新しい「DX格付」に関する情報はまだ公表されていませんが、断片的な情報から「DX格付」の概要を推測してみます。まず、企業のデジタル化による経営の効率化を求める指針が作られ、その指針を基に適正に評価されます。評価指標には、次のような観点が盛り込まれるようです。

①経営層の関与度合いや体制
②予算配分・人材確保の取り組み
③ビジネス戦略や業務プロセス

「DX格付」を得たい企業は上記に関する評価指標について自己申告し、デジタル化を進める場合の予算や職員数の数値目標などの提出も求められることになります。評価は、システム監査などの資格保有者、外部の専門事業者、第3者委員会などが指標に基づき客観的に行い、基準を満たした企業は3段階(ゴールド、シルバー、ブロンズ)で認定されます。

実は、今回の「DX格付」は、「2025年の崖」で有名な「DXレポート」から続く、経済産業省主導の一連の施策です。昨年7月には「DX推進指標」が公表されました。この指標により企業は自社のDX成熟度を自己診断できるチェックリストが誰でも利用できるようになっています。さらに、各企業はチェックリストの判定結果を提出すれば、自社のDX成熟度が全国平均のどのあたりにいるか分かるようになる予定です。しかし、この「DX推進指標」によるチェックはあくまでも自己診断を基本としていて、第3者が認定する「DX格付」とは大きく異なることになります。

DXレポートからDX格付に至る動き(推測)

図2:DXレポートからDX格付に至る動き(推測)

企業は「DX格付」評価や認定を受けることで、いくつか大きなメリットが得られます。まず、自社のDX取組み状況が可視化でき、DX推進の現在のレベル、劣後している点が明確になるため、DX推進を効果的に加速することができます。特に、日本の企業にとってDX推進の大きな課題の一つが、経営者の意識や関与です。「DX格付」により、社内だけではなかなか難しい、経営者の意識や関与度合いを客観的に評価することができ、自社として為すべきことも他社とのベンチマークで浮き彫りになります。さらに、自社の「DX格付」が高い段階にあると認定されれば、取引先や投資家からはDX先進企業と評価され、国内外から優秀な人材を獲得し易くなるでしょう。このように「DX格付」を活用することで、経営者自らが、自社のDX推進の取組状況や自社システムの問題点を把握し、DX推進の取組みレベルを上げていくことが期待できます。

一方で、「DX格付」の浸透に向けて、気になる点もあります。まず、企業の格付けという点では、ITを活用した経営革新の「攻めのIT経営銘柄」が既に運用されています。5回目となった昨年は各業種を代表する29社が選定され、特に昨年はその中からデジタル時代を先導する企業として「DXグランプリ」も選定されています。このように「DX格付」と「攻めのIT経営銘柄」とは類似点が多く、整合させる必要があります。「攻めのIT経営銘柄」の中にDX格付を加えるのか、「DX経営銘柄」を新設するのかは、今後詰めていくことになります。次に、海外のDXのベストプラクティス企業を見ると、多くがいわゆるスタートアップ企業です。日本の産業構造の問題の一つは、海外に比べ企業の新陳代謝が進んでいないことです。多くの企業がデジタル化で新たなビジネスモデルや新サービスを実現することは、日本における企業の健全な新陳代謝にもつながります。「DX格付」の対象が東証1部・2部だけなのか、マザーズやJASDAQも含むのかの検討はされているようです。
日本企業のDXを加速する「DX格付」に期待しつつ、その動向を見ていきましょう。

2020年1月

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