ものづくりコラム 設計、生産管理、原価管理などものづくりに関するトピックを毎日お届けします。

2019年11月01日

デジタル化とものづくり⑭
~レガシーシステム=悪者?~

最近の調査では、製造業の9割の企業が、レガシーシステムを抱えていて、そのほとんどが、レガシーシステムから脱却・更新したいと考えているとのことです。前回のコラム※1で取り上げた「2025年の崖」でも、レポート内でレガシーシステムの刷新を推奨しています。これらの調査やレポートを見ていていると、どうも「レガシーシステム=悪者」との不文律があるようです。見方によっては、「デジタル化が進まないのはレガシーシステムが原因。全て撤廃すべし。」といったプロパガンダのようです。そこで、今回は本当に「レガシーシステム=悪者」なのか、考察してみたいと思います。

まず、英語の「レガシー(legacy)」は、遺産・遺物など受け継いだものを意味します。このように、「レガシー」は先人たちが作り上げたものという意味があることから、技術革新スピードが速いITの世界では、「レガシー」というと旧式のもの、時代遅れのものと、否定的に使われることが多いと思われます。しかし、否定的なニュアンスばかりではなく、後世に残る偉大な物や業績など、価値あるものを指す肯定的な意味もあります。例えば、政治家は、「レガシーとなるものを業績として残したい」というように、「レガシー」を肯定的に使います。日本ではオリンピック開催が間近となってきましたが、IOC(国際オリンピック委員会)は「オリンピック・レガシー」という表現を使っています。オリンピック開催によって整備される競技施設やインフラを通して人々の生活がより良くなっていくと提唱しているのは、肯定的な意味の「レガシー」です。

それでは、まずレガシーシステムとなる3つの理由について、それぞれがシステム・アーキテクチャーのどこのことを言っているのか見てみます。

システム・アーキテクチャーとレガシーシステムの理由

図1:システム・アーキテクチャーとレガシーシステムの理由

レガシーシステムとなる理由①「技術面での老朽化」は、システム・アーキテクチャーのシステム基盤やプログラム言語で起こり得ます。理由②「システムの肥大化」と理由③「ブラックボックス化」は、共にアプリケーションに関わることです。

アプリケーションが稼働しているシステム基盤がメインフレームで、プログラミング言語がCOBOLである基幹システムとなれば、それだけでレガシーシステムと見做されます。確かにメインフレームやCOBOLは、現在では流行りの技術ではなく、利用企業も減少しています。画面もかっこいいとは言えません。しかし、必ずしも「老朽化」している訳ではなく、今でも多くの企業の基幹システムで使われ、ベンダーによって継続サポートされています。一方で、最近のサーバーは5年でリプレースが当たり前であり、次々と生まれる新しいプログラミング言語は、いつの間にか表舞台から消えていくことが多々あります。今は現役のC#やPythonなどのプログラム言語も、10年後はどうなっているか分かりません。こうして見ると移り変わりの激しい技術革新の中で、60年以上に渡って世界中で広く使われ続けているメインフレームやCOBOLは、それだけ優れた技術であると言えても、「老朽化」した技術とは言えません。

COBOLと言えば、厚生労働省の勤労統計不正問題の記者会見で「原因はCOBOLが高齢者しか分からない特殊言語だからだ」という発言がされました。COBOLというレガシーシステムの存在が問題の原因であったと、言いたいのかもしれませんが、むしろ保守体制や変更プロセスの不備に起因するものと推察します。

メインフレームの信頼性や安全性、高い能力を評価し、基幹業務で積極的に使い続ける企業もあります。一方、ベンダー・サポートが打ち切られるようなシステム基盤やプログラム言語を使っている基幹システムは、明らかに企業の事業戦略の足かせとなるレガシーシステムです。このように、一般的にレガシーシステムと呼ばれるシステム基盤やプログラム言語であっても、実は善玉と悪玉があるのです。長年社内で開発・保守されてきたアプリケーションについても同様です。企業を取り巻く環境や企業内の仕事が大きく変わっているのに、アプリケーションの肥大化・ブラックボックス化のために、保守や機能追加に余分の日数やコストがかかるようでは、それは悪玉のレガシーシステムです。一方、長年磨きこまれ、培ってきた業務ノウハウや、業界固有の商流に最適な業務ルールが組み込まれ、今でも十分機能しているアプリケーションであれは、それは後世に大切に引き継いでいくべき、善玉のレガシーシステムです。

善玉のレガシーシステムであってもその価値を損なわないように、適切な手入れとシステムマネジメントを継続することが必要です。一方、悪玉のレガシーシステムは、負の遺産としてゼロベースで再構築を急ぐ必要があります。但し、パッケージやスクラッチで再構築するとしても、直ぐに始まる悪玉レガシーシステム化の道を歩まぬような手立てが必要です。さらに、レガシーシステムの再構築に際し、アプリケーションの前提となる業務プロセスが、そもそも悪玉のレガシーであれば、業務プロセスを含めた再構築が求められます。

今でもレガシーシステムを抱えている企業が多いのですが、レガシーシステムの撤廃・刷新は、あまり進展していないのが実態のようです。進展させるには、刷新の要否判断や最適な刷新方法の選定、投資対効果を含めた経営層への上申など、色々難しい工程があります。先ずは、自社のレガシーシステムが悪玉か善玉かを見極めることで、適切な対策を打っていかれることを期待します。

※1:デジタル化とものづくり⑬ ~自社にとって「2025年の崖」とは~
https://www.kobelcosys.co.jp/column/monozukuri/20191001/

2019年11月

ITの可能性が満載のメルマガを、お客様への想いと共にお届けします!

Kobelco Systems Letter を購読