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2019年03月01日

デジタル化とものづくり⑥
~RPAからデジタルBPRへ~

日本ではRPA※1がこの2-3年、雨後の筍のように各社で導入されてきました。当初は金融業での大型導入が目立ったのですが、最近は製造業の導入が多くなっています。RPAはERPのようなアプリケーションを提供するのではなく、PCを使った定型業務を自動で処理します。企業内の受注・請求などのフロント業務、在庫管理、購買など生産業務、そして会計・人事等のバックオフィス業務など幅広い業務で使われています。製造業では生産ラインで製造ロボットが活躍していますが、RPAはデスクワークのロボットです。

RPAを導入する企業が急増した理由として、まず挙げられるのは、2018年より本格的に始動した働き方改革です。働き方改革で求められる残業時間抑制の対策として、RPAに目がつけられました。もう一つの理由は、高まるデジタル化への期待の中で、RPA導入に際しての敷居の低さです。他のデジタル技術に比べ、手軽に取り組め、それ程大きな投資も必要なく、しかも早く効果が得られます。このため現場や経営層主導で導入されるのもRPAの特徴です。

このように急速に利用されつつあるRPAですが、評価については意見が分かれます。例えばRPAで週10時間削減できると、現場レベルでは確かに残業抑制に即効性があり、将来の労働力不足の対策にもなります。このように定型業務削減には確実に寄与する一方、当初期待されたほどには効果が得られない、もっと幅広く適用できると思っていたが意外に適用範囲が限られる、といった評価が少なくありません。結局、部門の頭数は減らない、付加価値業務に人をシフトできないとなれば、投資規模はそれ程大きくないものの、RPAを本格展開するための費用対効果が成り立たないようです。

製造業においてRPAの適用が期待される業務は、基幹システムや製造ロボットでカバーされていない業務、システム化の費用対効果が出にくい業務が対象です。企業内にはシステム化されてない、メールや電話、文書、PCを使ったデスクワークが多く存在します。ところが、これらは雑多で小粒な業務の集まりで、RPAといえど簡単に適用できると限りません。

製造業のRPA適用が期待できる業務領域

図表1:製造業のRPA適用が期待できる業務領域

一般的に日本の企業では、欧米のように業務手順が標準化・明文化されず、現場各人の工夫や丁寧さ、暗黙ルール、柔軟性に頼っていることが多いです。しかも、この工夫や丁寧な仕事が、そのまま属人的な仕事となっています。また、一度決められた暗黙ルールは慣習化し、見直されなくなり、疑われなくなります。例えば、2つの部門で双方とも同じチェックを行っているケースや、受け付けた伝票を台帳に記載し、そのコピーを関係部門に配布していても、配布された部門では誰も見ることなく、部門内回覧・保管を継続しているようなケースが意外に多いのです。このように実態は、部門内では気付いていない業務の重複や無駄、非効率が社内に多く残っています。

上記のような業務の抜本的な見直しには、BPR(Business Process Re-engineering)が効力を発揮します。BPRの核心は、不連続的な思考の考え方、つまり時代遅れの慣習や非効率な暗黙ルールを認識し、これを捨て去るという考え方にあります。「業務プロセスを根底から再設計し、飛躍的な成果を達成するために最新の情報技術の力を用いる」というBPRを提唱したマイケル・ハマーの主張はデジタル技術においても有効です。従来の情報技術を用いたBPRに比べ、パワフルなデジタル技術を用いたデジタルBPR(図表2の右上)は、一層大きな価値をもたらすことが期待できます。逆に既存プロセスやルールを見直すことなく、デジタル技術に頼るだけでは、その効果や適用範囲は限定的になります。

情報技術 デジタル技術
見直しプロセス 従来のBPR デジタルBPR
既存プロセス 自動化
システム化
RPA導入
AI導入
図表2:デジタルBPR

BPRで肝要となるのは見直しの「幅」と「深さ」で、これはデジタルBPRでも変わりません。つまり、横断的業務プロセスを「幅広く」、既存ルールや役割まで「深く踏み込んだ」、見直しが求められます。また、デジタルBPRでは、RPAに止まらず、AIやAI-OCR、BPMといった最新のデジタル技術も併せた活用を検討していくことが必要です。デジタルBPRにより、効率化だけでなく、新たな顧客価値や差別化といった、デジタル化で本来求めるべき大きな価値創造につなげることができます。

企業が今後具体的にデジタルBPRへ進むに際し、大きく2つのアプローチが考えられます。まずRPA適用のスピードを活かしてクイックに効果を出した上で、その後デジタルBPRに取り組むアプローチと、最初からデジタルBPRで大きな成果を求めていくアプローチです。その狙い・対象範囲やスピード感に応じて、アプローチを採択していけばよいのですが、RPA導入を目的化することなく、デジタルBPRを見据えていくことをお奨めします。

※1:業務の自動化を推進 ~RPA(Robotic Process Automation)~
https://www.kobelcosys.co.jp/column/itwords/20170601/

2019年3月

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