2018年12月01日
デジタル化とものづくり③
~デジタル化の波で第4次産業革命を加速~
今やどの業界においてもデジタル化に取り組まれています。業界によってデジタル化のテーマは異なり、製造業におけるデジタル化の代表的取組といえば、第4次産業革命が真っ先に挙げられます。
図表1:各業界でのデジタル化の取組例
第4次産業革命については、このコラムでも3年前に「Industrie4.0」をテーマ※1に取り上げました。「Industrie4.0」はドイツで2011年に提唱された産官学連携プロジェクトで、その後の各国の第4次産業革命の先駆けとなります。続いて、アメリカではGE社など業界を挙げたコンソーシアム「Industrial Internet」が設立され、英国では21世紀型製造業に焦点を当てた「High Value Manufacturing」戦略が推進されています。これら欧米各国に加え、中国は「中国製造2025」という製造業高度化戦略で世界の製造大国となることを目指しています。このように世界の各国が第4次産業革命への取組を行い、その優位性を競うとともに、各国相互での提携や協力も盛んに行われています。このような各国の取組を受けて、日本でも日本版第4次産業革命の概念「Connected Industries」を打ち出し、様々な繋がりによって新たな付加価値の創出や社会課題の解決を目指しています。第4次産業革命は必ずしも製造業に特化した取組ではなく全産業を対象とするものです。とはいっても、各国の取組の背景や狙いを見ると、実質的には製造業に焦点が当てられていると言えます。日本で第4次産業革命が注目されだしてから、すでに3-4年経ちます。今回改めて日本の第4次産業革命の取組状況を、欧米各国との比較調査を参考にしつつ、考察してみます。
図表2:第4次産業革命への期待と取組割合(注1)
この図表2の縦軸は、第4次産業革命への取組度合いを、横軸は各国の企業が第4次産業革命の将来像に対する期待感を表します。図表を見ると、独英米と日本の位置に大きな隔たりがあります。独英米の企業は、第4次産業革命の将来像を前向きに捉え、大きな期待感を抱いています。また、独英米の7割近い企業が、第4次産業革命の対応に取組中もしくは取組済みとなっています。一方、日本企業は第4次産業革命の将来像に対し、まだ消極的で、第4次産業革命に取り組んでいる企業も約5割にとどまっています。このように、調査結果からは、日本企業の第4次産業革命に対する動きの遅さが浮かび上がっています。独英米が2011~2013年から第4次産業革命に取組始めたのに対し、日本企業がドイツのハノーバメッセ等を通して第4次産業革命の重要さを認識し、日本政府が成長戦略に組み込んだのは2016年度でした。このため第4次産業革命のインパクトについて、日本ではまだまだ腹落ちできていない企業も多いと思われます。
図表3:「最新技術は主要な差別化要因か?」への回答(注2)
次の図表3では、「最新技術は競争における主要な差別化要因になる」と、海外の企業の半数以上が考えるのに対し、日本の企業は2割強に留まっています。日本企業が第4次産業革命の対応に遅れているもう一つの理由は、長年のものづくりの成功体験をもつ日本企業の保守性にあると考えられます。ものづくり現場は新しい技術利用に関心はあっても、その効果については懐疑的です。新しいデジタル技術を活用した革新的な取組により大きな成果を出そうとする発想は、欧米企業に比べ出にくいと見ることができます。このままでは、積極的にデジタル技術に投資を進める海外企業との差が、さらに広がっていくリスクがあります。
図表4:第4次産業革命の実現効果割合(注1)
最後に、第4次産業革命の対応で実際に得られた効果の大きさに関する調査結果を見ると、コスト削減と売上増加のどちらの成果も、日本企業が独英米の企業よりも低くなっています。日本企業のデジタル化投資は製造工程の見える化などに偏り、設計開発やアフターサービスといった領域のデジタル化はあまり取組が少ないようです。製造業の付加価値はスマイルカーブで表せるように、製造工程よりもその前後の工程にデジタル化の焦点を当てる方が、より高い価値につながります。例えば、商品企画、研究開発、商品設計、最適利用、保守サービスといった領域をデジタル化することに力を入れることで、第4次産業革命の対応の成果を一段と高めることが期待できるでしょう。 このように日本の企業は第4次産業革命に後れをとっているのに対し、独英米各国のメーカーは第4次産業革命を着々と進めています。中国も第4次産業革命を急速に進めているようです。デジタル化の技術はさらに速く、安くなってきて、企業にとっても投資し易くなってきました。同時に、デジタル化の技術がもたらす効果も日本企業にとって分かり易いものになってきています。一方で、昨今は強力な手段となるデジタル化技術の利用方法に過剰に注目し、第4次産業革命で本来目指すべき姿や効果に関する見方が疎かになってしまうことは避けなければいけません。
日本の製造業がデジタル化の波に乗りつつ、第4次産業革命の取組を加速することを期待します。
注1:平成29年版 情報通信白書(日本企業は一般企業のデータを使用)
注2:デロイトグローバル 「第四次産業革命への対応準備調査」
※1:Industrie4.0の本質 ~本質を見極め戦略的対応を!~
https://www.kobelcosys.co.jp/column/monozukuri/378/
2018年12月
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