2010年08月01日
国際会計基準(IFRS)適用による製造業の管理会計と原価計算への取組み
前々回から引き続き、国際会計基準に関しまして、首件につき解説いたします。
今回は下記項目の1,2,3を対象とします。
1. | 国際会計基準(IFRS)導入による連結財務諸表を作成するまでの流れ |
2. | 管理会計強化のための会計情報システム構築のポイント |
3. | セグメント情報開示のポイント |
4. | 原価計算システム構築のポイント |
※IFRS(International Financial Reporting Standards)は国際財務報告基準のことですがメディアでは国際会計基準と呼ばれています。
1.国際会計基準(IFRS)導入による連結財務諸表を作成するまでの流れ
IFRSは会計の世界基準で、この基準を適用すると各企業の業績評価が公平に評価されるため、国内はもとより海外の投資家、金融機関、その他利害関係者の意思決定に重要な役割を果たすことになります。IFRSが適用されると、日本の各企業の管理会計や原価計算にも影響を与えることが予想されます。当面は上場している企業とその関係会社が対象となりますが、その影響としては現場の業務、情報システムの変更等が余儀なくされ、その対応が必要となります。
企業の各業務処理がかなり変わり、その業務情報を個別会計情報として収集し、財務会計、管理会計(セグメント情報、経営指標、予算管理を含む)及び原価計算ができるように工夫します。今回は、IFRSの導入で、管理会計に関する項目の内、重要なセグメント情報、原価計算情報について説明いたします。
2.管理会計強化のための会計情報システム構築ポイント
有形固定資産の会計処理で、減価償却費の計算は日本の税法を中心にして行われてきましたが、IFRSが導入されると、減価償却単位、耐用年数、減価償却方法及び残存価額の計算根拠を企業が独自に妥当性及び合理性のあるものを設定するとともにその根拠の説明責任を果たす必要があります。
1. | 複数元帳の必要性 |
グループの会計情報として業務規程を記述し、親子会社及びその関係会社のすべてを対象にIFRS基準を遵守させ、月次の経営指標、予算管理、原価計算資料等をタイムリーに作成します。さらに、各国の規則が違うため、独自の基準で、財務諸表は年毎にIFRS元帳を下に、税法用、会社法用などに変換し、作成します。この様な財務諸表を作成するために、複数の元帳の作成が望まれます。 | |
2. | 複数元帳の仕組み |
IFRS用の元帳だけを会計システムに設定し、日々の取引のたびに、IFRS基準で仕訳を記帳します。各国税法や会社法への対応が必要なタイミングで、各国基準への修正仕訳を入力し、各国基準の元帳を作成します。 |
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3. | 各種コードの統一 |
正確な情報収集のポイントとして勘定科目・国・ 部門・プロジェクト等のコードをグローバルに統一し、連結までのプロセスを正確に処理できる会計情報システムの構築が必要となります。 |
3.セグメント情報開示のポイント
2010年4月以降に開始される事業年度より、セグメント会計基準が新しい基準に改正されました。従来のセグメント情報では開示する事業の種類別セグメントをどのように区分するかは経営者の判断に任されていました。しかし新しいセグメント会計基準は経営者やマネジメントが経営のために利用している経営情報をベースに内容を開示しなければなりません。
*セグメント情報の事業種類の区分とは
1.製品の種類・性質、製造方法、販売市場等の類似性に基づき同種、同系列の製品分類毎に区分されます。
2.地域別としては北米、欧州、南米、アジア等とか、各国別等、その他分類に区分されます。
1. | 日本基準とIFRSの比較 | |||||||||||||||
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2. | IFRSの実施のポイント | |||||||||||||||
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3. | 国際会計基準(IFRS)の実施による業務システムの見直しポイント | |||||||||||||||
マネジメント・アプローチの採用によって、経営判断に使用している管理データが開示対象となり、財務データと管理データを同一のシステム内で実現することが重要となります。連結会計システムには管理機能として配賦機能、報告機能などの充実、セグメント変更や廃止事業が あった場合、遡及修正ができる機能が重要となります。これらを迅速かつ正確に実行するための連結会計システムは、例として下図のような仕組みとなります。 | ||||||||||||||||
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2010年8月
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