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2010年04月01日

生産管理システム構築の10ポイント ⑨
パッケージ活用における留意点

生産管理システムを新規導入または刷新するにあたり、システム担当者であれば「パッケージを活用するか」、「手作りとするか」の選択を一度はされたことがあると思います。
パッケージを活用する目的しては業務改革、短期間導入、開発費用削減等が挙げられます。
パッケージの選択、導入方法を間違うと期待通りの効果が得られないことがあり、最悪の場合は「動かないコンピュータ」となって業務に支障をきたすこともあります。
生産管理システムのパッケージはメーカー系、ソフトハウス系と数多くのものが市販されており、パッケージの選定を行う場合はその中より自社にフィットしそうな、いくつかのパッケージを選択し、最も適応しそうなもの決定することになります。
パッケージ選定にあたり開発元または代理店からの説明、デモ、提案を受けてますが、短期間に全体を理解することは困難ですし、販売元からの売り文句をそのまま鵜呑みにもできません。
それではどのようにしてパッケージの候補を選定したらよいでしょうか?

「自社にフィット」の1つの考え方としてパッケージをカスタマイズしなくても物の管理ができるという選択の観点があります。物とは原材料、仕掛品、製品のことを指しており、物の管理は生産管理システムのあらゆる機能に関連しています。従ってこれをカスタマイズすることはシステム全般をカスタマイズすることになります。業務機能に関しては数多くの導入実績のあるパッケージであれば不足機能はそんなに多くはないと思われます。

製造業の生産管理の形態は組立系、プロセス系の2パターンに大きく分類され、パッケージについても組立系に適しているものとプロセス系に適しているものとがあります。しかし、大半のパッケージは組立系の製造業をターゲットとしたものです。理由として組立系の製造業が多いこともありますが、組立系の製造業は物の管理および業務機能が類似しており、システムのモデル化が容易なことが大きな理由です。
従って、組立系の製造業では大きなカスタマイズなく、パッケージを導入ができることが大半です。

以上のようなことから機械、電機、電子機器等の組立系の製造業では生産管理にパッケージを活用している企業が多く、鉄、食品、化学等のプロセス系ではパッケージの適用が少ないようです。ここでパッケージを活用した場合にカスタマイズした部分の事例を下記に列挙しています。
なお、下記表の製造管理と品質管理については生産管理システムの範囲外と考えられ、生産管理パッケージには含まれない場合が多いです。

システム カスタマイズ箇所 カスタマイズ概要
受注管理 受注項目 パッケージに多くの項目があり、名称のみを変更して利用して対応。項目追加した例があるが、件数は少ない。
特に、品名については体系、運用面を含めた検討が必要。
内示処理 内示→確定受注の処理および内示残管理の機能追加。
製品在庫引当 在庫品出荷の場合に在庫引当機能がない場合に機能追加。
受注入力方法 一品受注入力のみのため、一覧入力形式の入力追加。
EDIからの受注データの取込機能の追加。
基準情報管理 製造標準
(部品表含む)
組立系ではほとんど変更がない場合が多いが、当コラムのポイント2で説明したような部品表の機能追加の実績あり。
装置系については一部を利用する程度であり、機能追加が多い。
PDMとの連携 PDMの管理するCADデータをベースとした設計部品表と連携し、製造部品表の作成を支援するなど機能追加が近年増加している
製造管理 製造指示 製造指示書および工程指示書は新たに作成することが多い。
製造実績 ・製造指示単位に一品毎の入力となっている場合が多く、複数入力またはハンディ端末利用等のカスタマイズあり。
・実績項目は通常、完成数量、作業時間、使用材料があるが、ユーザーにより標準値とする場合がある。
不良品発生の場合、処置、要因の項目追加する場合がある。
進捗管理 パッケージ機能としては一応あるが、ユーザーにより要求が異なるため、一部適用できても機能追加する場合がある。
購買管理 発注処理 ・内示、引取指示がある場合はカスタマイズ。
・発注をFAX、EDIで行なう場合は機能あり。
・注文書は新たに作成するこが大半である。
仕入処理 ・パッケージに単価未決定の機能がない場合、機能追加あり。
在庫管理 入庫処理 ・パッケージは製品入庫する場合が多く、製造実績により自動入庫するようにカスタマイズする場合あり。
・原材料入庫については一応画面入力はあるが、ハンディ端末を利用して入庫する機能を追加することがある。
在庫照会 有効在庫、予定在庫を含めた在庫照会の機能追加および時系列で在庫照会の要望あり。
在庫評価 原材料の在庫評価は標準的であるが、製品在庫評価は製品原価を使用する場合があり、この部分はカスタマイズしている。
在庫処置 廃却、品名変更、保留等の処置についてパッケージ機能にない部分についてのカスタマイズ。
棚卸 画面入力からハンディ端末利用に変更あり。
その他 製品ラベル、材料ラベルの発行機能を新たに追加する場合あり。
出荷管理 出荷計画 出荷計画のないパッケージが多く、必要であれば機能追加する場合が大半である。
出荷指示 パッケージは出荷対象を選択してピッキングリストを出力する程度のものであり、画面上で出荷指示する場合はカスタマイズが必要である。
出荷実績 ・出荷実績入力はあるが出荷指示との連携はカスタマイズ必要。
・ハンディ端末を利用する場合、機能追加が必要。
・納品書はパッケージ利用が難しく新規追加になる。
品質管理 全般
(機能がない場合多い)
パッケージには合格・不合格のみであり、機能はないに等しい。
検査実績、検査成績表があれば追加機能となる。
検査管理専用の別売りパッケージがあり、必要であればそのようなものを活用してもよい。
全般
(ユーザーにより異なる)
・組立系は一部適用可能であるが、装置系は適用が難しい。
積上による原価計算は適用できるが、配賦計算の部分はカスタマイズすることが多い。
・一応機能はあるが、ユーザーにより原価計算方法が異なり、他サブシステムと比較するとカスタマイズする箇所は多い。

この事例は1企業にパッケージを導入した事例ではなく、過去に導入した数多くの生産管理パッケージよりカスタマイズ部分を集約したものです。現在、パッケージを活用して生産管理システムの構築をご検討されている企業が多くなっていると同時にパッケージも多く種類があります。パッケージ活用にあたり最もフィットしたパッケージを選択され、業務改善に寄与できることをご期待いたします。

2010年4月

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