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2009年11月01日

生産管理システム構築の10ポイント ④
複数工場対応における考慮点

製造業では生産拠点を複数もち、製品種別、顧客の地域性等により生産場所を決定している企業が数多くあります。このように生産工場が複数存在する企業における生産管理システムはどのようにしているかについて考えてみます。
下記図は複数工場がある製造業の業務処理の課題についての例です。

複数工場における各業務の関連

複数工場における各業務の関連

複数工場の生産管理システムの考慮点

項目 考慮点
受注管理
  • 複数工場がある場合でも受注管理は共通システムにすべきである。
    →営業の受注入力時に製造工場を決めるのではなくシステムが製造工場を決定する。
  • 製品により工場が決まる場合は受注時にきめておくほうがベターである。
    (受注時に工場が決定→ 納入地域により決定、製品により工場決定)
  • 複数工場で同一製品の製造が可能な場合は負荷を考慮して決定する必要がある。
    →生産計画(工場振分)により工場決定するが、ある時期には確定することが必要。
    (原材料の発注→入庫場所との関連あり)
  • 在庫引当による出荷はどの倉庫、工場の在庫を引当するか定義が必要。
    →在庫引当は営業で引当? 在庫管理部門で引当?
基準情報管理
  • 複数工場に対する工場・工程をコントロールするための重要情報であり、生産計画、 工程管理の特性に合わせて設定することが必要である。
    →複数工場で製造可能な製品の場合の工程設計
生産計画
  • 工場決定の手順は
    1.製造工場がユニークな製品の工場決定
    2.製品毎に優先の高い工場の決定(納入場所を考慮するか?)
    3. 2の決定工場に対して工程負荷により工場調整(自動調整・人的調整)
  • 計画は工場間の関連がない場合は工場単独で処理することがシンプルである。
    工場関連がない→工場で製造する品種が確定し、工場間の工程連携がない。
  • 複数工場を一括した生産計画システムの構築はロジック的にも難しく、各工場毎にユニークな工程を設定し、1工場の如き処理と考えれば簡単になる。
  • 一括して計画する場合は計画タイミングの調整が必要
所要量計算
購買管理
  • 購買が一括の場合は全工場分のMRPを一括して処理する必要がある。逆に工場個別に購買を行なう場合はMRPは工場単位に行なう。
  • 同一品目の購買において発注先が納入工場毎に異なることを考慮すること。
  • 発注単位=納入単位であればその考慮が必要。
出荷管理
  • 出荷場所が決まらないと出荷処理できない。
    →在庫引当出荷の場合はどの工場・倉庫の在庫かを決定すること。
    →製造出荷の場合は製造工場かを決定すること。
その他
  • その他のシステム機能に関しては工場のキーは必要であるが、システムとしては共通にできる。

複数工場の生産管理システムを設計するにあたり主な考慮点を記載しましたが、企業により考慮点が異なることがあり、その点について企業の業務形態に合わせて検討して頂きたいと考えます。
共通的に言えることはシステム運用・機能面から見て「全社共通的なものとするか」、「工場独自のものとするか」ついてよく検討してシステムを設計することです。
また、複数工場の生産管理システムの構築を行なう場合、複数工場のシステムを同時に稼動させると混乱を生じることが想定されます。
システム化要件は全体を把握する必要がありますが、開発段階はモデル工場のシステム構築を行い、安定稼動に入った段階で他工場に横展開していくことがベターと考えます。

注:MRPとはMaterial Requirements Planningの略で資材所要量計画のことです。

2009年11月

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