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2008年10月01日

海外拠点の見える化

今回は、海外で製造を行っている会社を例に、“海外拠点の見える化”について考えてみます。

製造業における海外進出は、大きく販売拠点と製造拠点に分けられます。販売機能のみの拠点は多くあり、工場などの製造拠点を増えつつありますが、昨今では製造に加えて、受注や販売などの機能を併せ持つことが増えてきました。そのため、「見える化」がますます複雑になってきています。

最近、”見える化”という言葉をよく耳にしますが、お客様と話していると、経営者と担当者の意識の違いを感じる事が多々あります。

海外拠点を覗く工場長1つ目は、私達が時々目にする日用品のパーツを作る、中堅製造業様のケースです。 納入先が海外進出するのに伴って、香港に海外工場を建て、海外進出をされました。その後、タイ、インドネシア、中国本土にも展開しておられます。これらの工場は受注機能も持ち、直接パーツを納品しています。設備自体は大規模なものではありませんが、小ロット化が進み、製品数もしだいに増えたため、日常のオペレーションが複雑になってきています。

そんなある日、その会社の専務から「最近、海外のことがわからずに、心配だ」と相談を受けました。 実際、これらの工場は利益も出しており、会社経営に悪影響を与える状況ではないのですが、とても心配しておられました。海外工場とのやり取りは、海外担当の責任者を通して行われていました。

そこで私は、海外担当責任者に「○○専務が“海外工場の状況が見えにくい”と心配しておられましたよ」と話すと「自分がきっちり把握しているので大丈夫です」とおっしゃいました。日常的に必要な情報、例えば受注残や、前日(前月)出荷数、クレーム内容などは、海外担当責任者が現地にメールで状況を確認しています。

海外担当責任者は、「聞かれたらすぐに現地に問合せて答え、包み隠さず報告する」という姿勢で、実際、専務からの問合せにもきちんと答えているようです。従って、海外責任者の方にとって、海外拠点は「見えている」ということになります。しかし、経営者の心配は消えません。

2つ目は、産業用パーツや製品を製造している比較的大手のお客様のケースです。 海外工場はまだ2ヶ所ほどで、製造全体に占める割合は小さく、また、ほとんどノックダウン生産(主に日本から部材を送り、現地では組立てのみを行う)を行っています。

受注は日本側で処理し、日本で製品を製番単位に梱包し、現地に送ります。工場担当者からすれば「何も問題ない」状況です。しかし、現地での組立ては日本ほどの熟練工がいるわけではないので、若干の工程管理が必要になり、納期管理も日本ほど正確には行われていません。現地の日本人工場長はこういった状況でもこれまでの経験と自分のパソコンを生かして何とか乗り切っています。まだ扱う量も少ないので、大きな問題も起きていません。しかし経営者はこの状況に満足できないのです。「現地組立完了の納期がわからない」「現地工場で次に改善すべきことがわからない」など、様々な不安がよぎります。

そもそも、経営者と日本側工場担当者、現地工場長には基本認識で大きな違いがあります。 経営者は「今後、海外生産量を増やすことが会社存続に必要だ」と考えており、現地工場長は「今何とかなっているから問題ない」と考えています。経営者には「現地での受注を増やしたい」「現地調達も増やしたい」「工程管理、出荷管理、品質管理も現地で行えるようにしたい」と、実現したい様々なビジョンがあります。有効な施策を取るために“海外拠点の見える化”を急いでいるのです。現地工場長でもまだこういった考えは薄く、現状の業務をうまくこなすことが中心になっています。

上記のように、同じ会社内であっても、立場によって海外拠点に対する思いは様々です。従って、“海外拠点の見える化”も、その答えはおのずから違ったものになってきます。こういった状況で私達システムインテグレーターはどのような解決策をお客様に提示できるのでしょうか。

次回は、海外拠点と日本でやり取りされていた情報を整理し、“海外拠点の見える化”に取組んだ事例について説明します。

2008年10月

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