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2008年09月01日

製造業における「トレーサビリティ」について(その3)

5.「トレーサビリティ」の仕組みを構築するメリット

前回製造業における「トレーサビリティ」のポイントについてご説明しましたが、それに基づいた製造業の業務イメージを整理しますと、図.5のようになります。
設計から出荷にいたる各業務プロセスにおいて、使用される「現物」や生み出される「現物」と生成される「情報」がきちんと管理され、紐つけられている仕組みが維持されていることが重要となります。

トレーサビリティ実現の業務イメージ
図5.トレーサビリティ実現の業務イメージ

特に「製品構成の追跡管理」を確実に実現するためには、設計部門を支援するシステムと製造部門を支援するシステムとの連携強化が必要になります。各社の実情によっては、既存システムそのものの強化が必要になる場合も生じるでしょう。
このように、「製品構成の追跡管理」と「製品流通の追跡管理」とが連動した一気通貫性のある製品追跡管理の仕組みである「トレーサビリティ」を構築し維持して行くことは、手間も費用もかかります。
果たして、製造業にとってメリットがあるのでしょうか?これまで品質問題の観点からのみお話してきましたが、ここでそのメリットをまとめてみましょう。
メリットとしては、多々ありますが、下記に主要な点を上げます。これらのメリットが、これから「トレーサビリティ」の構築をご計画されている皆様のご参考になれば、幸いです。

1. リスク強化管理
識別用記号を表示することにより、消費者に危険を及ぼす可能性のある欠陥製品の回収を短期間で行う事ができます。しかも最少の費用で。
2. 欠陥防止対策支援
欠陥製品の回収という事態が生じるという事は、検査段階でのコントロールが適切に行われなかった事も示します。今後の解決策を見出す為にも不具合の原因を徹底的に追求する必要があります。そのための情報収集のための検索手段としても有効です。失敗から学ぶことは、何事につけ非常に大事なことです。
3. 品質意識の向上
製造工程において、中間工程を疎かにし最終工程である製品出荷という結果に満足しているだけでは、製品品質の低下、企業士気の低下、さらには競争力の低下を招きかねません。製品の製造工程が追跡できるという事は、中間工程における責任を明確化することとなります。さらに、不具合要因のさらなる検索・分析が可能となり、対応策としての改善が促されることとなります。製造工程全体での品質意識の向上が図れます。
4. 企業イメージの向上
お客様は安全性のより高いものを求められています。「トレーサビリティ」の仕組みを構築し、維持しているということは、お客様に安心感と信頼感を持っていただくことができ、安心・安全に配慮した企業として、企業イメージは向上されます。また環境負荷物質、危険物、貴金属等の含有情報の追跡管理も可能になるわけですから、現在企業にますます求められているリサイクル・リユース等の社会的責任も果たすことができます。
5. 顧客管理の強化
製品の最終顧客である消費者や納入先の情報が入手できるわけですので、顧客情報、商品購入傾向のデータ蓄積が行え、きめ細やかなマーケテイングにより顧客層に応じた製品開発や顧客層の絞りこみ等ができます。

これらのメリットを図示したものが、図6です。

「トレーサビリティ」のメリット
図6.「トレーサビリティ」のメリット

2008年9月

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