2024年07月01日
今夏の甲子園、「朝夕2部制」の導入へ
~社員の健康と安全を守る働き方~
今年も高校野球の地方大会がスタートし、8月7日から甲子園球場で第106回全国高校野球選手権大会が開催されます。毎年、夏の風物詩ともいえる甲子園大会ですが、今夏は大きな改革となる「朝夕2部制」が試験的に導入されることになりました。
もちろん、これはずっと懸案となっていた酷暑対策。暑さのピークとなる昼間の時間帯を避け、朝夕の比較的涼しい(暑くない)時に試合をするものです。
そもそも大会期間中は気温が35度を超える日が多く、高温注意報など屋外での運動を自重するよう警告されている中で大会は行われています。加えて、選手だけでなく応援団や吹奏楽団、応援席に座る保護者や高校生もまた熱中症の危険にさらされているのです。
日本高野連は今夏の「朝夕2部制」に関するデータを基に次の段階へ進むとしています。是非、選手のみならず応援席の生徒などの健康状態もデータ化して、早く大会全体が健康リスクの少ない状態になって欲しいと思います。
職場における暑さ対策はどうでしょうか。すでに「クールビズ」という言葉が生まれてから20年近く経とうとしています。当時は省エネやCO2削減を目的として、政府が大々的に「ノーネクタイ・ノージャケット」のキャンペーンを展開、「クールビズ」を実施する期間までも全国一律に設定されました。その後、新型コロナによりリモートワークが急増、ビジネスの現場においても定着が進み、2021年には全国一律の期間設定は廃止され、企業に一任されることになりました。
また、「時間帯をずらす」という観点では、電車が最も混雑する時間帯を避けて通勤する「オフピーク通勤」という取り組みも近年話題になっています。平日朝の通勤客数がピークになる時間帯よりも早く、もしくは遅く出勤することで「満員電車」を避けることができます。JR東日本は通常の通勤定期券より割安に設定されたオフピーク定期券を販売、「オフピーク通勤」の普及に力を入れています。
「働く」ことに関する価値観は世代によって違います。コロナ禍以降、時間や場所の制約を受けずに自宅などで柔軟に働くテレワークが広まり、「全員が同じ時間帯に出社して働く」必要性に疑問を持つ社員も増えています。服装についてもそうです。 昔は、会社支給の制服やスーツにネクタイ着用といった企業で統一されたルールが、仕事中の「ドレスコード」として定められていましたが、時代とともにその必要性が問われ始めています。
少子高齢化で労働人口が減少する中、若い世代の社員が実際に育児や介護などに直面しても退職せずに仕事を継続できる、柔軟で多様な働き方を整備することが日本の企業に求められていると考えます。
さて、「朝夕2部制」を浸透させるためは、連日甲子園に足を運ぶ熱心な高校野球ファンに認めてもらうことも重要になってきます。これまでは一度入場すれば終日、全試合観戦できたチケットが、午前と午後の完全入れ替え制となり別々に必要となります。また、観客の入れ替えに最低でも2時間半のインターバルを確保するため、その間は球場の外で待つという不便を許容してもらわなければなりません。
ビジネスの世界でも同じく、例えば顧客に直接対応する営業や接客窓口は、顧客の価値観に合わせた「定時出社」や「ドレスコード」が必要になってきます。そのような職種の方々でも柔軟な働き方ができるようにするためには、当然、顧客の理解が必要です。
注意すべき点は、顧客がアクセスできる時間帯やそこで目にする従業員の服装は、そのまま企業イメージにつながるということです。周囲にどのような企業イメージを持って欲しいかを定め、それを意識した社内規程の改定と社外へのPR活動を通して顧客に理解を促すことが、柔軟な働き方の推進には不可欠なのです。
これからも新型コロナのような未知の感染症や大規模自然災害など事業継続の危機は訪れることでしょう。経営者として大切なのは、過去の経験をもとに育んだ考えや価値観に固執せず、時代の変化に応じた多様な働き方を認め、何よりも社員の健康と安全を守る働き方を模索し続けることだと考えます。
ライター
代表取締役社長
瀬川 文宏
2002年 SO本部システム技術部長、2008年 取締役、2015年 専務執行役員、2017年3月より専務取締役、2021年3月代表取締役社長に就任。現在に至る。
持ち前のガッツでチームを引っ張る元ラガーマン。
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