社長通信 社長・瀬川文宏が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2021年07月01日

東京五輪がもたらすもの
~子供たちのロールモデル~

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東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京五輪)の開幕まで1か月を切りました。現時点においても開催の是非や観客の有無についての議論は尽きません。
巨大なオリンピックマーケットと国内経済のカンフル剤、世界平和と国際親善、スポーツを通じての青少年の教育など様々な期待や思惑が渦巻く中、オリンピックのためなら何事も許される、そんなオリンピック至上主義だけには陥らないでほしいと、今は願うばかりです。

ワールドカップを頂点とするサッカーや15人制ラグビーなど一部を除き、ほとんどの競技で五輪は世界一を決める大会として位置づけられています。多くのアスリートは子供のころに五輪を見て感動し、五輪選手に憧れて競技を始め、五輪への出場、そして五輪で金メダルを取ることを目標に努力を続けてきました。
スキーのノルディック複合で今や日本のエースとなった渡部暁斗選手は、9歳の時に地元・長野で行われた冬季五輪のジャンプ団体を生観戦。金メダル獲得で日本中が歓喜した瞬間の興奮を忘れられずジャンプを始めました。
また、平昌五輪で日本女子スピードスケート史上初の金メダルに輝いた小平奈緒選手も「長野五輪で輝く清水(宏保)さんや岡崎(朋美)さんが見ていた景色を今度は私が見てみたいと思った」と憧れのヒーロー、ヒロインの名前を挙げて目標としていたことを明かしていました。

憧れの人というのは、「このようになりたい」と思うからこそ憧れの人であって、それはつまり自分にとってとても具体的な目標になります。ある調査で、ハーバード大学のMBA生に「将来の目標」を聞いたところ、実際に文書にしていたのは全体の3%の人たちだけだったそうです。目標はあるけど文章には書けない人が13%、残り84%は具体的な目標を一つも持っていなかったという結果でした。そして調査から10年後、その3%の人たちの平均年収は13%の人たちの2倍、84%の人たちの10倍にもなったそうです。(※)
年収が指標として適切かどうかは別にして、目標をより具体的に明確に捉えることができたかどうかが、その後の成果、成長の差につながったのではないでしょうか。

この7月、当社では新入社員が集合研修を終え、各部署に配属されます。彼らが成長していくためには、何より目標の設定が肝要だと考えています。しかしながら、新入社員の中で自分の目指す姿、目標を具体的に書ける人はごく少数ではないでしょうか。
一方、職場で「あの人のようになりたい」と思う人、すなわち「ロールモデル」を見つけることができれば、その人に近づきたいと明確な目標を自ら掲げることが比較的容易にできると思います。そして、具体的なアクションがすぐに見つからなくても、その人に少しでも近づくための動機が芽生え、潜在能力がどんどん引き出されていくことでしょう。
ただ、そこにはモデルの母数となる先輩社員の質や量という課題があります。自分に合ったロールモデルを配属先など限られた環境では見つけられない可能性もあり、その結果、今の環境では目標が持てないので仕事を変わりたいと悪い方向に進んでしまうかもしれません。
そうならないためにも、成長を期待する若者に対して、組織の枠を超えて、なるべく多くの輝いている先輩社員と接する機会を作り、ロールモデルを見つける手助けをすることが、組織のリーダーの大きな責務だと思います。

観客数の上限とは別枠で首都圏の子供たちが五輪観戦できる「学校連携観戦プログラム」という企画がありますが、すでに多くの自治体や学校が参加中止を決めているようです。
「子供たちに感染リスクを高めるような行動はさせられない」、「テレビ観戦で十分」という声は当然ですが、私見を述べさせていただくと、国を挙げて感染予防対策を十二分に施したうえで、なるべく多くの子供たちに生で観戦してもらいたいと思っています。

東京五輪を通じて、輝きを放つトップアスリートのみならず、大会スタッフやボランティアなど世界を相手に頑張っている様々な人たちと日本の子供たちが接することで、憧れの「ロールモデル」を見つけ、近い将来、世界に向けて羽ばたいていくことを望んでやみません。

※:「マーク・マコーマックのマンビジネス」(マーク・マコーマック著)

2021年7月

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