社長通信 社長・瀬川文宏が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2020年12月01日

運命を切り開く(Control your destiny)
~未来は予測するのではなく、自ら創るもの~

フィヨルド

今年もあっという間に12月、年齢を重ねる度に1年の短さを感じます。今年はコロナ禍に振り回された1年となりましたが、ここにきてワクチン開発の進捗も見え始め、米国大統領選の結果が好感されてか株価や景気も上向きつつあり、2021年はリバウンドが期待できそうです。株価や景気だけでなく来年はこうなる!といった予想、予測が年末年始には様々なメディアを通して目に入りますね。多くの企業もこの時期にグローバルや国内の景気動向を加味した市場予測を基に事業戦略や次年度予算を立案しています。今回はそこで将来の予測に関して取り上げます。

企業の事業戦略は景気や市場動向、需要予測などをもとに立案されますが、DXイノベーションなどで環境変化の激しい昨今では、ある程度正しく予測できるのはせいぜい半年先くらいまでではないでしょうか。日本経済のGDPも3年先の成長がどの程度か誰もわからないですね。もっともDX以前からも将来予測は困難であり、25年ほど前に花王株式会社の元社長・会長であった常盤文克氏の講演を拝聴したときに「将来を予測することは労多くして実りが少ない。それよりも変化に気付いてから、いかに素早く対応できるかの方が重要。花王はそのリードタイムを短くする事に注力する」とメッセージされた事を今も強烈に記憶しています。これは予測ではなく事実を基にした変化対応力ですが、ある意味で究極の市場予測対応であると言えます。

とはいえ企業が持続的に成長するためには長期的視野での将来予測は不可欠とも言えます。不確実性が高い今、未来を読み切る事は困難ですが、起こりうる未来を想定して戦略的に未来をマネジメントする方法としてシナリオプランニング、バックキャスティング、コンティンジェンシープランニング、トレンド分析などいくつもの技法が提案されています。特にシナリオプランニングは起こりうる複数の未来の姿を前提条件や変化ドライバーを基に探る技法で、企業や行政で戦略に役立てた事例を多く提供しています。バックキャスティングはある特定の未来を起点に現在を振り返り、現状何が特定の未来に影響するかを割り出します。経産省のDXレポート「2025年の崖」はこの技法を使っていますね。コンティンジェンシープランニングは先々に起こりうる特定の出来事(例えば、地震、パンデミックなど)に対する備えを促すことによって意思決定を支援する、緊急時対応策を策定する技法です。これもうまく使えば東日本大震災やコロナ禍の対応にも役立ったのではないかと思いますが、想定外の事象が多々発生しました。やるせない気持ちになりますが、それほどに将来予測とは難しいのでしょう。

「パソコンの父」と称されるアメリカの計算機科学者であるアラン・ケイ氏は、「未来を予測する最善の方法は、それを発明する事だ」という名言を残しています。これは一方での究極の未来予測ですが、これを具現化した成功者、企業の事例も内外に多くあります。ビル・ゲイツ氏(MS)やスティーブ・ジョブズ氏(Apple)、ジャック・ウェルチ氏(GE)、日本でも孫正義氏(ソフトバンク)や柳井正氏(ユニクロ)、永森重信氏(日本電産)など。彼らは特別な才能や先見の明のある、言わば「持っている人」なのでしょう。そんな彼らでもすべてのアイデア、発明が成功したわけではなく、いくつもの失敗を乗り越えて現在の人類の発展に貢献する事ができたのだと思います。柳井さんは「10回新しいことを始めれば9回は失敗する」と言われています。世の中に無いものや不足、不満に気づき、それを大きな発想で未来を描き、自分で実現しようとする行動力があってこその未来実現なのでしょう。文章にすると簡単ですが、誰もできない事をやってのけたからこそ成功者になれたのです。残念ながらIT産業の未来は米国に牛耳られている感がありますが、日本も製造業やサービス業で人類に貢献できる未来をつくって欲しいものですね。

ところで上記事例の一人であるGEの元CEOでカリスマ経営者として有名なジャック・ウェルチ氏の名言の一つに「Control your own destiny or someone else will.」があります。「自分の運命は自分でコントロールすべきだ。さもないと、誰かにコントロールされてしまう」、という意味ですが、企業の運命も企業人としての一個人の運命も併せてのメッセージと捉えられます。私は30代半ばでIBMのマネジメントになったころ当時の所属長にこの名言を教えてもらいました。振り返れば、それ以来自身のキャリア形成の中で常にこの言葉を意識してやってきたように思います。40歳になる頃にこの言葉を強く意識して自身のキャリア形成を考えた時期があり、そこでセールスキャリアだけではなくコンサルタントとしてのキャリアを積みたいと思い、当時の上司と相談し42歳で遅きに失したキャリアチェンジをしました。周りは同僚も家族も驚きましたが、自分の中ではキャリアを自ら切り開く、という思いがあったので四十の手習い修行もそれほどつらくはありませんでした。そして、それが結果として現在の仕事につながっています。「人間万事塞翁が馬」ということわざがありますが、人生の幸不幸の都度の事象に一喜一憂せずに、苦境にあっても前向きに捉える姿勢を心掛けて自分のキャリアを形成してきました。人生はケセラセラ(なるようになるさ)だと思っていますが、ある程度とは言えControl my destinyができたのはジャック・ウェルチ氏のおかげかもしれません。

2020年12月

ITの可能性が満載のメルマガを、お客様への想いと共にお届けします!

Kobelco Systems Letter を購読