社長通信 社長・瀬川文宏が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2017年10月01日

家族的経営とダイバーシティ

ダイバーシティ

天高く馬肥ゆる季節になりました。今回は家族的経営について述べたいと思います。先月、社員およびその家族と一緒に、当社の30周年記念イベントを開催しました。当社では毎年ファミリーイベントを行っていますが、今回は東京ディズニーシー、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンと有名なテーマパークで実施したこともあり、例年の倍の人数が集う賑やかなイベントになりました。社員もそのご家族の皆さんも、30周年をともに喜んでもらえたと思っています。あわせて当社の一員であることに喜びや安心、誇りを感じてもらえれば何よりのことと思います。それが今回のテーマが浮かんだきっかけです。

家族的経営は、これまで日本的経営の強みの象徴のように言われてきました。経営者、従業員そして取引先企業がファミリーとして一体感を有し、自分たちの会社として愛することで社員のロイヤリティを醸成します。経営陣は社員を家族として終身雇用で面倒をみて、社員は会社を自分の家と捉えて大切に磨き、自主的に生産性を向上させてきました。そして業務のすき間を埋めるチームワークができ、組織力を高めてきたことで日本企業の競争力は、P.F.ドラッカーなど欧米からも評価されてきました。

当社は日本IBMと神戸製鋼をルーツにしています。外資であるIBMの創業者トーマス・ワトソンJrも実は家族的経営を標榜し、個人の尊重を理念に挙げて、社員や人材育成をとても大切にした経営をしてきました。当社のファミリーイベントも90年代の日本IBMのイベントを参考にしています。また神戸製鋼は、日本の製造業の典型的な一社であり、労使協調の経営で従業員を大切にしてきました。この両社のDNAを引き継いでいるので、当然のように当社も家族的といって然るべき経営をしてきました。
その結果、上述のような社員ロイヤリティ、組織力、競争力の高い会社に成長してきたと自負しております。毎年、社員満足度調査を実施しているのですが、そのスコアも高いレベルを維持できています。

この基本的な家族的経営スタイルは、これまでの成長期には良かったのですが、今のデジタル革命の時代、少子高齢化社会に入る時代には少し合わなくなってきている部分もあります。たとえば第1に人材不足、とりわけIoTやAIなどデジタルビジネスをリードする高度で専門的な人材の不足が、当社も含めて企業にとっては深刻な問題です。そういった人材は終身雇用や家族的な長期人材育成を必ずしも求めていません。このような人たちは、会社から認められ、尊敬されることに誇りとやりがいを感じ、応分の処遇を求めるので、それに即した人事制度が必要になってくるでしょう。

第2には、少子高齢化の対応として、女性やシニア人材の活用が重要になってきますが、家族的経営はともすれば居心地の良い、ゆるい、甘えの余地のあるものに陥る可能性を含んでいます。例えば、流して働くようなベテランがいると組織自体が緩みます。それらの懸念点を乗り越えて、女性やシニア人材を有効に活用するしくみ、具体的にはeワークや時短勤務、役割・パフォーマンスに応じたメリハリのついたシニア処遇などを制度化する必要があります。
加えて人材不足の対応には外国人の活用があります。彼らの中には最終的には自国に戻り成功したいという希望を持っている人がいますので、それを尊重したしくみも必要です。

第3には、家族的経営はそのロイヤリティの高さが社員の奉仕を暗黙に促し、長時間労働や会社イベントへの強制参加などの負担を社員に強いる懸念があります。昨今の働き方改革の潮流はこの問題に対する取り組みでもあるでしょう。

家族的経営は一つの経営手法であって、本来解くべきお題は「社員が企業でやりがいを持って最大のパフォーマンスを引き出す経営手法とは何か」ということではないでしょうか。
では、今の時代に即した社員に向き合う経営手法とはどういうものでしょう。私は、一番の基本姿勢は「社員を大切にする、尊重する」ということだと考えています。社員の優劣が企業の優劣に直結することは議論の余地もありませんが、特に当社のようなサービスを生業とする会社は社員の質・パフォーマンスが企業競争力のすべてと言っても過言ではありません。

これは普遍的なことですが、今の時代がこれまでと違うのは必要としている社員が多様化していることです。多様化も性別や年齢、国籍だけではなく、仕事やプライベートの価値観も様々です。この多様化(ダイバーシティ)した人材を個々に大切にし、尊重するしくみは簡単にはできませんが、当社で働くことを通じて社員が幸せになれるなら優秀な人材は自ずと集まってくると思います。「社員が誇りを持てる会社」を当社の長期ビジョンの中で実現しようとしているのですが、これ一つをとっても、「私は世間から見て良い会社に勤めている」という誇りを持ちたい社員もいれば、「私は会社から良い仕事ができる人だ」と認められることを誇りに思う社員もいます。

このような多様な社員が幸せになれるよう、家族的経営の普遍的な良さは維持しつつも、時代に即した新たな制度を構築することで、多様な人材の確保・育成を図りたいと考えています。その上で、社員全員で経営を担うようになりたいものです。

2017年10月

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