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2012年07月01日

会計方針の統一

会計方針(会計処理の原則及び手続)については、連結会計上でグループ間の統一が求められています。しかし、会計方針の統一は連結会計上だけではなく、グループ経営管理にとっても重要です。異なる尺度によりグループ経営管理がなされれば、グループ各社の比較可能性が低下するとともに意思決定の効率性が害されることがあるかもしれません。
今回は、会計方針の統一についてまとめていきたいと思います。

会計方針の統一に関する規定

子会社の会計処理について「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号)においては、以下のように規定されています。

連結財務諸表を作成する場合、同一環境下で行われた同一の性質の取引等について、親会社及び子会社が採用する会計処理の原則及び手続は、原則として統一しなければならない。
「連結財務諸表に関する会計基準」第17項

具体的には、「親子会社間の会計処理の統一に関する当面の監査上の取扱い」(日本公認会計士協会委員会報告第56号)おいて、「統一が求められる項目」と統一することが望ましいが、必ずしも「統一が求められていない項目」に分けて以下のように規定されています。

<統一することが求められている項目>
  • たな卸資産の評価基準
  • 営業収益の計上基準
  • 繰延資産の処理方法
  • 引当金の計上基準
<統一することが求められていない項目>
  • たな卸資産の評価方法(先入先出法、総平均法など)
  • 有価証券の評価方法(移動平均法など)
  • 固定資産の減価償却の方法(定額法、定率法など)

在外子会社の会計方針の統一

在外子会社において現地会計基準と日本基準に差が生じている場合には、原則的に日本基準に合わるための修正が必要になります。しかし、「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取り扱い」(企業会計基準員会実務対応報告18号)では、国際財務報告基準や米国基準に準拠して作成されている在外子会社の財務諸表については、それらを連結会計上そのまま利用することを認めています。
ただし、国際財務報告基準や米国基準をそのまま利用するような場合であっても、日本基準と国際財務報告基準等に顕著な差異がある以下の項目については、連結会計上でそのまま取り込むことを認めていません。このため、日本基準に合わせるべく以下のように修正処理を行わなければいけません。

No. 項目 修正処理
1 のれんの償却 連結会計上、その計上後20年以内の効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却し、当該金額を当期の費用とするように修正する。
2 退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理 退職給付会計における数理計算上の差異を純資産の部に直接計上している場合には、連結会計上、当該金額を平均残存勤務期間以内の一定の年数で規則的に処理することにより、当期の損益となるように修正する。
3 研究開発費の支出時費用処理 「研究開発費等に係る会計基準」の対象となる研究開発費に該当する支出を資産に計上している場合には、連結会計上、支出時の費用となるように修正する。
4 投資不動産の時価評価及び固定資産の再評価 投資不動産を時価評価している場合または、固定資産を再評価している場合には、連結会計上、取得原価を基礎として、正規の減価償却によって算定された減価償却費を計上するように修正する。
5 少数株主損益の会計処理 当期純利益に少数株主損益が含まれている場合には、連結会計上、少数株主損益を加減し、当期純利益が親会社持分相当額となるように修正する。

「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取り扱い」は、平成22年に改正されており、それまで修正処理が必要なものに含まれていた「会計方針の変更に伴う財務諸表の遡及修正」という項目が、削除されています。これは会計基準のコンバージェンスにより、平成21年12月に過年度遡及修正の会計基準が日本基準においても新設されたことに対応するものです。さらに、退職給付会計基準の改正が行われ、3月決算会社であれば平成26年3月期からは、日本基準においても数理計算上の差異を純資産の部で計上する会計処理に変更されるので、将来的にノンリサイクリング処理が採用されるような場合に は上記の2の項目を削除するための改正が行われるものと考えられます。

グループ会計方針書

上記のように会計制度においては、連結会計上で会計方針の統一が求められていますが、グループ経営管理上の観点からも会計方針を統一することは重要です。
有効なグループ管理のためには、測定尺度が統一されたグループ業績資料を利用して意思決定の迅速性、効率性に資する必要があります。業績資料の基礎となる財務諸表の作成に関する会計処理方針がバラバラであれば、平等な条件のもとでグループ各社を比較することが困難となるケースも考えられます。
グループ経営管理上では、会計制度で求められているレベルのルール統一だけではなく、例えば、各種資産項目に関する評価損の計上方法、見積り項目の計上方法、勘定科目体系など、さらに詳細なレベルでの統一を検討することが必要となります。これらを統一することでグループ全体の業務効率化やグループガバナンスの強化につながる可能性があります。
国際財務報告基準を採用する企業では、上記のような会計に関するルールをグループ会計方針書としてとりまとめ、運用することが重要視されています。原則主義である国際財務報告基準では、基準に明記されていない部分についての会計的判断が経営者や経理担当者に求められるため、その拠り所となる社内ルールの存在が不可欠となります。
会計基準のコンバージェンスの進んでいる我が国の現況を鑑みると、国際財務報告基準を採用していない企業においても、グループ会計方針書の重要性が高まってきていると言えるのではないでしょうか。

2012年7月

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