ものづくりコラム 設計、生産管理、原価管理などものづくりに関するトピックを毎月お届けします。

2011年05月01日

設計変更時、設計部品表と製造部品表の同期支援

「SAP-PLM」が持つ4つの特徴。
1. 最上流の構想段階から生産段階の各種部品表まで全ての部品表の統合管理を実現
2. コンポーネントの組合せによる製品のバリエーション管理の実現
3. 設計業務に対する基幹系情報の提供、CADデータ取込みなどの連携支援
4. 設計変更時、設計部品表と製造部品表の同期支援

前回は、「設計業務に対する基幹系情報の提供、CADデータ取込みなどの連携支援」についてご紹介しました。最後の4回目は、「設計変更時、設計部品表と製造部品表の同期支援」です。

設計変更とは?

「設計変更」とはその文字の通り、「図面や部品表など設計情報を変更する」ことを意味しており、「設変(せっぺん)」とも呼ばれます。設計変更はその理由によって大きく2つに分類できます。1つは製品にまつわるいろいろな問題を解決するもの(問題解決型)で、「図面・部品表の不具合訂正」、「製造不具合の救済」、「クレーム対応」などです。もう1つは製品をさらに良くする課題に対応するもの(課題対応型)で、「機能追加・性能改善・コストダウン」、「危険物質の変更」、「現場や部品メーカからの改善提案」などが挙げられます。

問題解決型の設計変更は、企業の社会的信用に対して多大なる影響を与えるため、問題の発覚から解決までの期間を極力短くすることが重要です。近年の自動車メーカーにおける大規模リコールなど皆様のご記憶に新しいことと思います。一方、課題対応型の設計変更は、課題に応じてその対応時期を読むことが重要です。携帯電話をイメージしていただくと分かり易く、機能追加が早過ぎると現行製品の販売数量が伸び悩み、他社に遅れると機能が陳腐化して製品の競争力そのものが低下してしまいます。
いずれの場合も設計変更要求(ECR:Engineering Change Request)と設計変更指示(ECO:Engineering Change Order)の大きな2つのフェーズがあります。この2つのフェーズを設計変更管理(ECM:Engineering Change Management)にて、情報を正確に伝え、タイムリーに各作業を進めることが重要となります。

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図1.設計変更管理(ECM)の流れ 【拡大図】

設計部品表と製造部品表

設計変更では、まず設計部門がSAP-PLMを活用しERPの基幹情報を参照し、PDMでデータ管理しながら図面と設計部品表を変更します。次に変更された設計部品表に基づき製造部品表を変更するのですが、これら2つの部品表には下図のような構造的差異があり、これが設計変更の業務を難しくしている大きな理由の1つです。

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図2.設計部品表と製造部品表の構造的差異イメージ 【拡大図】

上図の変速機をご覧いただくと、設計部品表では変速機に必要なギア・変速レバー・変速機ワイヤーが1まとまりになっていますが、製造部品表では変速レバーはハンドルへの取り付けを意識しハンドルの子部品へと変更されています。同様にギアはフレーム、変速機ワイヤーはボディの配下へと部品表の構造が変わっていることがお分かりいただけることと思います。
このように設計部品表はその機能に着目し構造化されているのに対し、製造部品表はその製造手順によって構造化されているのです。このため、設計部品表と製造部品表の整合性を保ちながら設計変更を正確かつタイムリーに行うには、ITによる支援が不可欠と言えます。

SAP-PLMでの設計部品表と製造部品表の同期支援

SAP-PLMでは、設計変更において設計部品表と製造部品表の整合を保つためにガイド付き構成同期機能(GSS)を持っています。以下がサンプル画面です。

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図3.設計部品表と製造部品表の同期支援 【拡大図】

この機能では同期対象となる設計部品表と製造部品表を1つの画面に並べて表示します。また、両者間で同一の部品をシステムが自動的に認識しており、設計部品表上で一つの部品を選択すると製造部品表上で同一部品がハイライトされるなど設計・製造部品表の比較ができます。
一番の特長は画面下部に表示される差異・解決ガイドです。システムが設計部品表と製造部品表を自動比較した結果、「どのような差異が存在し、どう同期するべきか」のガイドを表示してくれます。これが「ガイド付き」と名付けられた所以です。ユーザはこの差異・解決ガイドを確認し、ガイド通りの修正でよければ「ソリューション適用」ボタンを押すだけで設計部品表と製造部品表を同期させることができるのです。また、差異・解決ガイドの1行をクリックすると設計部品表と製造部品表の両者上で当該箇所がハイライトされるため、手作業での修正による部品表同期も支援しています。

設計部品表と製造部品表の同期支援のまとめ

このようにSAP-PLMは、従来の調達・生産業務などのERP領域だけでなく、設計業務領域を支援しながら、製造業の背骨である部品表を介して両業務の連携を図り、業務全体の一気通貫を実現します。
製品ライフサイクルが短縮傾向にある今、業務効率の向上による製品の市場投入までの期間短縮はビジネスの成功の鍵となっています。またコストダウンを狙って生産拠点を海外へと展開するには、1つの設計部品表から拠点ごとの複数の製造部品表との連携が必要であり、これらを迅速かつタイムリーに行う必要があります。これらの課題解決に「SAP-PLM」は大きな貢献を果たしていきます。

これまで4回に渡り「SAP-PLM」の特徴を述べてきました。次回はいよいよ最終回。「PLMが製品の成長戦略を描く」のテーマで締め括りたいと思います。お楽しみに。

2011年5月

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