2026年04月01日
生成AIとは似て非なるフィジカルAI
~あなたはどちらのAIがお好み?~
フィジカルAIとは何か?
フィジカルAIとは物理世界(現実世界)に身体をもち、認識・判断・行動を一体で行うAIを指します。2020年頃からロボティックスや材料科学の研究者たちの間で使われ始めた専門用語ですが、エヌビディア社CEOが、「AIの次なる波はフィジカルAIだ」と繰り返し発言したことで、注目度が急速に高まりました。生成AIがテキストを理解・生成するように、フィジカルAIは物理法則を理解し、現実世界で行動します。生成AIが“言語”を生成する存在だとすれば、フィジカルAIは”物理的な行動“を生成する存在という見方もできます。また、産業界では、ヒト型ロボットやドローン、自動運転なども広義のフィジカルAIとなります。なぜフィジカルAIが注目されるのか?
推論や学習を行うロボットはかなり前から存在していましたが、最近フィジカルAIが注目されだした理由は大きく2つあります。- 生成AI、大規模言語モデルの技術的成功
これまでのロボットは、限定された環境で特定目的のタスクを行う “個別モデル”が中心でした。しかし、生成AIの大規模言語モデル(LLM)の成功により、「汎用知能は細かく設計しなくても成立する」ことが実証されました。その結果、フィジカルAIでも“物理法則を学習した基盤モデル”が成立するとの認識が広がり、その期待とともに投資環境が一気に整いました。
- 人手不足と社会課題が巨大な市場を生む確信
製造、物流だけでなく、土木、サービス業、介護・医療、さらには危険なインフラ点検や災害対応まで、世界中で人手不足が深刻です。このため生成AIを手掛ける多くの大手、新興テック企業をはじめ、製造機器メーカーや流通メーカーまで、多様な企業がフィジカルAI事業に参入し始めています。
生成AIとフィジカルAIの仕組みの違い
(クリックして拡大できます)
生成AIの肝と言えば、次のトークン(単語)の予測です。これは外側から見ると“確率的な予測“ですが、単なる統計的な頻度ではありません。内部では数兆個のパラメータをもつ”Attention(注目度)“メカニズムが、高度な論理推論や概念シミュレーションを超高速に繰り返しています。その重要性は、ビートルズの名曲”All You Need Is Love“をもじって、”Attention Is All You Need“というタイトルの論文により決定づけられました。
2017年にGoogle研究チームが報告したこの論文は、現在の生成AIの“揺るぎない礎”になっています。
一方、フィジカルAIのモデルはより複雑です。物理世界の映像、音、力、位置などのセンサー情報から状態を理解し、状況に応じた行動を選択します。さらに、その行動の結果(成功/失敗)を検証し、改善に活かします。
フィジカルAIでは、「世界モデル(物理法則や状態を学習)」と「方策モデル(行動を選択)」など複数のモデルが協調します。これらが組み合わさることで“物理世界の知能”が構成されます。また、物理世界での実用には高度な安全性が必須となり、例えば人に接触しそうな場合は即座に停止するなど、周囲への危害を防ぐ安全制御が重要な課題となります。
生成AIとフィジカルAIの振舞いの違い
生成AIは発話の自然さを最優先に設計されているため、いつも断言調で自信を持って答える傾向があります。分からない場合でもそれらしく答える、いわゆる“ハルシネーション”を経験している方も多いでしょう。一方、フィジカルAIは、誤判断するとものが掴めない、ぶつかる、転倒するなど、直接“失敗”としてAI自身に返ってきます。そのため、「AIは間違える」という前提で設計され、自信がなければ止まり、人に確認し、判断を委ねる“慎重さ”があります。
また、生成AIは否定されても能力は変わらず、文脈が変わると同じ誤りを繰り返すことがあります。フィジカルAIは失敗すると、方策(行動選択)が更新され、次は別の行動をとります。人に否定されて“表現”を変える生成AIに対して、物理世界に否定されて“やり方”を変えるのがフィジカルAIと言えます。
例えば、生成AIを相手に壁打ちするシーンを想像してください。このとき人はAIに「何か答える」ことを期待していて、「分かりません」と返答するAIは存在価値が無くなります。一方、フィジカルAIの場合は、「何もしない」「止まる」という判断が安全制御上正しい選択となる局面が多くなります。しかし、それも度が過ぎると、人から見ると“エラー”のように映る場合があります。
設計思想も振舞いも異なるAI。さて、あなたはどちらのAIがお好みでしょうか?
ご参考:
フィジカルAI ~デジタルの世界から現実世界へと進化するAI~
2026年4月
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