2011年01月01日
最上流の構想段階から生産段階の各種部品表まで全ての部品表の統合管理を実現
前回「PLMとは」にはじまり、「PLMの2つのアプローチ」として私どもが取り組んでいるERPからのアプローチ「SAP-PLM」をご紹介させていただきました。
「SAP-PLM」には、大きく以下の4つの特徴があると記しました。
1. 最上流の構想段階から生産段階の各種部品表まで全ての部品表の統合管理を実現
2. コンポーネントの組合せによる製品のバリエーション管理の実現
3. 設計業務に対する基幹系情報の提供、CADデータ取込みなどの連携支援
4. 設計変更時、設計部品表と製造部品表の同期支援
第1回目は「最上流の構想段階から生産段階の各種部品表まで全ての部品表の統合管理を実現」に関してです。
図面・3次元モデル・部品表
皆さんは設計データとお聞きになるとどのようなイメージをお持ちでしょうか?やはり、図面や3次元モデルと言ったCADによる成果物を思い出されるのではないでしょうか?それだけではありません。これらCADの成果物と同様に製品を表現するデータに品目と部品表があります。品目は部品そのものを表現し、部品表は製品や半製品の構成を品目を使って表現します。むしろ、設計以降の調達・製造・検査・出荷など後段業務ではこの品目と部品表が主役となり、図面や3次元モデルはこれら品目と部品表をより視覚的に表現し情報伝達の正確さを補足するデータとなります。そのため、SAPに限らずおよそ生産管理と呼ばれるパッケージシステムでは、この品目と部品表はマスタとされており、取引先への部品発注や製造現場への作業指示などの元データとして使われます。いわゆるパッケージシステムに自社の業務を教え込む手段の一つであると言えます。
図面・3次元モデル・部品表関連図
では、実際の設計業務において品目や部品表はいつ作られるのでしょう?設計業務の最終段階で一気に出来上がるのでしょうか?それとも中盤から徐々に姿を現し最終段階で全てが出来上がるのでしょうか?弊社がお客様から色々とお話をお聞きかせいただいた結果では「どちらでもない」です。たしかにパッケージシステムにマスタとして登録する品目や部品表は最終段階もしくは設計業務が完了した時点で承認などを経て正式となったデータです。しかし、正式となる前、早ければ設計業務のはじめからぼんやりとはしているものの、この品目や部品表のデータは設計者の頭の中に存在するのです。これは設計部門の組織などからも想像がつき、自動車の製品開発では、エンジン・ボディ・サスペンションと設計部門内でチームが分かれており、このチーム分けそのものが部品表であると言えます。これを広義の部品表と考えると、設計業務のはじめから部品表は存在するのです。一方、これまでのシステムでは確定した正式データのみを入力できる仕組みとしていたため、この広義の部品表を取り込むことができませんでした。
部品表の成長プロセスとSAP-PLM
広義の部品表から従来の部品表へ、曖昧な状態から確定した状態へと部品表を成長させるプロセスは概ね以下の図の通りです。
部品表の成長プロセス
「製品企画」段階では顧客のニーズや自社の要素技術を収集・整理し、製品のコンセプトを作成します。SAP-PLMでは、顧客のニーズを仕様項目と仕様値として文書管理機能なども活用しながら定義します。いわゆる部品表そのものではありませんが製品を特徴づけるデータの1つです。
次の「製品基本計画」では、まず製品上の機能配置や構造等を「ストラクチャーノード」と言う概念を用いて大まかに構成していきます。そのうえで、各「ストラクチャーノード」のとりうる部品候補を、バリエーションとして仕様項目と仕様値に紐づけ列挙します。まだ具体的な品目がある訳ではなく、部品表の構造そのものを試行錯誤しながら定義していくイメージです。この2段階が製品開発のプランニング(計画)段階で「広義の部品表づくり」を行います。
これに対し後半の2段階は「従来の部品表作り」で、製品開発のエンジニアリング(本格的開発)段階です。「製品設計」は皆さんも良くご存知のCADによるモデリング、作図が中心となり、SAP-PLMでは先に定義した製品の構成のバリエーションに対して、具体的な部品や組立品の品目を文書管理された図面や3次元モデルと共に割当てます。これで設計部品表の完成です。
最終段階の「生産設計」では、設計部品表をベースに、社外から購入する部品、社内で製造する部品の分類にはじまり、購入品では調達先、内作品であれば工程・作業場所など生産業務に必要な情報を付加します。ここでのSAP-PLMの特徴は昨今の工場のグローバル展開に対応すべく、生産部品表は工場単位でも作成・管理が可能なことと、設計部品表と生産部品表の間の整合性をガイド付き同期化支援機能で担保できることです。このガイド付き同期化支援機能はまた後の機会でご紹介する予定です。
部品表の統合管理のまとめ
このようにSAP-PLMは、部品表の成長プロセスをその段階に応じた各種機能で支援します。同時に製品ごとに作成・管理される従来の部品表を一歩発展させ、製品シリーズ単位での部品表管理を可能とし、顧客仕様と構成のバリエーションを1つにした部品表のデータモデルを提供していることも、他に類を見ない特徴と言えます。
「製品単位での部品表」と「製品シリーズ単位での部品表」
これらの機能とデータモデルは、構想段階の部品表がいまだ曖昧な状態からシステム上での管理を可能にし、設計部門内はもちろん、営業・調達・生産・品質保証など全社での早い段階からの情報共有を実現します。設計部門と関連部門が早くから協働することで「何を作る」と「どう作る」を同時に検討することが可能となり、問題の早期解決が実現できるのです。
このようにSAP-PLMは、製品のライフサイクルがますます短くなる昨今において製品競争力の重要な1要素である「コンカレントな製品開発による製品提供期間の短縮」を支援します。
2011年01月
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